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第三章・転機
29・ノアの企み
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「シルフィ、私と婚約しないか?ロディアとして私の妃になって欲しい。もちろん結婚するのは学園を卒業してからでいいけど」
そんな事を急に言われて、呆然とするのは当たり前だろう?この人は、一体どういうつもりだろうか…
その意図が分からず困惑する。
だけど、この人のことだ…思い付きで言っているのではない!何かある筈だよ。
「それはどういう意味ですか?私と結婚しても得にはならないと思います。我がグレン伯爵家は、貴族とは名ばかりの家門ですから…。もし、王になりたいと思っているのなら有力な貴族との婚姻を望むべきです!」
王族だと思って遠回しに言っても、ノア殿下には通用しない!はぐらかされるだけだ。不敬を承知でそうハッキリと伝えた。
それにノアは、驚いたように私をじっと見た。そして…
「ああ、驚いたね。君のところにも届いてるんだ?私の噂…私が王になるのを希望しているって。兄を差し置いて私が…って。フフッ」
そう言って、それからちょっと不気味に笑った。
「私だって知っています。国民の大半は知っているのではないですか?そしてそれを殿下は隠してはいない。先程、私と結婚しても殿下には得はないと言いました。だけどそれは、こちらも同じ事です。私は静かに暮らしたい!王族になるなど考えた事もありませんから」
言いたい事を言い切った私に、ノアはキョトンとした顔をしている。それからやっぱり可笑しそうに笑った。
「ハハハッ、やっぱりシルフィって面白いね?正直だし勇気もある。一度死んで強くなったんだろう…。だから向いてると思うんだよ?王妃にね!」
──この人は何を言ってるんだろう?自分が王になるのを前提に…
第一王子のルーカス殿下だっているのに確実じゃないよね?何の根拠があってそんな事を言ってるのか…?そのうちルーカス殿下もご結婚されて、その相手が王妃になるかも知れないのに…
「まあ、私だって今日返事を貰えるとは思っていないよ!また考えておいて。じっくりとね」
何度考えても、私の答えは同じだ!って思うけど、しぶしぶ頷いた。このまま意地を張って否定し続けても埒が明かないし…
「もうお茶ないかい?お代わりを持ってこさせよう。美味しいだろ?この茶葉。隣国から取り寄せた特選品だよ?気に入ったら少し分けるから持って帰ったらいいよ!」
ノアはそう言って、天井から垂れ下がっている紐のような物を下に引いた。
すると、微かにチリンと鈴のような音が鳴っている。
──もしかして、それを引くと侍従が来る事になっているんだろうか?早く帰りたいし、お代わりいらなかったんだけど…
予想が当たって、ティーポットを持った侍従が現れる。そして私達のカップにお茶を注いでくれ、それから一礼して去って行く。
私はせっかく注いでくれたし…と、一口だけ飲もうか?と思う。それから話しが終わったのなら、帰ろうと…
一口飲んだ直後、どうも感覚が可怪しいのに気付く…考えがまとまらないのだ。
何やらぼうっとしてしまって、目を開けていられなくなる…
そんな中で、あれっ?と思う。お茶…飲んだから?たった一口しか飲んでいない。な、何で…?
私は眉間の辺りがぐるぐると回るような感覚に襲われる。もう…目を開けていられない…そして、プッツリと意識が途切れた…
──チリン
「お呼びでしょうか?ノア殿下」
「うん…このロディア・グレンを私の寝室に運んでくれ」
「…はっ?何と…」
「何度も言わせるな?寝室に運べと言っている」
「はい。承知致しました…」
ロディアが侍従によって、この温室から運び出されていくのをじっと見ていた。そして…
「他の者に取られるくらいならね!私が…」
そう言って、不敵に笑う。
そんな事を急に言われて、呆然とするのは当たり前だろう?この人は、一体どういうつもりだろうか…
その意図が分からず困惑する。
だけど、この人のことだ…思い付きで言っているのではない!何かある筈だよ。
「それはどういう意味ですか?私と結婚しても得にはならないと思います。我がグレン伯爵家は、貴族とは名ばかりの家門ですから…。もし、王になりたいと思っているのなら有力な貴族との婚姻を望むべきです!」
王族だと思って遠回しに言っても、ノア殿下には通用しない!はぐらかされるだけだ。不敬を承知でそうハッキリと伝えた。
それにノアは、驚いたように私をじっと見た。そして…
「ああ、驚いたね。君のところにも届いてるんだ?私の噂…私が王になるのを希望しているって。兄を差し置いて私が…って。フフッ」
そう言って、それからちょっと不気味に笑った。
「私だって知っています。国民の大半は知っているのではないですか?そしてそれを殿下は隠してはいない。先程、私と結婚しても殿下には得はないと言いました。だけどそれは、こちらも同じ事です。私は静かに暮らしたい!王族になるなど考えた事もありませんから」
言いたい事を言い切った私に、ノアはキョトンとした顔をしている。それからやっぱり可笑しそうに笑った。
「ハハハッ、やっぱりシルフィって面白いね?正直だし勇気もある。一度死んで強くなったんだろう…。だから向いてると思うんだよ?王妃にね!」
──この人は何を言ってるんだろう?自分が王になるのを前提に…
第一王子のルーカス殿下だっているのに確実じゃないよね?何の根拠があってそんな事を言ってるのか…?そのうちルーカス殿下もご結婚されて、その相手が王妃になるかも知れないのに…
「まあ、私だって今日返事を貰えるとは思っていないよ!また考えておいて。じっくりとね」
何度考えても、私の答えは同じだ!って思うけど、しぶしぶ頷いた。このまま意地を張って否定し続けても埒が明かないし…
「もうお茶ないかい?お代わりを持ってこさせよう。美味しいだろ?この茶葉。隣国から取り寄せた特選品だよ?気に入ったら少し分けるから持って帰ったらいいよ!」
ノアはそう言って、天井から垂れ下がっている紐のような物を下に引いた。
すると、微かにチリンと鈴のような音が鳴っている。
──もしかして、それを引くと侍従が来る事になっているんだろうか?早く帰りたいし、お代わりいらなかったんだけど…
予想が当たって、ティーポットを持った侍従が現れる。そして私達のカップにお茶を注いでくれ、それから一礼して去って行く。
私はせっかく注いでくれたし…と、一口だけ飲もうか?と思う。それから話しが終わったのなら、帰ろうと…
一口飲んだ直後、どうも感覚が可怪しいのに気付く…考えがまとまらないのだ。
何やらぼうっとしてしまって、目を開けていられなくなる…
そんな中で、あれっ?と思う。お茶…飲んだから?たった一口しか飲んでいない。な、何で…?
私は眉間の辺りがぐるぐると回るような感覚に襲われる。もう…目を開けていられない…そして、プッツリと意識が途切れた…
──チリン
「お呼びでしょうか?ノア殿下」
「うん…このロディア・グレンを私の寝室に運んでくれ」
「…はっ?何と…」
「何度も言わせるな?寝室に運べと言っている」
「はい。承知致しました…」
ロディアが侍従によって、この温室から運び出されていくのをじっと見ていた。そして…
「他の者に取られるくらいならね!私が…」
そう言って、不敵に笑う。
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