【完結】悪の華は死に戻りを希望しない

MEIKO

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第三章・転機

28・疑い(サウラSide)

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 私の聖力が無くなって三年半が経つ…
 そろそろ本格的な引退を…と思うが、なかなかうまくいかないのが現状だ。

 シルフィの死から一年近く。あれから私は、スレイド侯爵家を出ていた。

 その提案を受けた時、嘆き悲しむドミニクをこれ以上見ては居られなかったし、罪の意識に苛まれて私自身もあのまま侯爵家に居る事は出来なかった…

 もうじき、シルフィの一年の追悼の会がある。私がその斎主をするのは心苦しいが、私の聖者としての最後の務めになるかも知れない。赦されるのなら、精一杯冥福を祈ろうと思っている…

 

 「サウラ様、こちらで少しお待ちいただいてもよろしいでしょうか?」

 私の後継者だと言われる者の、その言葉に困惑しながら頷く。
 あの者が早く一人前になってくれさえすれば、すぐにでも引退出来る…そう思ってしまう。
 今日も共に街まで来ているのだが、道に迷って目的地に一向に着かない。
 それで誰かに尋ねて来ると駆けて行った。
 それで私は、この辺りを懐かしく見回した。
 
 ──ここまで来るのは久しぶりだ…子供の頃はドミニクと一緒に、どこへでも出掛けて行っていたのに。
 今考えると、あの頃が一番幸せだった!そう考えると、複雑な思いがする…
 
 私が悪かったのか?ドミニクを好きになるのが、そんなに悪いことなんだろうか?私には答えが出ない。きっと一生…

 そう思い煩いながらぶらぶらと歩いていると…ある店の前で、驚きで時が止まる!

 「シ、シルフィ?」

 シルフィとまるで生き写しの人物に遭遇する。その人は何かの音に気付いて、偶然私の方に振り向く…

 「シ、シルフィ?そ、そんな筈ない!誰だ!?」

 真正面から見たその人に再び驚く。シルフィの筈はない!だけど…似すぎてないか!?
 
 「私はシルフィの弟のロディア・グレンです…聖者様」

 唖然として見つめている私にその人は、自分からシルフィの弟なのだと言った。
 だけど、ただ顔形が似ているだけではないような…

 「シルフィの…弟?でも、こんなにそっくりだなんて…」

 思わずそう口に出してしまっていた。それ程似ている。顔はもちろん、口調もそれに雰囲気まで一緒だった。私は何か嫌な予感がしていた…

 それから、シルフィが亡くなってから一年の追悼の会の話しをして、その時に再会を…と言ってロディアとは別れた。

 ──何か可怪しい…そんな予感。何より私に対する視線が違う…

 自分で言うのも何だが、今まで聖者として尊敬を一身に集めて来た。なのにあの冷ややかな視線…怖い!そう思った…
 
 それから二ヶ月後、ロディア・グレンとスレイド侯爵家で再会する…

 私だけでなく、侯爵夫妻や屋敷の使用人達まで一様にロディアには驚いていた。
 それから追悼の会の間中、涙を流し続ける姿。
 最初は兄への想いで泣いているのだと思った。だけど、一年が経っているのにあれ程泣くだろうか?
 そんな疑問が現実になる…

 泣き腫らした顔で庭園を散歩するロディア…
 私は窓からじっと見ていた。そして何の迷いもなくあのガゼボに近付く。
 初めて来た侯爵家で、それは有り得ない…
 それにシルフィがガゼボで亡くなったのは、この侯爵家の人間と私しか知らないこと。グレン伯爵夫妻にさえ伝えては居ないのだ!なのに…

 ──そんな事は普通有り得ない…だけど、あのロディアはシルフィではないのか?

 馬鹿な!いくら何でも違うだろ?だけど…そう繰り返し繰り返し、頭の中で浮かんでは消える…
 どうやったら確かめられる?そして本当にシルフィだったなら、どうしたら…
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