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第一章・憑依
7・麗しの君
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「おはよう!今日も歩いてただろ?麗しの君が銀杏並木を歩いてる!って、男女共に噂になってるぞ?」
デビットが楽しそうに笑って、ポン!と私の肩を叩く。
「う、麗しの君だって!?何だよそれ…恥ずかしいなぁ」
そんな私に、ハハハッと眩しく笑っていつものように人懐っこい顔を見せた。
こんな屈託なく笑う人が、私に意図的に近付いて来たのではないだろう?って思うけど…
あれから調べてみると、ブロン卿はデビットの異母兄だった。
ブロン卿は、リチャード・ブロンと言うのだが、ブロン伯爵家の嫡男だ。
このリチャードの母である前夫人が亡くなった後、後添いに迎えたのがデビットの母だった。
だから二人共ブロン伯爵家の令息だということになる。
それとなくデビットにあの件を聞いてみたが、まるで知らないようだった。
それにドミニクと懇意にしている事も初耳だと…
異母兄弟だといっても流石に似ている。
初めてデビットを見た時、何か感じるものがあったのはそういう事か…と。
二人共、眩しいくらいの金の髪で翡翠の最上級である琅玕色の瞳が美しい。
それに長身でがっしりとした体型だ。
リチャードは騎士にぴったりだと思うけど、デビットも騎士になるのかな?
そう思って隣で明るく笑って話すデビットを見ていたら、ちょっと騎士とは違うかな?って思った。
──リチャードとデビットは違う!
そう結論づけて、リチャードの件でデビットを遠ざけるのはやめようと思う。
せっかく出来た友達だしね…
「今日な、久しぶりに第二王子が学園に来るそうだぞ?それと…ここだけの話しだぞ」
──な、何?ここだけの…話しって?
私はドキリとして身構える。
デビットはキョロキョロと周りに人が居ないのを確かめて、私の耳元に顔を寄せた。そして…
「あのな…第一王子のルーカス様より第二王子のノア様の方が王に相応しいと言われているのを知っているか?ノア様は何事にも秀でていらっしゃるんだ。それに人格も素晴らしい方だ。だから皇太子になるのはどっちだ!?って揉めてるらしいぜ?だから学園にもなかなか来れないんだそうだ」
私はそれを聞いて、全ての納得がいった。
だからドミニクが護衛をしていたのか!
そうでなければ学園にまで近衛が来るのは可怪しいと思っていた。なるほど…
「それは知らなかったよデビット。王族の皆様も大変だね?」
私も同じくデビットに、背伸びしながらそっと耳打ちする。
「あっいけない!デビットが話しかけるからぁ~。授業に遅れちゃうだろ?フフッ」
「本当だ!やばいぞ急げ~。アハハ」
慌てて教室に向かおうとしていたら、何だか二人共可笑しくなってきて笑い合う。
そして階段を上りきった時、目の前に急に人が現れてぶつかりそうになる。
──わわっ!危ない!
急に止まろうとした事で身体をよろめいかせた瞬間、私を誰かがぎゅっと抱き留めた。
「すみません!危ないところをありがと…」
助けてもらった礼を言おうとして、その人の顔を見上げたところで、余りの驚きに身体が震える。
「兄さん!何でここに?ロディアが驚いているし離してあげてよ?…兄さん?」
今、私を抱き締めているのはリチャード・ブロン。ブロン卿その人だった…
ブロン卿は何故だかデビットのその言葉にも反応せずに、私をずっと抱いたままで…
緊張で顔が強張ったままだが、意を決してブロン卿の顔を見つめる。
その印象的な瞳と見つめ合い、真意を図ろうとするが皆目検討もつかない。
ただ、最初のあの失礼な印象とは違って、何か哀しそうに瞳を揺らめかせていて…
「兄さん!俺達授業が始まるんだけど…」
「本当に…離してくれませんか?」
私達がそう言ったことで、やっと身体が開放される。
安心してフーッと息をつき、取り敢えずブロン卿に一礼して、それからデビットと一緒に教室へと急ぐ。
だけどその時、再び私に衝撃が走る。
少し離れたところで夫のドミニクが、冷めた目で蔑むように私を眺めていた…
デビットが楽しそうに笑って、ポン!と私の肩を叩く。
「う、麗しの君だって!?何だよそれ…恥ずかしいなぁ」
そんな私に、ハハハッと眩しく笑っていつものように人懐っこい顔を見せた。
こんな屈託なく笑う人が、私に意図的に近付いて来たのではないだろう?って思うけど…
あれから調べてみると、ブロン卿はデビットの異母兄だった。
ブロン卿は、リチャード・ブロンと言うのだが、ブロン伯爵家の嫡男だ。
このリチャードの母である前夫人が亡くなった後、後添いに迎えたのがデビットの母だった。
だから二人共ブロン伯爵家の令息だということになる。
それとなくデビットにあの件を聞いてみたが、まるで知らないようだった。
それにドミニクと懇意にしている事も初耳だと…
異母兄弟だといっても流石に似ている。
初めてデビットを見た時、何か感じるものがあったのはそういう事か…と。
二人共、眩しいくらいの金の髪で翡翠の最上級である琅玕色の瞳が美しい。
それに長身でがっしりとした体型だ。
リチャードは騎士にぴったりだと思うけど、デビットも騎士になるのかな?
そう思って隣で明るく笑って話すデビットを見ていたら、ちょっと騎士とは違うかな?って思った。
──リチャードとデビットは違う!
そう結論づけて、リチャードの件でデビットを遠ざけるのはやめようと思う。
せっかく出来た友達だしね…
「今日な、久しぶりに第二王子が学園に来るそうだぞ?それと…ここだけの話しだぞ」
──な、何?ここだけの…話しって?
私はドキリとして身構える。
デビットはキョロキョロと周りに人が居ないのを確かめて、私の耳元に顔を寄せた。そして…
「あのな…第一王子のルーカス様より第二王子のノア様の方が王に相応しいと言われているのを知っているか?ノア様は何事にも秀でていらっしゃるんだ。それに人格も素晴らしい方だ。だから皇太子になるのはどっちだ!?って揉めてるらしいぜ?だから学園にもなかなか来れないんだそうだ」
私はそれを聞いて、全ての納得がいった。
だからドミニクが護衛をしていたのか!
そうでなければ学園にまで近衛が来るのは可怪しいと思っていた。なるほど…
「それは知らなかったよデビット。王族の皆様も大変だね?」
私も同じくデビットに、背伸びしながらそっと耳打ちする。
「あっいけない!デビットが話しかけるからぁ~。授業に遅れちゃうだろ?フフッ」
「本当だ!やばいぞ急げ~。アハハ」
慌てて教室に向かおうとしていたら、何だか二人共可笑しくなってきて笑い合う。
そして階段を上りきった時、目の前に急に人が現れてぶつかりそうになる。
──わわっ!危ない!
急に止まろうとした事で身体をよろめいかせた瞬間、私を誰かがぎゅっと抱き留めた。
「すみません!危ないところをありがと…」
助けてもらった礼を言おうとして、その人の顔を見上げたところで、余りの驚きに身体が震える。
「兄さん!何でここに?ロディアが驚いているし離してあげてよ?…兄さん?」
今、私を抱き締めているのはリチャード・ブロン。ブロン卿その人だった…
ブロン卿は何故だかデビットのその言葉にも反応せずに、私をずっと抱いたままで…
緊張で顔が強張ったままだが、意を決してブロン卿の顔を見つめる。
その印象的な瞳と見つめ合い、真意を図ろうとするが皆目検討もつかない。
ただ、最初のあの失礼な印象とは違って、何か哀しそうに瞳を揺らめかせていて…
「兄さん!俺達授業が始まるんだけど…」
「本当に…離してくれませんか?」
私達がそう言ったことで、やっと身体が開放される。
安心してフーッと息をつき、取り敢えずブロン卿に一礼して、それからデビットと一緒に教室へと急ぐ。
だけどその時、再び私に衝撃が走る。
少し離れたところで夫のドミニクが、冷めた目で蔑むように私を眺めていた…
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