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第一章・憑依
6・復学初日
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翌日の早朝、王都学園に向かう為に馬車に乗り込む。
ロディアになってからは初めて生徒として通う。
いろいろと心配な事は多いけれど、怖がっているばかりでは前には進めない。
私は何も、悪いことなどしていないのだから…
「ロディア、忘れ物はないか?体調が悪くなったらすぐに先生に言うのだぞ!」
「あなた!そんな縁起でもない…ロディア頑張っておいで」
父と母がわざわざ見送る為に玄関前まで出て来た。なんて過保護なんだろう…って思うが。それからやっぱり少し複雑な気持ちで…
「大丈夫ですから…わざわざのお見送り、ありがとうございます。頑張ってきます!」
ちょっと戸惑い気味にそう言って、御者に合図して出発してもらった。
復学初日から遅刻したくはないし…
王都学園では寮に入っている人もいるそうだが、私のように王都にあるそれぞれの邸宅からから通う者も多い。だから馬車を止めるまでに時間がかかってしまい、最悪遅れてしまうことも…
建前上では、学園で身分の差は存在しない。王族から裕福な平民の子息子女まで学園内では差別が禁止されている。
流石に王族は優遇されるのは当たり前だが、その他は公爵家だろうが伯爵家だろうが来た順番で馬車を止めなければならない訳で。
うちは真ん中の身分の伯爵家だから、元々優遇などないし気楽なものだ。
そう思っていると馬車の速度が段々と遅くなって…
「ああ、やっぱり混んでる…」
学園の校舎が先に見えて来たが、当然のように長蛇の列だ。困った…
「すいません、ここで降ろしてくれますか?」
そう声を掛けると、明らかに御者は動揺していたが端に寄せて停まってくれた。
それから一人、馬車を降りて歩き出した。
もう直ぐそこに校舎が見えているし、その方が早いだろうと思う。
正面玄関まで続く銀杏並木を歩いて行くと、朝の陽射しに照らされて凄く気持ちが良い。
毎朝こうやって運動を兼ねて、少し前で降りて歩いて行ってもいいかも!
そんな私の隣を何台もの馬車が通り過ぎて、何で貴族の令息が歩いてるんだろう?って不思議に思われたかも知れないが、もう気にしないでおこうって思う。
人の顔色を伺って生きるのは、シルフィの時だけで充分だ…これからは好きに生きてみよう!
それから校舎に入って自分の教室に向かう。ええっと、二年生の教室は…二階だな?
そう思いながら階段を中程まで上った時、背後から急に声を掛けられてハッとする。
「ロディア?ロディア・グレンじゃないのか?」
振り向くと、嬉しそうに笑顔を浮かべた人物が私をじっと見ていた。…誰?
明るい金髪で翡翠色の瞳、そして顔の中心に散らばるソバカスが人懐っこい印象を与える。
「分かんない?分かんないか…。俺、大分背が伸びたからなぁ。昔、一緒に遊んだことがあるんだけど。相変わらずロディアは可愛いな!」
か、可愛いって!?そんな風に言われて赤面してしまう…それに一体誰なんだろう?
「俺だよ?デビットだ。ブロン伯爵家のデビット!」
──デビット…ブロン?伯爵家の?
そう言われてもロディアの交友関係など分かる筈もなくて…
でも、ここは分かったフリをしておこう!
「デビットかい?久しぶりだね!凄く背が伸びたんだ?羨ましいよ。」
適当に話しを合わせておいたけど、デビットはそれに何度も頷いて、だろ?って笑った。
デビット、あまり細かいタイプじゃなくて良かった…
「ロディアは今日から復学なんだな。先週ここに来てたろ?それから皆んなの噂の的になってたぞ!俺と同じクラスだし、一緒に行こう!」
私は戸惑いながらも早速友人のような存在が出来てホッとした。
一つ歳上の私を、クラスメイト達が腫れ物を扱うような態度だったらどうしよう…と心配していたから。
そして、そのデビットのお陰で初日にしてはクラスに溶け込めたのではないかと思う。他のクラスメイト達とも、これから少しづつ仲良くなれたらいいな…
少し興奮しながら家に帰り着いて、今日一日を振り返った。それから何気なく今日思い掛けず出来た、新しい友人を思い浮かべた。あれっ?待てよ…
デビット・ブロン。…ブロン?
もしかしてだけど、あの僕を「悪の華」と呼んだブロン卿と同じ名前!?偶然なんだろうか…
ロディアになってからは初めて生徒として通う。
いろいろと心配な事は多いけれど、怖がっているばかりでは前には進めない。
私は何も、悪いことなどしていないのだから…
「ロディア、忘れ物はないか?体調が悪くなったらすぐに先生に言うのだぞ!」
「あなた!そんな縁起でもない…ロディア頑張っておいで」
父と母がわざわざ見送る為に玄関前まで出て来た。なんて過保護なんだろう…って思うが。それからやっぱり少し複雑な気持ちで…
「大丈夫ですから…わざわざのお見送り、ありがとうございます。頑張ってきます!」
ちょっと戸惑い気味にそう言って、御者に合図して出発してもらった。
復学初日から遅刻したくはないし…
王都学園では寮に入っている人もいるそうだが、私のように王都にあるそれぞれの邸宅からから通う者も多い。だから馬車を止めるまでに時間がかかってしまい、最悪遅れてしまうことも…
建前上では、学園で身分の差は存在しない。王族から裕福な平民の子息子女まで学園内では差別が禁止されている。
流石に王族は優遇されるのは当たり前だが、その他は公爵家だろうが伯爵家だろうが来た順番で馬車を止めなければならない訳で。
うちは真ん中の身分の伯爵家だから、元々優遇などないし気楽なものだ。
そう思っていると馬車の速度が段々と遅くなって…
「ああ、やっぱり混んでる…」
学園の校舎が先に見えて来たが、当然のように長蛇の列だ。困った…
「すいません、ここで降ろしてくれますか?」
そう声を掛けると、明らかに御者は動揺していたが端に寄せて停まってくれた。
それから一人、馬車を降りて歩き出した。
もう直ぐそこに校舎が見えているし、その方が早いだろうと思う。
正面玄関まで続く銀杏並木を歩いて行くと、朝の陽射しに照らされて凄く気持ちが良い。
毎朝こうやって運動を兼ねて、少し前で降りて歩いて行ってもいいかも!
そんな私の隣を何台もの馬車が通り過ぎて、何で貴族の令息が歩いてるんだろう?って不思議に思われたかも知れないが、もう気にしないでおこうって思う。
人の顔色を伺って生きるのは、シルフィの時だけで充分だ…これからは好きに生きてみよう!
それから校舎に入って自分の教室に向かう。ええっと、二年生の教室は…二階だな?
そう思いながら階段を中程まで上った時、背後から急に声を掛けられてハッとする。
「ロディア?ロディア・グレンじゃないのか?」
振り向くと、嬉しそうに笑顔を浮かべた人物が私をじっと見ていた。…誰?
明るい金髪で翡翠色の瞳、そして顔の中心に散らばるソバカスが人懐っこい印象を与える。
「分かんない?分かんないか…。俺、大分背が伸びたからなぁ。昔、一緒に遊んだことがあるんだけど。相変わらずロディアは可愛いな!」
か、可愛いって!?そんな風に言われて赤面してしまう…それに一体誰なんだろう?
「俺だよ?デビットだ。ブロン伯爵家のデビット!」
──デビット…ブロン?伯爵家の?
そう言われてもロディアの交友関係など分かる筈もなくて…
でも、ここは分かったフリをしておこう!
「デビットかい?久しぶりだね!凄く背が伸びたんだ?羨ましいよ。」
適当に話しを合わせておいたけど、デビットはそれに何度も頷いて、だろ?って笑った。
デビット、あまり細かいタイプじゃなくて良かった…
「ロディアは今日から復学なんだな。先週ここに来てたろ?それから皆んなの噂の的になってたぞ!俺と同じクラスだし、一緒に行こう!」
私は戸惑いながらも早速友人のような存在が出来てホッとした。
一つ歳上の私を、クラスメイト達が腫れ物を扱うような態度だったらどうしよう…と心配していたから。
そして、そのデビットのお陰で初日にしてはクラスに溶け込めたのではないかと思う。他のクラスメイト達とも、これから少しづつ仲良くなれたらいいな…
少し興奮しながら家に帰り着いて、今日一日を振り返った。それから何気なく今日思い掛けず出来た、新しい友人を思い浮かべた。あれっ?待てよ…
デビット・ブロン。…ブロン?
もしかしてだけど、あの僕を「悪の華」と呼んだブロン卿と同じ名前!?偶然なんだろうか…
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