4 / 60
第一章・憑依
3・再びの王都学園
しおりを挟む
シルフィ・グレンがスレイド侯爵家に嫁いだのは、十六の時だった。
まだ王都学園の高等部一年で、結局その為に辞めざるを得なかった。
それがロディアとして、また通う事になるなんて…笑ってしまうな。
もっと学びたいことや、友人だって作りたかった。
それを今からやればいいって?なんだか複雑だ。
世間的にもロディアが病弱なのは知れ渡っていたし、少し年下の人達と学ぶことにはなってしまうが、見た目的にもそれ程違和感はないとは思う。
今日はその手続きの為に、王都学園にやって来た。両親から話しは通してもらっていたのだが、学園側も一度どのくらい回復しているのかと、本当に通えるのかを判断する必要があるらしかった。
私が通っている時はまだ居なかったけれど、その後直ぐにこのイルシア国の王子が入学されたそうで…それで生徒の基準が厳しくなったようだった。
「ロディア・グレンさんですね?年齢は十七。一年途中での休学でしたが、二年生からの復学でいかがでしょうか?それだと一歳下の年齢の生徒達と同じになりますので」
学園側の面談の相手のステラ・スチワート先生がそう提案してくれて、有り難いなと思った。一年からまた…だと、同級生との年齢が二歳も開く事になる。一つ違いならほぼ同じ歳のようなものだろうから…
「はい、それでお願い致します。お気遣いいただいてありがとうございます!問題ないようでしたら、来週からでも通いたいのですが…よろしいですか?」
それにスチワート先生は大きく頷いて、大丈夫ですよとおっしゃった。
「ひとつだけ注意していただきたいのは、王族の方がお二人通われています。それによって外部から護衛の方や、側近の方も共に来られているのです。ですから誤解を受けるような行動は慎むようにお願いします。危ないですからね!でも、なるべく関わらないようにしていれば問題ないでしょう」
その言葉に身を引き締める。こんな力もない伯爵家の次男など、王族の皆様とお話しする機会もないだろうが…。でも、お見掛けする事くらいならありそうだ。
確か三年生に第一王子が、二年生に第二王子がいらっしゃるのだったな?それでは第二王子と同級生ということになるのか。
復学の手続きを無事に終えて、およそ二年半ぶりの学園の中を歩く。
すると、急に物悲しい気持ちに襲われる…
シルフィの時の同級生は皆卒業してしまって、誰一人として居ない。
あの時、あともう少しだけここに通えていたらあそこまでの孤独を味わう事も無かったのかも知れない。相談にのってくれる友人でもいればな…
──まあ、これから頑張って友人を作れば良いか!
まだ授業中で誰も居ない廊下を進むと、教室内にいる生徒何人かと目が合う。
皆んな不思議そうな顔をしているけど、見た事ないやつだ!とか思ってるんだろうな。
もしかして、今の子達とクラスメイトになるかも?って思うと、少しだけ楽しみになってきた。
そして丁度お昼のチャイムが鳴り響き、急に今まで静まりかえっていた廊下に喧騒が戻る。
「あっ!しまった…もっと早く帰れば良かったんだ」
そう思わず呟いたけど時すでに遅く、廊下はお昼に向かう生徒達でいっぱいになる。
ランチボックスを持ちながら友達と中庭に向かう人達、誰よりも早く!と食堂に駆けて行く人…いろいろだ。
私はその活気溢れる様子を横目で見ながら、来週から私もこの中に!?と、ちょっとだけ不安になる。
その人混みから何とか抜け出して、そのまま中庭に出た。沢山の木々が初夏の爽やかな風で揺れていて気持ちが良い。
いくつかあるベンチやガゼボには、皆が楽しそうに談笑しながら食事をしているのが見える。
さあ、ここを真っ直ぐに進めば正面に出る筈…と思っていると、急に人々のざわめきが聞こえ出す。
それから皆は、さっと身体を端に寄せ頭を下げている。
──あっ、もしかして王族の!?王子がいらっしゃったのだろうか?
それで私も同じように端に寄り、頭を下げてその一行が通り過ぎるのを待った。
すると剣を携えた護衛騎士らしき者が一人通り過ぎ、続けてゆっくりとした足取りで学園の制服を着た人が通っていく。恐らくこの制服の人が王子なのだろうな?
更にその後を一人、二人と続いて行く。
もう最後かな?そう思った時、騎士らしき人が私の前で立ち止まる。頭を下げているから見えないが、何だろうか?何か不敬な事をしてしまったのだろうか…?
そう思って、先程のスチワート先生の言葉が思い出された。
「誤解を受ける行動は慎む」そう言われたのに…
待っても去って行かない様子に困惑して、恐る恐る顔を上げた。
──うっ!何故…?
私は驚きの余り目を見開いた…
そこにはシルフィの時の夫、ドミニク・スレイドが立っていた。
まだ王都学園の高等部一年で、結局その為に辞めざるを得なかった。
それがロディアとして、また通う事になるなんて…笑ってしまうな。
もっと学びたいことや、友人だって作りたかった。
それを今からやればいいって?なんだか複雑だ。
世間的にもロディアが病弱なのは知れ渡っていたし、少し年下の人達と学ぶことにはなってしまうが、見た目的にもそれ程違和感はないとは思う。
今日はその手続きの為に、王都学園にやって来た。両親から話しは通してもらっていたのだが、学園側も一度どのくらい回復しているのかと、本当に通えるのかを判断する必要があるらしかった。
私が通っている時はまだ居なかったけれど、その後直ぐにこのイルシア国の王子が入学されたそうで…それで生徒の基準が厳しくなったようだった。
「ロディア・グレンさんですね?年齢は十七。一年途中での休学でしたが、二年生からの復学でいかがでしょうか?それだと一歳下の年齢の生徒達と同じになりますので」
学園側の面談の相手のステラ・スチワート先生がそう提案してくれて、有り難いなと思った。一年からまた…だと、同級生との年齢が二歳も開く事になる。一つ違いならほぼ同じ歳のようなものだろうから…
「はい、それでお願い致します。お気遣いいただいてありがとうございます!問題ないようでしたら、来週からでも通いたいのですが…よろしいですか?」
それにスチワート先生は大きく頷いて、大丈夫ですよとおっしゃった。
「ひとつだけ注意していただきたいのは、王族の方がお二人通われています。それによって外部から護衛の方や、側近の方も共に来られているのです。ですから誤解を受けるような行動は慎むようにお願いします。危ないですからね!でも、なるべく関わらないようにしていれば問題ないでしょう」
その言葉に身を引き締める。こんな力もない伯爵家の次男など、王族の皆様とお話しする機会もないだろうが…。でも、お見掛けする事くらいならありそうだ。
確か三年生に第一王子が、二年生に第二王子がいらっしゃるのだったな?それでは第二王子と同級生ということになるのか。
復学の手続きを無事に終えて、およそ二年半ぶりの学園の中を歩く。
すると、急に物悲しい気持ちに襲われる…
シルフィの時の同級生は皆卒業してしまって、誰一人として居ない。
あの時、あともう少しだけここに通えていたらあそこまでの孤独を味わう事も無かったのかも知れない。相談にのってくれる友人でもいればな…
──まあ、これから頑張って友人を作れば良いか!
まだ授業中で誰も居ない廊下を進むと、教室内にいる生徒何人かと目が合う。
皆んな不思議そうな顔をしているけど、見た事ないやつだ!とか思ってるんだろうな。
もしかして、今の子達とクラスメイトになるかも?って思うと、少しだけ楽しみになってきた。
そして丁度お昼のチャイムが鳴り響き、急に今まで静まりかえっていた廊下に喧騒が戻る。
「あっ!しまった…もっと早く帰れば良かったんだ」
そう思わず呟いたけど時すでに遅く、廊下はお昼に向かう生徒達でいっぱいになる。
ランチボックスを持ちながら友達と中庭に向かう人達、誰よりも早く!と食堂に駆けて行く人…いろいろだ。
私はその活気溢れる様子を横目で見ながら、来週から私もこの中に!?と、ちょっとだけ不安になる。
その人混みから何とか抜け出して、そのまま中庭に出た。沢山の木々が初夏の爽やかな風で揺れていて気持ちが良い。
いくつかあるベンチやガゼボには、皆が楽しそうに談笑しながら食事をしているのが見える。
さあ、ここを真っ直ぐに進めば正面に出る筈…と思っていると、急に人々のざわめきが聞こえ出す。
それから皆は、さっと身体を端に寄せ頭を下げている。
──あっ、もしかして王族の!?王子がいらっしゃったのだろうか?
それで私も同じように端に寄り、頭を下げてその一行が通り過ぎるのを待った。
すると剣を携えた護衛騎士らしき者が一人通り過ぎ、続けてゆっくりとした足取りで学園の制服を着た人が通っていく。恐らくこの制服の人が王子なのだろうな?
更にその後を一人、二人と続いて行く。
もう最後かな?そう思った時、騎士らしき人が私の前で立ち止まる。頭を下げているから見えないが、何だろうか?何か不敬な事をしてしまったのだろうか…?
そう思って、先程のスチワート先生の言葉が思い出された。
「誤解を受ける行動は慎む」そう言われたのに…
待っても去って行かない様子に困惑して、恐る恐る顔を上げた。
──うっ!何故…?
私は驚きの余り目を見開いた…
そこにはシルフィの時の夫、ドミニク・スレイドが立っていた。
156
お気に入りに追加
1,579
あなたにおすすめの小説
将来を誓い合った王子様は聖女と結ばれるそうです
きぬがやあきら
恋愛
「聖女になれなかったなりそこない。こんなところまで追って来るとはな。そんなに俺を忘れられないなら、一度くらい抱いてやろうか?」
5歳のオリヴィエは、神殿で出会ったアルディアの皇太子、ルーカスと恋に落ちた。アルディア王国では、皇太子が代々聖女を妻に迎える慣わしだ。しかし、13歳の選別式を迎えたオリヴィエは、聖女を落選してしまった。
その上盲目の知恵者オルガノに、若くして命を落とすと予言されたオリヴィエは、せめてルーカスの傍にいたいと、ルーカスが団長を務める聖騎士への道へと足を踏み入れる。しかし、やっとの思いで再開したルーカスは、昔の約束を忘れてしまったのではと錯覚するほど冷たい対応で――?
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
【奨励賞】恋愛感情抹消魔法で元夫への恋を消去する
SKYTRICK
BL
☆11/28完結しました。
☆第11回BL小説大賞奨励賞受賞しました。ありがとうございます!
冷酷大元帥×元娼夫の忘れられた夫
——「また俺を好きになるって言ったのに、嘘つき」
元娼夫で現魔術師であるエディことサラは五年ぶりに祖国・ファルンに帰国した。しかし暫しの帰郷を味わう間も無く、直後、ファルン王国軍の大元帥であるロイ・オークランスの使者が元帥命令を掲げてサラの元へやってくる。
ロイ・オークランスの名を知らぬ者は世界でもそうそういない。魔族の血を引くロイは人間から畏怖を大いに集めながらも、大将として国防戦争に打ち勝ち、たった二十九歳で大元帥として全軍のトップに立っている。
その元帥命令の内容というのは、五年前に最愛の妻を亡くしたロイを、魔族への本能的な恐怖を感じないサラが慰めろというものだった。
ロイは妻であるリネ・オークランスを亡くし、悲しみに苛まれている。あまりの辛さで『奥様』に関する記憶すら忘却してしまったらしい。半ば強引にロイの元へ連れていかれるサラは、彼に己を『サラ』と名乗る。だが、
——「失せろ。お前のような娼夫など必要としていない」
噂通り冷酷なロイの口からは罵詈雑言が放たれた。ロイは穢らわしい娼夫を睨みつけ去ってしまう。使者らは最愛の妻を亡くしたロイを憐れむばかりで、まるでサラの様子を気にしていない。
誰も、サラこそが五年前に亡くなった『奥様』であり、最愛のその人であるとは気付いていないようだった。
しかし、最大の問題は元夫に存在を忘れられていることではない。
サラが未だにロイを愛しているという事実だ。
仕方なく、『恋愛感情抹消魔法』を己にかけることにするサラだが——……
☆描写はありませんが、受けがモブに抱かれている示唆はあります(男娼なので)
☆お読みくださりありがとうございます。良ければ感想などいただけるとパワーになります!

【完結】家も家族もなくし婚約者にも捨てられた僕だけど、隣国の宰相を助けたら囲われて大切にされています。
cyan
BL
留学中に実家が潰れて家族を失くし、婚約者にも捨てられ、どこにも行く宛てがなく彷徨っていた僕を助けてくれたのは隣国の宰相だった。
家が潰れた僕は平民。彼は宰相様、それなのに僕は恐れ多くも彼に恋をした。
側妃は捨てられましたので
なか
恋愛
「この国に側妃など要らないのではないか?」
現王、ランドルフが呟いた言葉。
周囲の人間は内心に怒りを抱きつつ、聞き耳を立てる。
ランドルフは、彼のために人生を捧げて王妃となったクリスティーナ妃を側妃に変え。
別の女性を正妃として迎え入れた。
裏切りに近い行為は彼女の心を確かに傷付け、癒えてもいない内に廃妃にすると宣言したのだ。
あまりの横暴、人道を無視した非道な行い。
だが、彼を止める事は誰にも出来ず。
廃妃となった事実を知らされたクリスティーナは、涙で瞳を潤ませながら「分かりました」とだけ答えた。
王妃として教育を受けて、側妃にされ
廃妃となった彼女。
その半生をランドルフのために捧げ、彼のために献身した事実さえも軽んじられる。
実の両親さえ……彼女を慰めてくれずに『捨てられた女性に価値はない』と非難した。
それらの行為に……彼女の心が吹っ切れた。
屋敷を飛び出し、一人で生きていく事を選択した。
ただコソコソと身を隠すつまりはない。
私を軽んじて。
捨てた彼らに自身の価値を示すため。
捨てられたのは、どちらか……。
後悔するのはどちらかを示すために。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

侯爵令息セドリックの憂鬱な日
めちゅう
BL
第二王子の婚約者候補侯爵令息セドリック・グランツはある日王子の婚約者が決定した事を聞いてしまう。しかし先に王子からお呼びがかかったのはもう一人の候補だった。候補落ちを確信し泣き腫らした次の日は憂鬱な気分で幕を開ける———
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初投稿で拙い文章ですが楽しんでいただけますと幸いです。
【完結・ルート分岐あり】オメガ皇后の死に戻り〜二度と思い通りにはなりません〜
ivy
BL
魔術師の家門に生まれながら能力の発現が遅く家族から虐げられて暮らしていたオメガのアリス。
そんな彼を国王陛下であるルドルフが妻にと望み生活は一変する。
幸せになれると思っていたのに生まれた子供共々ルドルフに殺されたアリスは目が覚めると子供の頃に戻っていた。
もう二度と同じ轍は踏まない。
そう決心したアリスの戦いが始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる