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第五章・真実の愛
53・私達の地へ(最終回・後半侍従長Side)
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私とマクスは、辺境の地に帰る事になった。
これ以上王都にいると、出産の為に身動き出来なくなる┉。
辺境伯領に一人残してきたエリオットは、どんなにか心配して心細い思いをしているだろう。
そして、王都邸で私達をじっと待っていたオスカー。赤い瞳を覗き込めば、やっぱりガルド王に似ている┉。だけどマクスが言ったように家族は一緒に居なくては!
国境の地でガルド王と別れる時、私達はこれからの事を話した。
「陛下、オスカーの事ですがあの子はまだ小さい。親である私達が必要です!それから家族も┉。ですから共に辺境伯領に連れ帰ります。ですが、あの子が自分の将来を選択出来るようになる歳、十六になった時に真実を話そうと思います。私達はオスカー自身の選択を応援する事に致します!」
マクシミリアンが王にそうハッキリと宣言する。
その時、オスカーがどう選択するのかは分からない。王になりたいと思うのか、それとも私達と共に在りたいと思うのか┉。
──どちらにしても、その決断を優先する!それが親としての務めだろう。
「分かった┉それで良い。ただ、たまには会わせて欲しい。王都に来る時に一緒に┉。成長を見守るくらいは許されるであろう?私だって自分の子は見ていたい。そして良かったらエリオットも見守らせてくれ。」
王の揺れる瞳を見ていたら、少し心が傷んだ。こういう巡り合わせじゃなかったとしたら、この人との未来もあったのかも知れないな┉。
だけど私は、運命の人マクシミリアンと出逢ってしまったのだ──。
それから、かつて廃妃になり初めて辺境の地へ向かったあの時と同じように帰っていく。
当時はこれからどうなるのだろう?と心配な気持ちも大きかった。
だけど今は┉大事な家族が居るから!
一週間と少しかけて、久しぶりに家に帰って来た。
すると、もう一人の愛し子が泣きながら駆け寄って来る。
「かあさま!とうさまにオスカー!ぼく、いい子にしてたよ?でも、さびしかった┉」
泣きじゃくるエリオットを見て、私も思わずもらい泣きしてしまう┉
「エリオット!辺境伯家の長男として立派だったよ。偉かったね!ありがとう。」
「エリオット、勇敢だな!流石父様の子だ。」
「エリ~!ごめんね、しんぱいかけて」
私達は、家族皆んなで再会を喜んで、泣いて抱き合った。
それから半年後、私は女の子を出産した。
その子が受嚢身かどうかはまだ分からない。
ただ、だとしても一人の人と添い遂げる事が出来れば、何の問題もないことだから┉。
この子には、私にとってのマクシミリアンのような人に出逢って欲しい。そう強く願った──。
「主様┉どうしてご自分のものにしなかったのです?シルバ様も、オスカー様も┉」
その言葉に、主は少し悲しい顔をした。そして┉
「あぁ┉。二人共、私では幸せにする事は出来ないであろう。だが、マクシミリアンは光のような人物だ。父から愛されて育ったあの子ならば┉」
私は主の心情を慮って涙する。
「それに何故┉兄弟だと明かさないのです?ガルド王と辺境伯マクシミリアン様は双子の御兄弟だと┉。不思議な縁でございますね。」
「そうだな。私があのまま、辺境伯家の長男として育っていたらどうなっていたのか?と思う時がある┉。辺境伯に下げ渡されたルドミラ出身の元妃が王の子を産んだなどと、誰にも気付かれずに┉。」
──私は思い出していた。あの時一人きりで城に連れて来られた赤い目をしたまだ小さな男の子を┉その後、王から厳しく育てられて┉。
だけど、今回のマクシミリアン様と同じで先代の辺境伯様もガルド様の事も愛しておられた。
その当時の戦いで、王を庇って亡くなられたのだから┉。
そして、オスカー様がどのような選択をするのかは分からないが、私はきっとこちらに来てくれるのだと信じている┉。
だって、主の血を引いているのだから。
その時初めて主は、自分に向けられる「愛」を知るのかも知れない。
──それまで私は、気長に待とうか。
──The end.
「冷遇され家臣に下げ渡たされた元妃の物語」 を読んでいただいてありがとうございました!
今回、シリアスな話しでしたので途中、筆が進まない時があったのですが何とか最終回まで辿り着けました。(そういう時は前作の番外編書いてやり過ごしました…)
暫くはこちらでは作品公開しませんが、また必ず戻って来ますのでその時はよろしくお願いします!
途中、こちらのその後の番外編を時間を見つけて書こうと思っていますので、その時は読んでいただけると嬉しいです。ありがとうございました。
これ以上王都にいると、出産の為に身動き出来なくなる┉。
辺境伯領に一人残してきたエリオットは、どんなにか心配して心細い思いをしているだろう。
そして、王都邸で私達をじっと待っていたオスカー。赤い瞳を覗き込めば、やっぱりガルド王に似ている┉。だけどマクスが言ったように家族は一緒に居なくては!
国境の地でガルド王と別れる時、私達はこれからの事を話した。
「陛下、オスカーの事ですがあの子はまだ小さい。親である私達が必要です!それから家族も┉。ですから共に辺境伯領に連れ帰ります。ですが、あの子が自分の将来を選択出来るようになる歳、十六になった時に真実を話そうと思います。私達はオスカー自身の選択を応援する事に致します!」
マクシミリアンが王にそうハッキリと宣言する。
その時、オスカーがどう選択するのかは分からない。王になりたいと思うのか、それとも私達と共に在りたいと思うのか┉。
──どちらにしても、その決断を優先する!それが親としての務めだろう。
「分かった┉それで良い。ただ、たまには会わせて欲しい。王都に来る時に一緒に┉。成長を見守るくらいは許されるであろう?私だって自分の子は見ていたい。そして良かったらエリオットも見守らせてくれ。」
王の揺れる瞳を見ていたら、少し心が傷んだ。こういう巡り合わせじゃなかったとしたら、この人との未来もあったのかも知れないな┉。
だけど私は、運命の人マクシミリアンと出逢ってしまったのだ──。
それから、かつて廃妃になり初めて辺境の地へ向かったあの時と同じように帰っていく。
当時はこれからどうなるのだろう?と心配な気持ちも大きかった。
だけど今は┉大事な家族が居るから!
一週間と少しかけて、久しぶりに家に帰って来た。
すると、もう一人の愛し子が泣きながら駆け寄って来る。
「かあさま!とうさまにオスカー!ぼく、いい子にしてたよ?でも、さびしかった┉」
泣きじゃくるエリオットを見て、私も思わずもらい泣きしてしまう┉
「エリオット!辺境伯家の長男として立派だったよ。偉かったね!ありがとう。」
「エリオット、勇敢だな!流石父様の子だ。」
「エリ~!ごめんね、しんぱいかけて」
私達は、家族皆んなで再会を喜んで、泣いて抱き合った。
それから半年後、私は女の子を出産した。
その子が受嚢身かどうかはまだ分からない。
ただ、だとしても一人の人と添い遂げる事が出来れば、何の問題もないことだから┉。
この子には、私にとってのマクシミリアンのような人に出逢って欲しい。そう強く願った──。
「主様┉どうしてご自分のものにしなかったのです?シルバ様も、オスカー様も┉」
その言葉に、主は少し悲しい顔をした。そして┉
「あぁ┉。二人共、私では幸せにする事は出来ないであろう。だが、マクシミリアンは光のような人物だ。父から愛されて育ったあの子ならば┉」
私は主の心情を慮って涙する。
「それに何故┉兄弟だと明かさないのです?ガルド王と辺境伯マクシミリアン様は双子の御兄弟だと┉。不思議な縁でございますね。」
「そうだな。私があのまま、辺境伯家の長男として育っていたらどうなっていたのか?と思う時がある┉。辺境伯に下げ渡されたルドミラ出身の元妃が王の子を産んだなどと、誰にも気付かれずに┉。」
──私は思い出していた。あの時一人きりで城に連れて来られた赤い目をしたまだ小さな男の子を┉その後、王から厳しく育てられて┉。
だけど、今回のマクシミリアン様と同じで先代の辺境伯様もガルド様の事も愛しておられた。
その当時の戦いで、王を庇って亡くなられたのだから┉。
そして、オスカー様がどのような選択をするのかは分からないが、私はきっとこちらに来てくれるのだと信じている┉。
だって、主の血を引いているのだから。
その時初めて主は、自分に向けられる「愛」を知るのかも知れない。
──それまで私は、気長に待とうか。
──The end.
「冷遇され家臣に下げ渡たされた元妃の物語」 を読んでいただいてありがとうございました!
今回、シリアスな話しでしたので途中、筆が進まない時があったのですが何とか最終回まで辿り着けました。(そういう時は前作の番外編書いてやり過ごしました…)
暫くはこちらでは作品公開しませんが、また必ず戻って来ますのでその時はよろしくお願いします!
途中、こちらのその後の番外編を時間を見つけて書こうと思っていますので、その時は読んでいただけると嬉しいです。ありがとうございました。
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