【完結】冷遇され臣下に下げ渡された元妃の物語

MEIKO

文字の大きさ
上 下
54 / 57
第五章・真実の愛

53・私達の地へ(最終回・後半侍従長Side)

しおりを挟む
 私とマクスは、辺境の地に帰る事になった。
 これ以上王都にいると、出産の為に身動き出来なくなる┉。
 辺境伯領に一人残してきたエリオットは、どんなにか心配して心細い思いをしているだろう。

 そして、王都邸で私達をじっと待っていたオスカー。赤い瞳を覗き込めば、やっぱりガルド王に似ている┉。だけどマクスが言ったように家族は一緒に居なくては!

 国境の地でガルド王と別れる時、私達はこれからの事を話した。

 「陛下、オスカーの事ですがあの子はまだ小さい。親である私達が必要です!それから家族も┉。ですから共に辺境伯領に連れ帰ります。ですが、あの子が自分の将来を選択出来るようになる歳、十六になった時に真実を話そうと思います。私達はオスカー自身の選択を応援する事に致します!」

 マクシミリアンが王にそうハッキリと宣言する。
 その時、オスカーがどう選択するのかは分からない。王になりたいと思うのか、それとも私達と共に在りたいと思うのか┉。

 ──どちらにしても、その決断を優先する!それが親としての務めだろう。

 「分かった┉それで良い。ただ、たまには会わせて欲しい。王都に来る時に一緒に┉。成長を見守るくらいは許されるであろう?私だって自分の子は見ていたい。そして良かったらエリオットも見守らせてくれ。」

 王の揺れる瞳を見ていたら、少し心が傷んだ。こういう巡り合わせじゃなかったとしたら、この人との未来もあったのかも知れないな┉。
 だけど私は、運命の人マクシミリアンと出逢ってしまったのだ──。

 それから、かつて廃妃になり初めて辺境の地へ向かったあの時と同じように帰っていく。
 当時はこれからどうなるのだろう?と心配な気持ちも大きかった。
 だけど今は┉大事な家族が居るから!

 一週間と少しかけて、久しぶりに家に帰って来た。
 すると、もう一人の愛し子が泣きながら駆け寄って来る。

 「かあさま!とうさまにオスカー!ぼく、いい子にしてたよ?でも、さびしかった┉」

 泣きじゃくるエリオットを見て、私も思わずもらい泣きしてしまう┉

 「エリオット!辺境伯家の長男として立派だったよ。偉かったね!ありがとう。」

 「エリオット、勇敢だな!流石父様の子だ。」

 「エリ~!ごめんね、しんぱいかけて」

 私達は、家族皆んなで再会を喜んで、泣いて抱き合った。

 
 それから半年後、私は女の子を出産した。
 その子が受嚢身かどうかはまだ分からない。
 ただ、だとしても一人の人と添い遂げる事が出来れば、何の問題もないことだから┉。

 この子には、私にとってのマクシミリアンのような人に出逢って欲しい。そう強く願った──。



 「あるじ様┉どうしてご自分のものにしなかったのです?シルバ様も、オスカー様も┉」

 その言葉に、主は少し悲しい顔をした。そして┉

 「あぁ┉。二人共、私では幸せにする事は出来ないであろう。だが、マクシミリアンは光のような人物だ。父から愛されて育ったあの子ならば┉」

 私は主の心情をおもんばかって涙する。

 「それに何故┉兄弟だと明かさないのです?ガルド王と辺境伯マクシミリアン様は双子の御兄弟だと┉。不思議な縁でございますね。」

 「そうだな。私があのまま、辺境伯家の長男として育っていたらどうなっていたのか?と思う時がある┉。辺境伯に下げ渡されたルドミラ出身の元妃が王の子を産んだなどと、誰にも気付かれずに┉。」

 ──私は思い出していた。あの時一人きりで城に連れて来られた赤い目をしたまだ小さな男の子を┉その後、王から厳しく育てられて┉。
 
 だけど、今回のマクシミリアン様と同じで先代の辺境伯様もガルド様の事も愛しておられた。
 その当時の戦いで、王を庇って亡くなられたのだから┉。

 そして、オスカー様がどのような選択をするのかは分からないが、私はきっとこちらに来てくれるのだと信じている┉。
 だって、主の血を引いているのだから。
 その時初めて主は、自分に向けられる「愛」を知るのかも知れない。

 ──それまで私は、気長に待とうか。



     ──The end.


 「冷遇され家臣に下げ渡たされた元妃の物語」 を読んでいただいてありがとうございました!
 今回、シリアスな話しでしたので途中、筆が進まない時があったのですが何とか最終回まで辿り着けました。(そういう時は前作の番外編書いてやり過ごしました…)

 暫くはこちらでは作品公開しませんが、また必ず戻って来ますのでその時はよろしくお願いします!

 途中、こちらのその後の番外編を時間を見つけて書こうと思っていますので、その時は読んでいただけると嬉しいです。ありがとうございました。


 
しおりを挟む
感想 25

あなたにおすすめの小説

愛されない皇妃~最強の母になります!~

椿蛍
ファンタジー
愛されない皇妃『ユリアナ』 やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。 夫も子どもも――そして、皇妃の地位。 最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。 けれど、そこからが問題だ。 皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。 そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど…… 皇帝一家を倒した大魔女。 大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!? ※表紙は作成者様からお借りしてます。 ※他サイト様に掲載しております。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

【短編】旦那様、2年後に消えますので、その日まで恩返しをさせてください

あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
「二年後には消えますので、ベネディック様。どうかその日まで、いつかの恩返しをさせてください」 「恩? 私と君は初対面だったはず」 「そうかもしれませんが、そうではないのかもしれません」 「意味がわからない──が、これでアルフの、弟の奇病も治るのならいいだろう」 奇病を癒すため魔法都市、最後の薬師フェリーネはベネディック・バルテルスと契約結婚を持ちかける。 彼女の目的は遺産目当てや、玉の輿ではなく──?

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話

甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。 王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。 その時、王子の元に一通の手紙が届いた。 そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。 王子は絶望感に苛まれ後悔をする。

子持ちの私は、夫に駆け落ちされました

月山 歩
恋愛
産まれたばかりの赤子を抱いた私は、砦に働きに行ったきり、帰って来ない夫を心配して、鍛錬場を訪れた。すると、夫の上司は夫が仕事中に駆け落ちしていなくなったことを教えてくれた。食べる物がなく、フラフラだった私は、その場で意識を失った。赤子を抱いた私を気の毒に思った公爵家でお世話になることに。

処理中です...