【完結】冷遇され臣下に下げ渡された元妃の物語

MEIKO

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第五章・真実の愛

44・母の故国ルドミラ

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 「ルドミラ」母の故国で、今はもう亡き国だ┉。

 それがどう関係しているのか、全く検討もつかない。

 ルイス兄上は私のことを気遣ってか、優しい声でゆっくりと語り出した。

 「シルバ、ルドミラがお母様の故国なのは知っているね?そのお母様が嫁いでいらした時、私はもう生まれていて朧げだが記憶がある。当時、相当に反対されていたよ。お母様がどうこうではないのだ┉ルドミラの王家からという理由だ。」

 ──母が嫁いで来るのを┉反対!?それは一体何故?

 「ルドミラとカリシュは元は同じ王家だったのだ。それが二つの国に分かれた。知っているようにカリシュでは私達のような半性身が産まれるね?同じようにルドミラでは受嚢身じゅのうしんと呼ばれる者が産まれるんだ。どちらも神の祝福があると言われている。そして、それは恐らく神の血、故だろう。」

 「受嚢身!それはどういう身体なのですか?それに神の血とは┉」

 兄上が言うには、受嚢身は女性だけに現れる身体特徴で、子宮の中に相手の子種を保存できる嚢が付いている。だから一度交われば、およそ三年ほど保存が可能で┉。

 その特徴は、男子が産まれにくい者、身体が弱い者に好まれる。そうしてこの大陸でカリシュと同じように生き残っていたルドミラ国だが、その特徴を良く思わない者をも生む結果に┉。

 本人が死んだ後にも、産まれる可能性があるということだ。それによって跡目争いや混乱を巻き起こしてしまう。
 その中の一つの国によって滅ぼされたルドミラの、最期の王族が私の母だった┉。

 元々、神の祝福がある子が産まれるとは、神の血を引く子供であること。
 先祖が神と交わる事によって受け継がれたその特徴は、二つに分かれ、さらに国によって一つずつに分かれた。

 半性身は男性でカリシュ国。受嚢身は女性でルドミラ国と┉。

 その二つの特徴が合わさった子がもしも産まれたら┉という懸念で結婚が反対されのだと。

 「それではもしや兄上┉私にはその二つの特徴が!?半性身であり、受嚢身なのか!」

 ルイス兄上は、静かに頷いた。そして┉

 「そうなのだ┉。だから父上はガルド王には嫁がせたくなくて、お前を最初紹介しなかったのだよ?もう既に王妃も跡継ぎの王子もいたから。そうなるとシルバの命が狙われるからと┉」

 ──私は愕然とした。父上からは愛されていないのだと思っていたから。
 私を産んで直ぐに亡くなった母┉だから愛されないのだと思っていた┉。全く違ったのだな?

 それではもしや、あの王妃とその父であるロハス宰相は知っていたのかも?
 自分の息子や孫を脅かす可能性のある私を!それにガルド王は私を最初から愛していたと言っていたし┉。

 私は一度に沢山の真実を聞いて、戸惑いが隠せない。色んな思いがぐるぐると頭の中で浮かんでは消え、収拾がつかない。

 ──そして、やっぱりガルド王の子を産んでしまったのか┉。
 三年保つのだったら可能性はあるのだ。

 私は急に心細くなってきて、涙が溢れる。

 ──ああ、マクスに会いたい!そして私を抱き締めて欲しいのに┉。
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