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第四章・運命の歯車
35・渇望(マクスSide)
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この圧倒的な軍事力を誇る大帝国に戦を仕掛ける愚かな国など、もう無いだろうと思っていたが、近頃きな臭い動きをする国が現れた。
その国を警戒する為に王都に集められた兵は、各地を警戒する目的で配置される。
私マクシミリアン・ベルードは、父親譲りの剣の腕で名を馳せ、二年ほど前に「王の剣」として王のお側で護衛を務める事になった。
それが父親の急死で叶わなくなり、後を継いで辺境伯となる。
そんな経緯で暫く王都を離れていたが、このような時にはどれだけ遠くに住んでいようとも駆け付けなければならない。
我が辺境の兵には、山の上にある監視台での警備を命ぜられる。
そのまま二週間が過ぎ、初めての山地での警備に少し疲れが見えて来た時、監視台の面々に緊張が走る。
「マクシミリアン様!何者かがこちらに向かって来ております。ですが相当にふらついておりまして、敵だとは思えませんが┉」
「何だと?何者かが┉でも敵だとは思えないのだな?では私が行ってこよう。皆はこのまま監視を続けているように!」
疲れ切っている状態の部下達を、敵でも無い者を確認などの目的に行かせる訳にはいかないと思った。それなら私が┉と向かう。
監視台から一時間ほど降りて、もしかしてこの辺りか?と緊張しながら見渡すと、山道の途中に少しだけなだらかになった所がある。
その部分の崖にせり出した所に誰かが腰掛けているのが見えた。
確かに服装や体型から、敵の兵士には見えない。
だけど┉あの人は何者なのだろう?なぜこんな所に┉
男にしては細身で、丈の長い見ただけでも分かるような上等な服を着ている。
じっと見ていると楽しそうに笑ったかと思えば、徐ろに立ち上がり遠くを見つめている。と、その瞬間身体を前に揺らめかせる。
「あ、危ない!!」
その時、初めてシルバの┉その甘やかな身体を抱き締めた。
一体どこから漂ってくるのだろうと思うほどの甘美な香りが鼻孔をくすぐり、その美しい菫色の瞳はもう私の心を離さない!
その瞬間私は恋に落ち、身分差も立ちはだかる数々の問題も、一切物ともせず全力で手に入れるべく動いた。
その全身全霊で求め、愛したシルバが消えた┉。
オスカーの件を知り、待ち合わせの宿屋に急いだ私に待っていたのは、頭を殴られて負傷した護衛だけだった┉。
それから私は死にものぐるいでシルバとオスカーを捜す。
やがて、見つけだしたのはあの男┉ロベルトだ。
シルバの温情で我が家に迎え入れてやったにも関わらず、恩を仇で返すような真似をする憎き男。
だが、ロベルトが言うには自分と家族の命を救った恩人からどうしてもと頼まれて断われなかったと┉。
それにオスカーを本当の家族のように思っていたから、実行する振りをして後に無事に返すつもりであった事を泣きながら白状する。
私がロベルトの居場所を特定するほんの少し前に、オスカーはその恩人が連れ去ったと。
だけど、シルバが居なくなった件は全く知らないという┉。
その犯人を教えるように問い詰めたが知らぬの一点張りで┉。
そして隙をついて毒を煽り果てる。その最後に何か思う所があったのか、スサ┉と言い遺していた。
──スサ┉とは、スサの離宮か?
この王都から、カサンドラ国側に向かって一日ほど進んだ所にある┉。
「皆の者、今からスサの離宮に向かうぞ!」
その国を警戒する為に王都に集められた兵は、各地を警戒する目的で配置される。
私マクシミリアン・ベルードは、父親譲りの剣の腕で名を馳せ、二年ほど前に「王の剣」として王のお側で護衛を務める事になった。
それが父親の急死で叶わなくなり、後を継いで辺境伯となる。
そんな経緯で暫く王都を離れていたが、このような時にはどれだけ遠くに住んでいようとも駆け付けなければならない。
我が辺境の兵には、山の上にある監視台での警備を命ぜられる。
そのまま二週間が過ぎ、初めての山地での警備に少し疲れが見えて来た時、監視台の面々に緊張が走る。
「マクシミリアン様!何者かがこちらに向かって来ております。ですが相当にふらついておりまして、敵だとは思えませんが┉」
「何だと?何者かが┉でも敵だとは思えないのだな?では私が行ってこよう。皆はこのまま監視を続けているように!」
疲れ切っている状態の部下達を、敵でも無い者を確認などの目的に行かせる訳にはいかないと思った。それなら私が┉と向かう。
監視台から一時間ほど降りて、もしかしてこの辺りか?と緊張しながら見渡すと、山道の途中に少しだけなだらかになった所がある。
その部分の崖にせり出した所に誰かが腰掛けているのが見えた。
確かに服装や体型から、敵の兵士には見えない。
だけど┉あの人は何者なのだろう?なぜこんな所に┉
男にしては細身で、丈の長い見ただけでも分かるような上等な服を着ている。
じっと見ていると楽しそうに笑ったかと思えば、徐ろに立ち上がり遠くを見つめている。と、その瞬間身体を前に揺らめかせる。
「あ、危ない!!」
その時、初めてシルバの┉その甘やかな身体を抱き締めた。
一体どこから漂ってくるのだろうと思うほどの甘美な香りが鼻孔をくすぐり、その美しい菫色の瞳はもう私の心を離さない!
その瞬間私は恋に落ち、身分差も立ちはだかる数々の問題も、一切物ともせず全力で手に入れるべく動いた。
その全身全霊で求め、愛したシルバが消えた┉。
オスカーの件を知り、待ち合わせの宿屋に急いだ私に待っていたのは、頭を殴られて負傷した護衛だけだった┉。
それから私は死にものぐるいでシルバとオスカーを捜す。
やがて、見つけだしたのはあの男┉ロベルトだ。
シルバの温情で我が家に迎え入れてやったにも関わらず、恩を仇で返すような真似をする憎き男。
だが、ロベルトが言うには自分と家族の命を救った恩人からどうしてもと頼まれて断われなかったと┉。
それにオスカーを本当の家族のように思っていたから、実行する振りをして後に無事に返すつもりであった事を泣きながら白状する。
私がロベルトの居場所を特定するほんの少し前に、オスカーはその恩人が連れ去ったと。
だけど、シルバが居なくなった件は全く知らないという┉。
その犯人を教えるように問い詰めたが知らぬの一点張りで┉。
そして隙をついて毒を煽り果てる。その最後に何か思う所があったのか、スサ┉と言い遺していた。
──スサ┉とは、スサの離宮か?
この王都から、カサンドラ国側に向かって一日ほど進んだ所にある┉。
「皆の者、今からスサの離宮に向かうぞ!」
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