【完結】冷遇され臣下に下げ渡された元妃の物語

MEIKO

文字の大きさ
上 下
33 / 57
第三章・予期せぬ計略

32・慚愧の念

しおりを挟む
 「ガ、ガルド王が!?なぜ┉やはり陛下が私の息子をさらったのですか?」

 私とオスカーの再会を、意外なほど優しい目をして見つめていた王は、私の言葉に瞳を揺らめかせる。そして┉

 「ちがうよ!へいかは、ぼくをたすけてくれたんだよ?それから、このふくもくださって」
 
 陛下の変わりに答えたのは、意外にも私の腕の中にいるオスカーで、尚且つ助けられたのだと言う。

 ──えっ、た、助けてくれた┉と?
 だけど┉どうしてオスカーの行方が分かったというのか?
 居なくなった時の経緯も、辺境伯家に届いた手紙の件も知らないというのに┉。

 「それには私が、御説明致しましょう。」

 いきなり聞き覚えのある声が響き、ガルド王の後ろからマッケラン侍従長が現れた。
 それにはオスカーが「じじゅうちょうさまー!」と慣れた様子が伺える反応を見せる。

 ──オスカー!王だけでなく、マッケランも知っているのか┉?

 その事実に何か嫌な感じがしたのだが、そのまま黙ってマッケランの次の言葉を待った。

 「ロベルトですよ。ロベルト・アンダシアというのは辺境伯家の使用人ですね?元は後宮で働いていた人間だと記憶してしますが┉。それが何故今は、辺境伯家に居るのかは知りませんが、その者がシルバ様の御子息オスカー様をさらったのですよ?」

 その名を聞いて、愕然がくぜんとする。┉まさか!

 「ロ、ロベルトが?確かに今はベルード辺境伯家の使用人です。元々、後宮では私の世話をしてくれていました。それでロベルトも共に辺境伯領へと┉。」

 すっかり動揺してしまって、思わず小声で呟くように答えてしまっていた。それから┉

 「オスカー、本当なのか?ロベルトに連れていかれたと?でも捜索にも加わって┉」

 「うん。ちちうえが、ぼくをよんでるって。それで、ばしゃにのれっていわれて。」

 見知らぬ馬車┉そういう目撃情報があったと思う。
 なれど、そう言ったのは┉確かロベルト本人ではなかっただろうか?自分ではないと思わせる為に、わざと言ったということか┉。

 「シルバ様は、そのロベルトが取り潰しになった伯爵家の令息だった事はご存知ですか?」

 突然そう問われて、ビクリとなる。それから大きく頷きながら答えた。

 「はい┉本人から聞いています。私が後宮に居たのは二年ですが、世話をしてくれたのは一年と少しでしょうか。その間、個人的な事を聞いたことはありませんでした。でも城を去る日、辺境の地に一緒に連れて行って欲しいと┉。その時に初めて知りましたが。」

 それには何故か、問いかけた本人マッケランとガルド王が顔を見合わせて頷きあう。

 「シルバ様┉以前、後宮で妃としての手当てを取られていた時期がおありでしたね?その犯人として処罰された妃が居たのを覚えていらっしゃいますか?」

 胸がぎゅっとなる┉何か嫌な感じだ。もしかして┉そうなのか?

 「その離宮に軟禁された妃が、アンダシア伯爵家の令嬢だったのです。その罪の責任を問われて取り潰しになっている┉あっ、大丈夫ですか!?」

 やっぱりそうなのか┉と思ったのと同時に身体の力が抜ける。
 先程から、この上なく嬉しいオスカーとの再会と、このような事態を自分の人を見る目の無さで引き起こしてしまったのか┉という慚愧ざんきねん

 その相反するような気持ちの変動に、心がついて行かずに┉。

 ──あぁ、やっぱり一番の愚か者は私だ┉。

 そう思って身体をふらつかせていると、またしても王に支えられてしまう。
 まるで宝物を扱うようにそうっと抱き締められて、優しい微笑みを向けられているのを見てしまったが、そのまま意識をなくしてしまっていた──。
しおりを挟む
感想 25

あなたにおすすめの小説

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

愛されない皇妃~最強の母になります!~

椿蛍
ファンタジー
愛されない皇妃『ユリアナ』 やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。 夫も子どもも――そして、皇妃の地位。 最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。 けれど、そこからが問題だ。 皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。 そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど…… 皇帝一家を倒した大魔女。 大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!? ※表紙は作成者様からお借りしてます。 ※他サイト様に掲載しております。

【短編】旦那様、2年後に消えますので、その日まで恩返しをさせてください

あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
「二年後には消えますので、ベネディック様。どうかその日まで、いつかの恩返しをさせてください」 「恩? 私と君は初対面だったはず」 「そうかもしれませんが、そうではないのかもしれません」 「意味がわからない──が、これでアルフの、弟の奇病も治るのならいいだろう」 奇病を癒すため魔法都市、最後の薬師フェリーネはベネディック・バルテルスと契約結婚を持ちかける。 彼女の目的は遺産目当てや、玉の輿ではなく──?

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

子持ちの私は、夫に駆け落ちされました

月山 歩
恋愛
産まれたばかりの赤子を抱いた私は、砦に働きに行ったきり、帰って来ない夫を心配して、鍛錬場を訪れた。すると、夫の上司は夫が仕事中に駆け落ちしていなくなったことを教えてくれた。食べる物がなく、フラフラだった私は、その場で意識を失った。赤子を抱いた私を気の毒に思った公爵家でお世話になることに。

幽閉王子は最強皇子に包まれる

皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。 表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。

【完結】第三王子は、自由に踊りたい。〜豹の獣人と、第一王子に言い寄られてますが、僕は一体どうすればいいでしょうか?〜

N2O
BL
気弱で不憫属性の第三王子が、二人の男から寵愛を受けるはなし。 表紙絵 ⇨元素 様 X(@10loveeeyy) ※独自設定、ご都合主義です。 ※ハーレム要素を予定しています。

処理中です...