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第三章・予期せぬ計略
32・慚愧の念
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「ガ、ガルド王が!?なぜ┉やはり陛下が私の息子を攫ったのですか?」
私とオスカーの再会を、意外なほど優しい目をして見つめていた王は、私の言葉に瞳を揺らめかせる。そして┉
「ちがうよ!へいかは、ぼくをたすけてくれたんだよ?それから、このふくもくださって」
陛下の変わりに答えたのは、意外にも私の腕の中にいるオスカーで、尚且つ助けられたのだと言う。
──えっ、た、助けてくれた┉と?
だけど┉どうしてオスカーの行方が分かったというのか?
居なくなった時の経緯も、辺境伯家に届いた手紙の件も知らないというのに┉。
「それには私が、御説明致しましょう。」
いきなり聞き覚えのある声が響き、ガルド王の後ろからマッケラン侍従長が現れた。
それにはオスカーが「じじゅうちょうさまー!」と慣れた様子が伺える反応を見せる。
──オスカー!王だけでなく、マッケランも知っているのか┉?
その事実に何か嫌な感じがしたのだが、そのまま黙ってマッケランの次の言葉を待った。
「ロベルトですよ。ロベルト・アンダシアというのは辺境伯家の使用人ですね?元は後宮で働いていた人間だと記憶してしますが┉。それが何故今は、辺境伯家に居るのかは知りませんが、その者がシルバ様の御子息オスカー様を攫ったのですよ?」
その名を聞いて、愕然とする。┉まさか!
「ロ、ロベルトが?確かに今はベルード辺境伯家の使用人です。元々、後宮では私の世話をしてくれていました。それでロベルトも共に辺境伯領へと┉。」
すっかり動揺してしまって、思わず小声で呟くように答えてしまっていた。それから┉
「オスカー、本当なのか?ロベルトに連れていかれたと?でも捜索にも加わって┉」
「うん。ちちうえが、ぼくをよんでるって。それで、ばしゃにのれっていわれて。」
見知らぬ馬車┉そういう目撃情報があったと思う。
なれど、そう言ったのは┉確かロベルト本人ではなかっただろうか?自分ではないと思わせる為に、わざと言ったということか┉。
「シルバ様は、そのロベルトが取り潰しになった伯爵家の令息だった事はご存知ですか?」
突然そう問われて、ビクリとなる。それから大きく頷きながら答えた。
「はい┉本人から聞いています。私が後宮に居たのは二年ですが、世話をしてくれたのは一年と少しでしょうか。その間、個人的な事を聞いたことはありませんでした。でも城を去る日、辺境の地に一緒に連れて行って欲しいと┉。その時に初めて知りましたが。」
それには何故か、問いかけた本人マッケランとガルド王が顔を見合わせて頷きあう。
「シルバ様┉以前、後宮で妃としての手当てを取られていた時期がおありでしたね?その犯人として処罰された妃が居たのを覚えていらっしゃいますか?」
胸がぎゅっとなる┉何か嫌な感じだ。もしかして┉そうなのか?
「その離宮に軟禁された妃が、アンダシア伯爵家の令嬢だったのです。その罪の責任を問われて取り潰しになっている┉あっ、大丈夫ですか!?」
やっぱりそうなのか┉と思ったのと同時に身体の力が抜ける。
先程から、この上なく嬉しいオスカーとの再会と、このような事態を自分の人を見る目の無さで引き起こしてしまったのか┉という慚愧の念。
その相反するような気持ちの変動に、心がついて行かずに┉。
──あぁ、やっぱり一番の愚か者は私だ┉。
そう思って身体をふらつかせていると、またしても王に支えられてしまう。
まるで宝物を扱うようにそうっと抱き締められて、優しい微笑みを向けられているのを見てしまったが、そのまま意識をなくしてしまっていた──。
私とオスカーの再会を、意外なほど優しい目をして見つめていた王は、私の言葉に瞳を揺らめかせる。そして┉
「ちがうよ!へいかは、ぼくをたすけてくれたんだよ?それから、このふくもくださって」
陛下の変わりに答えたのは、意外にも私の腕の中にいるオスカーで、尚且つ助けられたのだと言う。
──えっ、た、助けてくれた┉と?
だけど┉どうしてオスカーの行方が分かったというのか?
居なくなった時の経緯も、辺境伯家に届いた手紙の件も知らないというのに┉。
「それには私が、御説明致しましょう。」
いきなり聞き覚えのある声が響き、ガルド王の後ろからマッケラン侍従長が現れた。
それにはオスカーが「じじゅうちょうさまー!」と慣れた様子が伺える反応を見せる。
──オスカー!王だけでなく、マッケランも知っているのか┉?
その事実に何か嫌な感じがしたのだが、そのまま黙ってマッケランの次の言葉を待った。
「ロベルトですよ。ロベルト・アンダシアというのは辺境伯家の使用人ですね?元は後宮で働いていた人間だと記憶してしますが┉。それが何故今は、辺境伯家に居るのかは知りませんが、その者がシルバ様の御子息オスカー様を攫ったのですよ?」
その名を聞いて、愕然とする。┉まさか!
「ロ、ロベルトが?確かに今はベルード辺境伯家の使用人です。元々、後宮では私の世話をしてくれていました。それでロベルトも共に辺境伯領へと┉。」
すっかり動揺してしまって、思わず小声で呟くように答えてしまっていた。それから┉
「オスカー、本当なのか?ロベルトに連れていかれたと?でも捜索にも加わって┉」
「うん。ちちうえが、ぼくをよんでるって。それで、ばしゃにのれっていわれて。」
見知らぬ馬車┉そういう目撃情報があったと思う。
なれど、そう言ったのは┉確かロベルト本人ではなかっただろうか?自分ではないと思わせる為に、わざと言ったということか┉。
「シルバ様は、そのロベルトが取り潰しになった伯爵家の令息だった事はご存知ですか?」
突然そう問われて、ビクリとなる。それから大きく頷きながら答えた。
「はい┉本人から聞いています。私が後宮に居たのは二年ですが、世話をしてくれたのは一年と少しでしょうか。その間、個人的な事を聞いたことはありませんでした。でも城を去る日、辺境の地に一緒に連れて行って欲しいと┉。その時に初めて知りましたが。」
それには何故か、問いかけた本人マッケランとガルド王が顔を見合わせて頷きあう。
「シルバ様┉以前、後宮で妃としての手当てを取られていた時期がおありでしたね?その犯人として処罰された妃が居たのを覚えていらっしゃいますか?」
胸がぎゅっとなる┉何か嫌な感じだ。もしかして┉そうなのか?
「その離宮に軟禁された妃が、アンダシア伯爵家の令嬢だったのです。その罪の責任を問われて取り潰しになっている┉あっ、大丈夫ですか!?」
やっぱりそうなのか┉と思ったのと同時に身体の力が抜ける。
先程から、この上なく嬉しいオスカーとの再会と、このような事態を自分の人を見る目の無さで引き起こしてしまったのか┉という慚愧の念。
その相反するような気持ちの変動に、心がついて行かずに┉。
──あぁ、やっぱり一番の愚か者は私だ┉。
そう思って身体をふらつかせていると、またしても王に支えられてしまう。
まるで宝物を扱うようにそうっと抱き締められて、優しい微笑みを向けられているのを見てしまったが、そのまま意識をなくしてしまっていた──。
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