【完結】冷遇され臣下に下げ渡された元妃の物語

MEIKO

文字の大きさ
上 下
26 / 57
第三章・予期せぬ計略

25・望まぬ再会

しおりを挟む
 私はガタガタと身体を震わせ、目の前のガルド王を凝視した。

 ──ど、どうして此処に?こんな寂れた宿に偶然居るなど有り得ない!それに┉皆はどうしたのだ?
 ここには私とガルド王、二人しか居ないような気がしてならない!まさか┉

 「へ、陛下┉なぜこちらにおられるのです?それに辺境伯家の護衛の者や使用人はどこへ┉もちろんご存知なのですね?」

 ガルド王はじっと私を見つめていたが、そう言葉を発した途端、嬉しそうに微笑んだ。

 「シルバ┉美しくなったな。本当に輝くばかりだ┉それもあの男、ベルードの愛を受けてか?」

 「な、何をおっしゃって┉あ、の┉」

 あれから三年以上だ┉城でマクシミリアンと一緒に婚姻の書状に署名して、王からの了承をいただいて。
 それから速やかに城を去った┉。

 城から辺境伯家の馬車に乗り、王都邸まで馬車を進めている間、ずっとどこからか王の視線を感じていた。
 きっとどこかの窓から、私を見ているのだろう┉と、その視線を感じなくなるまで気が抜けない思いがした。

 ──私はこの方からの視線が苦手だ┉じっと見られていると全てを見透かされている気がする。そして、あの微笑み。

 いつもは厳しい表情の王が、私に向かって優しく微笑まれると気持ちが落ち着かない。
 まるで、あの時の┉初夜の時に私に微笑まれた、あのお顔を思い出してしまうから┉。

 ──だけどしっかりしなくては。マクスに会うまで!そしてオスカーを取り戻すまで!

 「単刀直入に申し上げます。ベルード辺境伯家の次男、オスカー・ベルードを連れ去ったのは┉陛下なのですか?もしもそうなら┉返答次第では赦せません!」

 この国の王に対して、そのような言動を取るなど、どのような処罰を与えられても仕方のない事だ。場合によっては命を取られることだって┉。
 だけど、それでも言わずにはいられない!

 もしも私をおびき寄せる目的で、あの子を利用したんだとしたら┉到底赦せることではない!早くあの愛し子をこの手に取り戻さなければ。

 「次男の┉オスカーを┉だと?居なくなったのか!?」

 王の反応は意外なものだった。この有り得ない状況は、間違いなくオスカーの事と関係している┉そう思った。
 
 ──だけど┉違うのか?それでは何故ここに居る?どうして┉

 「シルバ、お前は次男のオスカーの行方を追ってここまで来たのか?辺境の地からこんな所まで。」

 王は明らかに動揺している。揺れ動く赤い瞳がそれを物語っていた。この方ではないのか┉と思った時、いつの間にか私の背後に誰か立っている気配に気付く。

 誰か?┉と振り向こうとした瞬間、口元に布のような物を当てられた。

 ──うっ、何だ?この匂い!な、何か変な香りが┉

 やがてその布が取り除かれると、途端に意識が朦朧としてくる。
 ぐらぐらと天井が揺れて、とてもじゃないが立って居られない!

 目の前に居る王が、驚いたように目を見開き、咄嗟にそんな私を抱き抱える。
 その逞しい胸に抱かれて、これがマクシミリアンだったなら┉と思ってしまった。

 意識が途切れそうになる私の後ろから誰かが囁く。

 「シルバ様、この薬品は身体には影響ございませんので安心なさって下さい。このまま王の腕に抱かれて王都まで。その方が┉楽でございますよ?」

 ──誰だ!?この男は?マ、マクス┉私を助けて!

 そう呟いた瞬間、私は意識を手放した。
しおりを挟む
感想 25

あなたにおすすめの小説

愛されない皇妃~最強の母になります!~

椿蛍
ファンタジー
愛されない皇妃『ユリアナ』 やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。 夫も子どもも――そして、皇妃の地位。 最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。 けれど、そこからが問題だ。 皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。 そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど…… 皇帝一家を倒した大魔女。 大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!? ※表紙は作成者様からお借りしてます。 ※他サイト様に掲載しております。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

【短編】旦那様、2年後に消えますので、その日まで恩返しをさせてください

あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
「二年後には消えますので、ベネディック様。どうかその日まで、いつかの恩返しをさせてください」 「恩? 私と君は初対面だったはず」 「そうかもしれませんが、そうではないのかもしれません」 「意味がわからない──が、これでアルフの、弟の奇病も治るのならいいだろう」 奇病を癒すため魔法都市、最後の薬師フェリーネはベネディック・バルテルスと契約結婚を持ちかける。 彼女の目的は遺産目当てや、玉の輿ではなく──?

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話

甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。 王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。 その時、王子の元に一通の手紙が届いた。 そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。 王子は絶望感に苛まれ後悔をする。

子持ちの私は、夫に駆け落ちされました

月山 歩
恋愛
産まれたばかりの赤子を抱いた私は、砦に働きに行ったきり、帰って来ない夫を心配して、鍛錬場を訪れた。すると、夫の上司は夫が仕事中に駆け落ちしていなくなったことを教えてくれた。食べる物がなく、フラフラだった私は、その場で意識を失った。赤子を抱いた私を気の毒に思った公爵家でお世話になることに。

処理中です...