【完結】冷遇され臣下に下げ渡された元妃の物語

MEIKO

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第三章・予期せぬ計略

24・オスカーの行方

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 オスカーの行方は依然と掴めず、あの手紙の信憑性もわからぬまま時間だけが過ぎる。
 誰かの悪戯だとしたら、私が王都に行っている間に、取り返しがつかない事態になるかもしれない。

 もしも手紙が本当だとしても、誰が何の為に!?
 そして、あの可愛い我が子がどのような目に合っているのかを想像しただけで、この胸がむしられる。

 腹の子の為には、心を安静にしなくてはならないが、到底そんな事は出来ずに┉。 

 取り敢えずセバスに頼んで、マクシミリアンに向けて早馬を出す。
 そして私は、何も分からぬまま王都に向けて出立する事を決めた!
 セバスは身重の私を心配して、王都行きを反対したが、私の気持ちは変わらない。
 きっと途中で、連絡を受けたマクスと合流出来るだろうし┉。

 護衛の者二人と、王都を良く知っているロベルトを連れて行く。

 「エリオット、母様も父様も居ない今、この家を守れるのはあなただけだよ!屋敷の皆んなと待っていられるね?必ずオスカーを連れて帰るから!」

 エリオットは不安そうな顔をしていたが、気丈に振る舞って大丈夫だと言う。
 そしてくれぐれも一人で屋敷の外には出ない事を約束させて、四人で出立した。

 身重の身体で馬車はキツイが、背に腹は代えられない。道中負担にならないように休み休み移動する。
 王都まで半分ほど来た時に、宿屋にマクスから連絡が来る。
 それには、明日こちらと合流出来そうだと┉。

 ──私は安堵した。今回のオスカーの件で叱責される覚悟だが、やはり二人でないと精神的に辛い。もう私は、一人では抱えられなくなっていた┉。

 その事を護衛やロベルトに告げると、皆同じ気持ちだったようで安堵感が拡がる。明日になれば┉そう思って、早めに床に就いた。

 夜中、何か物音が聞こえた。扉の外には交代で護衛の騎士が居る筈だけど┉。
 連日の移動の疲れで、居眠りでもしてしまったのかもしれない。申し訳ないな、そう思った時┉ 
 
 ──ガタッ。ガッ!

 「な、何?どうしたのか┉?」

 私は迷ったが、もしかして倒れているかもしれないと心配になり鍵を開け、扉を恐る恐る開けてみる。

 「どうしたのだ!これは┉」

 扉の前で見張っている筈の騎士が頭から血を流し倒れている。
 その辺りを見渡すけれど、誰も居なくて┉。 
 これはいよいよ危ない┉人を呼ばなくては!!

 「だ、誰か!誰か来てくれ!」大声で呼ぶが、誰も駆け付けてくる様子はない。
 この宿屋に居た人達は?私達の他にも大勢居た筈なのに┉。

 何が何やら分からず、きょろきょろしていると、誰かが近付いて来る足音が聞こえる。

 ──あっ、もう一人の護衛か?それともロベルト?

 そう思って、振り返った私はその瞬間固まる。

 王都から相当に離れた、こんなさびれた宿場町の小さな宿屋。私達は他の人の目に付かぬようにと、ワザと小さな宿屋を選んだのだ┉なのに!?

 目の前には、獅子のような金髪をなびかせたギラリと光る赤い目┉大帝国のガルド王、その人が立っていた──。
 
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