【完結】冷遇され臣下に下げ渡された元妃の物語

MEIKO

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第二章・辺境伯夫人へ

13・幸福な時間*

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 「┉ァ、く┉あぁ」

 耐え難い痛みと圧迫感とで息ができない。まるで身体を串刺しにされているようだ┉。
 だけど、マクシミリアン様を受け入れる事が出来た┉という充足感で心が一杯になる。
 そして、私の頬に一筋の涙が溢れる。
 痛みからではなく、幸せだから┉。

 この人となら、愛し愛される喜びが得られるだろう。
 あのほんの一時の出会いを胸に、私の為にここまでしてくださったのだ。あの孤独で押し潰されそうになり、自死までも考えていた私を。

 あの冷酷だと人から震え上がられているガルド王に、私の下げ渡しを堂々と求めてくれたと聞いた。
 王の事は嫌っていた訳ではないけれど、私を見向きもしないその態度に、心の底から傷付いていたのだ。

 ──求めても、決して手に入れられぬ心┉。
 
 それに比べて┉そう思うと幸せで心が震える。
 それから、心だけでなく身体までも満たそうとしてくれる。
 このような幸せさえも私に与えようとしてくれるのか──。

 私の中でじっとしていてくれたマクシミリアンが、ほんの少し息が整ってきたのを見逃さず、緩やかに動き始める。
 私の汗ばんだ身体を、宥めるように撫でながら少しずつ奥へと打ち付けてくる。
 そしてその動きに合わせて、私のものなのか香油なのか分からぬものが、ジュクジュクといやらしい水音を立てている。

 「ハァ┉ウ┉ン!ぁ、う」

 先ほどまで痛みだけだったのが、何やら違う感覚が突然湧き上がる。

 ──なに?これは┉。私の身体は、どうなってしまったのか!?
 
 その抜き差しに合わせて、身体を激しく揺さぶられ、そして奥へ奥へと貫かれる。
 その度に息も出来なくなるくらいの快感の波に溺れ、高い声を上げ続けた。

 「あ┉あぁん、マクシミリアン!」

 「う┉っ!ク、ハッ」

 ──その瞬間、私の中で何かが弾ける。
 
 どくどくと熱いものが私の中に流れ込んでくる。
 それは思った以上に長く、私に妻である証を注ぎ込んでいるようだった。
 そしてその間中、私達はぎゅっとお互いの身体を抱き締め合って、その余韻を楽しんだ。

 それから行為後の微睡まどろみの中、私の艶のある黒い髪を優しく慈しむように撫でる手が。
 そして、金色の瞳と菫色の瞳が微笑みながら見つめ合う。

 マクシミリアンがそっと一房髪をすくい取り、それに口付けを落としながら誓う。
 これから先、決して離さない┉と。


 それから三日後、一行はこの王都邸を去った。
 私にとっての新天地、ベルード辺境伯領へと向かう為に。

 私が心から、愛する人と共に──。
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