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第一章・突然の廃妃
9・後宮に別れを
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王のそのような激昂を目の当たりにして、この場の誰しもが震え上がる。
王妃は平然を装っているが、顔が青ざめておりかなりの衝撃を受けたのだと分かる。
この場を何とかしなくては!そう思って、恐る恐る口を開く。
「陛下、私に発言をお許しいただけますか?」
ほんの少し声が震えてしまったけれど、何とか声に出す事が出来た。王は私に視線を移し、それを許可すべく頷く。
「国同士の事でしたら問題ないかと思いますが┉この国を去るのではないのですから。それと先程ですが、ベルード辺境伯様の求婚をお受け致しました。もうその時点で、私はこの国の臣下の妻です。ですから王妃様のご発言も、私からすれば問題ございません。」
苦手な王妃を庇うつもりはないが、このまま婚姻の承認が先送りになってはかなわない。
王はどのようなおつもりなのかは知らないが、もうこの段階まで来ているのだから┉。
私の発言を受けて王は黙ったままだったが、宰相ロハスは「良い心掛けですな┉」と呟いて、今のうちに┉と言わんばかりに私に署名を促す。
それで私も躊躇せずに、さっと記名してしまう。
昨日は一字一字、丁寧に記したというのに今日は┉と思ったが、ともかくこれで私はベルード辺境伯夫人となった!
王はまだ何やら言いたげな表情をされていたが、私達はそのまま一礼をして御前を辞する。
背にはずっと王からの視線を感じていて、緊張で気を張り詰めていた。そして王の間から一歩出た瞬間ハァーッと深い溜め息を吐いた。
すると背中を、温かな手でそっと擦られる。
俯いていた顔を上げると、もちろんそこにはマクシミリアン様が┉。
「シルバ、これから王都にあるベルード辺境伯家の屋敷に案内する。もうこの城を出る事になるから、どなたか別れの挨拶をしたい人が居るならば行ってくると良い。待っているから┉」
シルバと呼んで下さった┉。ちょっとだけ気恥ずかしいが、これからは夫婦だ。末永く一緒に過ごしたいものだな┉。
それからその言葉に甘えて、一人後宮に最後の別れに向かう。
親しい方など居ないが、最後に自分の部屋を見て行きたかった。それと、ロイにも挨拶をして行くとしようか。
部屋に入ると、ロイがそうしてくれたのか、中がすっかりと片付いていた。
主の居ない部屋は、ガランとして寂しい。
そして足音が聞こえ、振り向くとそこにはロイが立っていた。
「ロイ、これまで世話になりました。このような所に一人、どうなる事かと思ったけれどロイが居てくれて良かった。ありがとう。」
私はきっと今生の別れになるのだろうと、せめて笑って別れようと微笑みながらロイを見つめた。
それにロイは、何だか複雑そうな顔をしている。そして┉
「シルバ様、私も一緒にお連れいただく事は出来ないでしょうか?実は私は、お取り潰しになった伯爵家の次男なのです。その時の名は、ロベルト・アンダシアといいます。それに、親も兄弟もいませんから┉」
ロイのその告白に驚く。確かに他の侍従とは、どこか違うと感じていた。侍従なのに必要以上は近付かず、侍従らしくないというか┉。
かと言っても、行動には気品があるし教養もある。元貴族だというなら納得だ。でも┉
「ロイ、いやロベルト。私としては構わないけれど、辺境の地なのだよ?もうこの王都にはおいそれとは帰ってこれないし、環境だって厳しいのだと思う。それでもいいと言うのか?」
私も辺境伯領がどのようなところなのかは良く分かっていない。
だけど、王都とは違って厳しい土地なのは間違いない。
親兄弟は居ないという事だけど、友人や知り合いにももう会えなくなるというのに┉。
「はい!大丈夫です。前から機会があればこの王都を出たいと思っていました。この場所での良い思い出などありませんから┉」
そう寂しい表情で話すロベルトの身に、何があったのだろう┉と思う。
私と同じでここから離れたいのなら┉それに、ここで私を気に掛けてくれたのは、このロベルトだけであったし。
「では、行こうか?ロベルト。共に┉」
それで共に辺境の地へ行くことになったのだが、この決断がこの先私にとって最大の苦境を招くことになるとは┉。
王妃は平然を装っているが、顔が青ざめておりかなりの衝撃を受けたのだと分かる。
この場を何とかしなくては!そう思って、恐る恐る口を開く。
「陛下、私に発言をお許しいただけますか?」
ほんの少し声が震えてしまったけれど、何とか声に出す事が出来た。王は私に視線を移し、それを許可すべく頷く。
「国同士の事でしたら問題ないかと思いますが┉この国を去るのではないのですから。それと先程ですが、ベルード辺境伯様の求婚をお受け致しました。もうその時点で、私はこの国の臣下の妻です。ですから王妃様のご発言も、私からすれば問題ございません。」
苦手な王妃を庇うつもりはないが、このまま婚姻の承認が先送りになってはかなわない。
王はどのようなおつもりなのかは知らないが、もうこの段階まで来ているのだから┉。
私の発言を受けて王は黙ったままだったが、宰相ロハスは「良い心掛けですな┉」と呟いて、今のうちに┉と言わんばかりに私に署名を促す。
それで私も躊躇せずに、さっと記名してしまう。
昨日は一字一字、丁寧に記したというのに今日は┉と思ったが、ともかくこれで私はベルード辺境伯夫人となった!
王はまだ何やら言いたげな表情をされていたが、私達はそのまま一礼をして御前を辞する。
背にはずっと王からの視線を感じていて、緊張で気を張り詰めていた。そして王の間から一歩出た瞬間ハァーッと深い溜め息を吐いた。
すると背中を、温かな手でそっと擦られる。
俯いていた顔を上げると、もちろんそこにはマクシミリアン様が┉。
「シルバ、これから王都にあるベルード辺境伯家の屋敷に案内する。もうこの城を出る事になるから、どなたか別れの挨拶をしたい人が居るならば行ってくると良い。待っているから┉」
シルバと呼んで下さった┉。ちょっとだけ気恥ずかしいが、これからは夫婦だ。末永く一緒に過ごしたいものだな┉。
それからその言葉に甘えて、一人後宮に最後の別れに向かう。
親しい方など居ないが、最後に自分の部屋を見て行きたかった。それと、ロイにも挨拶をして行くとしようか。
部屋に入ると、ロイがそうしてくれたのか、中がすっかりと片付いていた。
主の居ない部屋は、ガランとして寂しい。
そして足音が聞こえ、振り向くとそこにはロイが立っていた。
「ロイ、これまで世話になりました。このような所に一人、どうなる事かと思ったけれどロイが居てくれて良かった。ありがとう。」
私はきっと今生の別れになるのだろうと、せめて笑って別れようと微笑みながらロイを見つめた。
それにロイは、何だか複雑そうな顔をしている。そして┉
「シルバ様、私も一緒にお連れいただく事は出来ないでしょうか?実は私は、お取り潰しになった伯爵家の次男なのです。その時の名は、ロベルト・アンダシアといいます。それに、親も兄弟もいませんから┉」
ロイのその告白に驚く。確かに他の侍従とは、どこか違うと感じていた。侍従なのに必要以上は近付かず、侍従らしくないというか┉。
かと言っても、行動には気品があるし教養もある。元貴族だというなら納得だ。でも┉
「ロイ、いやロベルト。私としては構わないけれど、辺境の地なのだよ?もうこの王都にはおいそれとは帰ってこれないし、環境だって厳しいのだと思う。それでもいいと言うのか?」
私も辺境伯領がどのようなところなのかは良く分かっていない。
だけど、王都とは違って厳しい土地なのは間違いない。
親兄弟は居ないという事だけど、友人や知り合いにももう会えなくなるというのに┉。
「はい!大丈夫です。前から機会があればこの王都を出たいと思っていました。この場所での良い思い出などありませんから┉」
そう寂しい表情で話すロベルトの身に、何があったのだろう┉と思う。
私と同じでここから離れたいのなら┉それに、ここで私を気に掛けてくれたのは、このロベルトだけであったし。
「では、行こうか?ロベルト。共に┉」
それで共に辺境の地へ行くことになったのだが、この決断がこの先私にとって最大の苦境を招くことになるとは┉。
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