【完結】冷遇され臣下に下げ渡された元妃の物語

MEIKO

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第一章・突然の廃妃

6・赤い目*(注・無理やりの表現有り)

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 王が!私は驚きで一瞬、息が出来なくなった。

 ──ど、どうしてこちらにおられるのか┉?私などの部屋に。

 最後に私に別れを述べようと?┉そんな事を思い浮かべたが、この赤い目の強い光はそうではないと告げている。
 今にも私に襲いかかろうと、獲物を狙っているかのような目だ┉。

 どうする?どうしよう┉そう繰り返して、私では全くどうにもしようがない事は分かりきっている。
 やがて、王の手が私の細い腕を掴む。そして┉

 「シルバ┉お前はこんなに綺麗になっていたのだな。暫く見ない間に。」
 そして、最初のあの日のように優しく私に微笑んだ。
 
 くっ!──だから、何だと言うのだ?今まで全く姿も見せず、贈り物一つさえも寄越さなかったくせに!この期に及んで┉。

 私は既に後悔した┉。昼間のあの時、いつものように素朴で従順で、取るに足らない男のままでいるべきだった!
 私にもプライドがある┉そう思ってしまったのだ。
 なので思わず、あんな行動を┉。悔やんでも仕方がないのだがっ。

 小刻みに身体は震えて、手の先は冷たくなっていたが、私は必死に平静を装った。
 「だから?どうされようと言うのです。最後にもう一度だけ、お情けでも┉と?」私は震える声でそう聞く。

 その瞬間、王に抱きすくめられる。──物凄い力だ!
 
 私はかつて、何度も絶えずこの腕を望んできた。それなのに望みは叶わず、こんな時になってだと?こんな事が┉あっていいと言うのか┉。
 
 だけど、そういきどおっても所詮半性身の私だ┉。
 筋力など普通の男よりも弱く、鍛えた事もない。
 そんな私が、この腕からどうやって逃れれば良いのだろう。

 やがて王の手が、私の身体をまさぐり始める。
 首元に口づけたまま、寝巻きの背から熱い手を差し入れてくる。
 背を撫で回し、それからなぞるように脇へ、そして胸元へと。

 「う┉うぅ。お辞め下さい!いや┉」
 堪らずそう言うが、そんな私の声など王にとっては聞くべき事でもないのだ。

 そして徐ろに寝巻きの前を寛がせ、素肌が空気に晒される。

 ──ビクン!

 胸の蕾を掠められ、思わず身体が跳ねる。 
 そして指で捏ねられ、更には舌で舐られ始める。
 執拗に指で、そして獣のような舌でいたぶるように絶えず刺激を与えられる。

 ──ど、どうして?前と┉全く違う!初夜のあの時は、慈しむように優しく抱かれたというのに!?もしかして、お怒りなのだろうか┉王は!

 私は何とかその刺激に耐えようとする。およそ二年ぶりのその行為にだんだんと気が遠くなるが、反応してなるものか!そう思って、声を上げずにいれるように思わず唇を噛んだ。
 ギリギリと噛み締め続けると、口内に血の味が拡がった。

 「う、つう!ハァ┉ァ」

 耐えろ!自分を叱咤するよう心の中で叫んで、そのうち涙が溢れてきた。
 
 ──何と情けないのだ!

 そう思ったら、もう涙が止まらなくなった。
 あの日、あの時の王に抱かれた思い出を胸に刻んで去ろうとしていたのに、こんなふうに┉。
 あの優しい王の記憶のまま、いたかった!なのに無理やり抱こうとするなんて。
 
 ──唯一の思い出さえも、私には頂けないというのか┉?
 
 流石に王は、私のその様子に気付き、その手をはた┉と止めた。

 唇から血を流し、むせび泣く私を見て興が削がれたのであろう。
 私の口元の血を指で拭い取り、それから憮然とした表情で去って行った。

 私は一人、そのままひとしきり泣いた後、疲れがどっと襲ってきていつの間にか眠ってしまっていた。

 朝、部屋にやって来たロイは、私の顔を見るなり驚きの声を上げる。
 いつも冷静沈着なこの者に、このような声を上げさせるなど、初めての事だった。
 これで最初で最後になるのであろうな?

 ──このロイの驚きも、そして王の私に対する戯れも┉。
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