【完結】シルビア・アノンは悔恨の念を抱く。この結婚は失敗だったと…

MEIKO

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第二章・夫婦の危機?

15・卑怯な思惑

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 海のような…そう言えば、誰もが紺碧の海のような青を思い浮かべる。そして同時に不敬だと思いつつ抱いてしまう疑問は…その子は本当に王太子殿下の子なの?と。

 今日ここに集まったのは、年令が近いガセルダムスの出身者。ということは全員、フェリシアとクリスティンとの関係性を知っている。例え入学時に私達が卒業した後だったとしても、あれだけ皆の話題の中心だったもの…まるで物語のように語り継がれているだろう。美しくて儚い、悲恋の物語を…
 
 おまけに私は、クリスティンと結婚している。かつてお邪魔虫だなんて散々陰口を叩かれていた私が今やその妻なんですもの…不躾なほどの視線を浴びてしまっている。それはそうよね…その物語のヒロインが今、問題発言をしたのだから。

 ──海の碧ですって?そんなことを言えば、お腹の中の子の父親を疑われるようなもの。それをフェリシア、あなたは分かって言っているの?

 第一王子殿下の誕生時は、確か黄金の光に包まれておられたとか。実際はどうなのかは知らないが、それによってこの国の王となるべき者が誕生したのだと、国民は喜びに湧いた。そしてご誕生あそばされた王子殿下は、王族の特徴そのものの黄金の髪と瞳をお持ちだった。

 だけど王族なら皆がそうではなく、どちらかと言えば希少な存在。殆どが違う髪色や瞳の色を持ってお生まれになる。フェリシアの夫であるスチュワート殿下は、輝くばかりの金髪ではあったけれど、瞳の色は明るいイエローグリーン。私から言わせれば、だから親しみを感じるけど…

 ──何故私がこのような視線に晒されなければならないの?

 そう憤る。だけどフェリシアの発言に他意はないのかも…そう親友を信じたい自分もいる。そして暫くの間耐えさえすれば、また違う話題になるだろうと。だけど次の瞬間、私のそんな気持ちなどお構いなしで、悪意ある言葉に凍り付くことになる…

 「私もその時お供させていただいたのですが、神官長様のお言葉を確かに聞きました。お子様は鮮やかなブルーの光に包まれていらっしゃるようです。まるであの方を連想してしまいますわ!ねぇ、アノン侯爵夫人…」

 それにハッとして顔を上げる。すると、まるで挑むような視線を向けるキャサリン嬢が!な、何を言っているの?

 私だってキャサリン嬢が何を言わんとしているのかは分かる。だけどそれを敢えてやり過ごそうとしていたのに、それをあなたが蒸し返すの?そう思ったら沸々と怒りが湧いてくる。そんな発言を受けて、この場はシンと静まり返って…

 「あなた…何を言っているの?シルビア様に対してあまりに失礼よ。訂正なさい!」

 それを見兼ねて、この中では最年長のロベルタ侯爵夫人が厳しい声を上げる。そしてキャサリンをキッと睨むけど、肝心のキャサリンは悪びれた様子もなく…

 「私は別に、同級生であるシルビア様に声を掛けただけです。そしてご結婚から何年も経っていらっしゃるし、妃殿下に続いてそろそろ嬉しいご報告が聞けるかと…そう思っただけですわ!」

 侍女である私には、妃殿下がついているから平気…そのような態度を崩さないキャサリン。そして私やロベルタ侯爵夫人に対しても、失礼な言動を詫びるつもりもないように見える。それから更に私を傷付けるようなことを…

 そう愕然としながらテーブルの奥のフェリシアを見ると、己の侍女を諌める訳でもなく素知らぬ顔でお茶を飲んでいる。それには更にショックを受けて…
 
 一体いつの間に私達の関係は拗れてしまったのだろう?私はあなたの邪魔など一切してこなかった筈だわ。それどころか自分の心を押し殺して、あなたとクリスティンを応援しようとまで思っていたのに!何故なの?

 やはりクリスティンと結婚した私が気に入らない?あなたが王太子妃になった今も、クリスティンの手を離すことは出来ないのかしら。クリスティンは一生、自分のことを好きでいなければならないと本気で思っているの?

 納得出来ない思いが、次から次へと湧いてくる。そして幼い頃から親友として過ごした私達の関係が、今ここで終わったんだと絶望する。だけどこんな形で終わってしまうなんて…虚しいわね。

 私はこの場の全ての視線を受け入れ、静かに目を閉じた。それから深呼吸を繰り返してから再び目を開けて…

 「あなたは何が言いたいのかしら?キャサリン令嬢。どういうつもりでそう言うのかは分からないけど、それは王太子妃殿下をも貶めているのではなくて?」

 私は毅然としてそう言い放った。それからいつもは親しみを込めてフェリシア様…というべきところを、敢えて王太子妃殿下と言った。きっと賢いフェリシアは、この意味を正確に受け取ってくれるだろう。そしてそれでなくては…

 それから臆することなくキャサリン嬢を見据える。私を傷付けてやろう…そんな悪意が、誰の目からも透けて見えていた。それを黙って受け入れる訳にはいかない…それではアノン侯爵夫人として、最大の屈辱だから。そしてあなたも学ぶべきだわ!私はもう黙って耐えている伯爵令嬢ではないのだと…

 「さあ、私に謝罪なさい!スコット令嬢」

 私は厳しい態度を崩さず、目の前のキャサリンに詰め寄ったのだった。
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