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ラースがリディアにプロポーズした事が
サーシャと皇太子殿下の耳に入った
それからはサーシャが中心となり
大神官や副神官と一緒に
リディアの婚約式と挙式の日程調整を
していた。

リディアは定期となった騎士達の浄化と
治癒を施しながら平民地区の教会で
一般人への施しをしていた

そして決まった婚約式

皇太子殿下と聖女サーシャという組み合わせに負けていないのが
ソードマスター聖騎士ラースと
聖女リディアだった

王宮からの呼び出し

リディアはラースと一緒に
陛下との謁見で婚約式の日程を報告し
久しぶりに父である公爵に会い
婚約と結婚の承諾書にサインをもらった

ソードマスターと聖女

お互いに地位と称号を持つ者同士
本来ならば親の承諾など必要ないが
リディアは父との決別
ラースはバレスティン公爵との
関わりを極力避けたかったのだ。

陛下も認め
ラースとリディアの婚約がは正式に
発表される事になった


ファダン伯爵家

先代伯爵であるラースの父は
長兄である息子に伯爵爵位を継がせ
夫婦で別荘暮しをしている
久しぶりに王都に来てリディアに会うのだ
ファダン伯爵家で集まったのは
先代夫婦とラースの兄と妹だった

皆、聖女リディアに会える事を
楽しみにしていたらしく
2人の結婚を喜んでくれた
だか、リディアには不安があった
お互いに王家に並ぶ称号はあるが
爵位が無いのだ。
買い物をする時も
銀行口座を開設するのも貴族社会では
爵位が重要視されるからだ

もし、万が一
神力が無くなったら?
ラースが騎士を引退したら?

ラースは何故か父親からの爵位を
断った。

子爵では嫌なのかなぁ?

帰りの馬車でリディアは聞いた

「あのねラース、称号と爵位は
別物よ?爵位はあった方がいいわ」

「わかっているさ、爵位は貰うよ」

「?? どこで」

「内緒」

「どういう事?」

「内緒」

「あー!結婚前から秘密事!
わー!信じられない!
嘘も秘密も許さないわよー
私、もう誰にも裏切られたくないわ」

「ごめんリディア
嘘などつかないし、裏切らないよ
んー、爵位はサプライズだと思って
欲しいな」

「サプライズ?」

「そう、だから信用して待っていて
絶対に裏切らないよ」

「ん……んー。 本当に?」

「当たり前だリディアに嘘などつかない」

「わかったわ、信じてる
その時がきたら教えてね」

「もちろんさ、リディア愛してる」

「もう…」

その頃には神殿と王宮でそれぞれ
リディアの部屋とラースとの
夫婦部屋が準備されていて
婚約式に向かっていた

陛下への報告から10日

民に向けて発表された

「聖騎士ラース・ファダン侯爵
聖女リディア・バレスティンの
婚約を正式に表明する」

記事を呼んだリディアは「侯爵?」

リディアは部屋を飛び出して
ラースの元に走った

騎士達が居る剣技場にもいない
宿舎にもいない…

はぁ、、ただただ騎士達にいじられて
もみくちゃにされて終わったわ…

空を見ながら思った

ラースから話してくれるまで待つか!

それからラースは護衛騎士として
リディアの側に居たが
彼氏としてのラースはいなかった

わかっているけどね
仕事だし…でもなんかね
釣った魚には なんちゃら ってあるしね
リディアは婚約の喜びよりも
不貞腐れた気持ちが強くなっていた。


婚約式のドレスも仕上がり
準備は万端。しかしリディアが準備に
参加出来ないというのはどうなのか?
サーシャに不満を吐いてみたが

「ラースが驚かせたいのよ」とか
「本当に愛されてるわね」とか

リディアは全く楽しくない…

この頃のリディアは無意識に
ラースを避けていて

「準備に忙しいみたいだから」と言い
ラース卿を護衛から外し違う騎士を
護衛に指名して
サーシャとのお茶も断る様になって
しまった

さすがにちょっと……
騎士達やサーシャにも緊張が走った

婚約式当日

神官達がリディアを綺麗に仕上げて
くれる
けれどリディアの気持ちは晴れない

何故ならばハワードとの結婚式と
同じだからだ

当日まで何をどうするのか知らされず
ただ式場案内係の言うがまま動き
人形の様な笑みを作るだけ…

リディアは迎えに来たラースを見て
ときめかない自分に驚いた

「リディアようやくだね」

何がようやくなの?

「そうですね」

「綺麗だよリディア」

「ありがとうございます」

リディアが発する冷たい態度に
神官達は引きつってしまい
空気が重くなっていった

副神官クラウスが2人を
神殿の会場に案内するも
ラースが差し出した腕にリディアが
手を回さない
ラースは仕方なくリディアの歩調に
合わせながらゆっくりと歩き出した

ラースは考えていた。
何がいけなかった?
リディアを1人にし過ぎたか?
サプライズを喜んで欲しかったが…
違ったか?

会場に到着した

リディアはまっすぐ前を見たまま
ラースの腕に手を回した

「入るよリディア」

ラースの問いかけに返事は
帰って来ない

扉が開くと王族と父方の親族が
集まっていた

リディアは大神官ルースの指示を受け
ながら淡々と動き婚約証明書に
サインをした。

サーシャはリディアを見ながら
気がついた

そうだった!リディアは前回も
婚約や結婚を与えられて
蚊帳の外状態で結婚したのだったわ
全く一緒じゃない!

サーシャは慌てて
会場に光の雨を降らせて盛り上げた



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