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使用人達から無視され3ヶ月。
クリスティーヌは
絶対に頭なんて下げない。と
決めていた

風呂場で服を洗い自分で着替えて
食事を作り…そんな日を繰り返していた
クリスティーヌは散歩に出た
庭とはいえ外に出たのは久しぶりで
少し離れた薔薇園に着いたが…

何やら楽しそうな話し声が聞こえてきた

お客様かしら?チラリと覗いて
クリスティーヌは固まった。

ビルウィルとティファニーが使用人達と
楽しそうに笑っている。

何でよ。どうしてよ…

クリスティーヌは2人の前に出た。

「ビル、いらしてたのね?何故
    ティファニーとお茶をしているの」

シーンとなり

「お姉様、その格好 どうなさったの
    ドレスがしわくちゃだわ」

「わかってるわ、私は何故2人が
    会っているのかを聞いているのよ」

ビルウィルは気まずそうな顔で
「たまたま会ったんだ…伯爵に用が
    あって来たんだけど」

「だ、だったら何故私に声をかけて
    下さらないのですか?」

「すまない。偶然だったから」

ティファニーは
「お姉様、ごめんなさい 私が悪いの
    もう席を外すからお2人で…」
その時
「いや、僕はもう失礼するよ
    少し長居してしまったからね
    クリスティーヌまた来るよ」

ビルウィルは逃げる様に席を立ち
クリスティーヌに振り返る事なく
帰ってしまった。

そしてティファニーのメイド達から
クスクスと笑い声が聞こえて
クリスティーヌは怒りを抑えられなく
なった。

炎を出しメイドに向かって投げた。

ブォン、笑ったメイドのスカートに
火が着いた。
「キャー!」悲鳴が上がった瞬間
ティファニーがメイドに水を放った。

「お、お姉様!やりすぎです
    笑ってしまった事は謝らせます
    だから止めて下さい」

「こいつらが私に謝るですって?
    わざと嫌がらせしているのに?
    謝罪なんていらないわよ
    私はあなたと違って優しくないからね
    あんた達、後で後悔しても
    許さないから」

クリスティーヌは部屋へと戻った。

そして今度は父親が部屋を訪れた

「クリスティーヌ居るか」

「何でしょう」

「静かにしていろ。と言ったはずだが」

「あ、婚約者と妹の浮気現場に遭遇して
    使用人が私を笑ったので
    お仕置しただけですわ」

「浮気現場だと?何を言ってるんだ
    いつ、どこでだ」

「さっきですよ薔薇園で
    ビルはお父様に用があって来た。
    と言っていましたけど」

父の気まずそうな顔で察してしまった。

「だ、だとしてもやり過ぎだぞ
    お前はしばらく謹慎だ」

「お父様!どうしてですか!
    使用人も私を無視して食事も
    洗濯も何もしないで!
    兄妹よりも魔力が弱いからって
    酷いです! 」

「ん?使用人が…メイドが居ないのか」

「ずっとですよ!私は自分で
    料理して食事して洗濯も…
    自分で…酷いっ…魔力が弱いと
    ボーン家の人間では無いというの
    ですか!」

「つっ…とにかくやり過ぎだ。大人しく
    していなさい」


次の日から使用人が食事を運んで来ても
風呂を入れに来ても…
誰1人として言葉をかけてくる者は
居なかった。
ビルに手紙を出しても返事が来る事も
無くなっていた。
クリスティーヌは何となく察した。

ビルも…ティファニーが好きなのね。

悔しくて、悲しくて1日泣いて過ごした。


数日後、
クリスティーヌはボーッと
外を眺めていると1台の馬車が入って来た。
あ、あれはビルの馬車よね…

すぐにでもビルに会いたい気持ちと
きっと、もう終わる関係なのだと察して
クリスティーヌは空を見上げた。

やっぱりね。ビルの馬車が来ていた日
私には声がかからなかったわ。

それから数日後

朝から馬車が来ていたのに
呼ばれたのは昼を過ぎた頃だった

向かった応接室にはラーモン公爵夫婦に
ビルウィル。
父と兄そしてティファニーが待っていた

クリスティーヌは…皆の視線を見て
わかってしまった。

「お待たせ致しました。
    お久しぶりですラーモン公爵様」

「あぁ元気だったかな」

「はい」

白々しい…クリスティーヌは心の中で
毒を吐いた

「座りなさい。今日は大事な話しが
    ある」
伯爵はクリスティーヌの顔を見た。

クリスティーヌは無表情のまま
席に着いた。

「クリスティーヌよ…ビルウィルとの
    婚約だが、白紙となった」

やっぱりね。
「そうですか」

「……それでだが新しく
    ティファニーとの婚約が整った」

「わかりました」

クリスティーヌの返答に皆が驚いた。
ビルウィルが好きだったクリスティーヌが反論無く受け入れたからだ。

その時、ラーモン公爵夫人が言った
「クリスティーヌ嬢…その…
    ごめんなさいね。ずっと婚約者と
    して一緒に過ごしてきたのに…」

は?
「そちらはそれをわかっていて
    私を捨てたのですよね?
    白々しい謝罪は必要ありません」

「こら、クリスティーヌ!なんて事を」

「ふっ、お父様万事上手く収まって
    良かったですね」

「お、お姉様…」

「ティファニーあなたとビルウィル様が
    私に隠れてコソコソ逢い引きしていた
    事、知っていたわ。良かったわね
    さぞかし嬉しいでしょうね。
    ビルウィル様、ティファニー
    おめでとう」

応接室の空気が一気に冷めて
皆は黙ってしまった。

クリスティーヌは席を立った。

「クリスティーヌ、お前は失礼だぞ」
そう声を荒げた兄を睨みつけると

「皆様、ごゆっくり笑談下さいませ」
クリスティーヌは一礼して
部屋を後にした。

ビルウィルが追って来た
「クリスティーヌ!」

振り返らずに立ち止まった。

「クリスティーヌ…ごめん」

クリスティーヌは返事をする事無く
歩き出した。
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