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 謁見室で待っていたのは
 ブェールス侯爵夫婦とカルロスだ

「王族を刺した」
 それは一族の処分を意味している。
 覚悟を決めた一家は息をする事も
 忘れるほどに追いつめられていた。

「待たせたな」

「申し訳ございません」

「何故に謝罪をするのだ。頭を上げよ」

 3人はゆっくりと頭を上げた

「うむ、さてと どうしたものかな
 私と侯爵の付き合いだ正直に話そう。
 リディー嬢を疑ってはいない」

 その言葉に3人は驚いた

「肝心のテリウスがまだ目覚めんのだ
 あやつが目覚めれば刺した者がわかる
 だろう」

 侯爵は驚いた

「しかし……娘が……」

「何故そう思う
 リディー嬢にテリウスを刺す動機が
 あるのか?アイツからは聞いていない
 んーそれにだなぁ、、
 おい、これは内密だぞ
 テリウスがだな宮医の1人にある物の
 分析を依頼していたんだよ。
 それがモモゴウズという花の蜜でな
 何やら毒がある花らしいんだ。
 リディー嬢がその場に居た時
 ろれつがまわらずに身体の力が抜けていた
 と侍女と騎士が証言しているのだよ。
 もしやリディー嬢は毒を含んだ可能性が
 あるんだ」

「……!?」

「何、大丈夫だ
建前上まだ牢にいるが専門医が
解毒剤を必死に作っている」

「あの…リディーは誰に毒を…」

「まだ言えん。
 早まるなよ侯爵 時を待て。王命ぞ」

「か、かしこまりました」

「うむ、今は娘を信じて待っていろ」

「有り難きお言葉…身に染み入ります」

「そう時間はかからんだろう」

 婦人は涙を流しながら頭を下げた。

「帰ってゆっくり休め戦いは続くぞ」

 侯爵一家は馬車で放心状態になっていた

 その場で拘束されて牢に入れられて
 処刑日を待つ覚悟でいたからだ。

「せめて最後にリディーに会いたい」
 それだけだった。


『地下牢』

「令嬢…令嬢…大丈夫ですか?」

「誰…」

「ジェレミーです。起き上がれれますか」

鉄格子の前で巾着を出す

「な、何?」

「お水をお持ちしました」

「まさか毒なの?いらないわ」

「違いますよ。陛下からです
解毒剤が入った水です飲んで下さい」

リディーは重たい身体を引きづって
鉄格子越しに水を手にすると飲んだ

 ゴクゴクッ…

「はぁ、生き返ったわ。
そう…わかったのモモゴウズという毒
姉様がやられたのは毒よ……
助けて…姉様を……」

リディーはそう伝えると再び眠りについた

「令嬢…待っていてくださいね
 もうすぐですから」

ジェレミーはリディーに優しく言うと
もう1つ巾着を置いて去った

 この時
リディーの身体は思う以上に弱っていた



『テリウスの部屋』


「うっ……」

「「「!?」」」

侍女長と宮医がテリウスの声に反応し
宮医が慌ててテリウスの手を取った

「殿下おわかりになりますか」

呼吸は浅いが脈はしっかりと感じた

「うっ……」

侍女長はゆっくりと水を含ませた
ガーゼをテリウスの口元に運び水滴を
垂らした。

「もっと…くれ」

テリウスの首を支えながらコップの水を
流し込む

「ゴクッ……ゴクッ」

2人はテリウスの目覚めを陛下に伝えると
テリウスの部屋に陛下が来た

「皆テリウスが目覚めた事は口外するな
わかったな」

側近や騎士達は喜びもつかの間
互いに顔を見合わせて困惑したが

「かしこまりました」と
頭を下げた。
それから1時間程 2人だけの話しが
続いた。



『ブェールス侯爵家』

深夜

ドン ドン ドン

誰かが門を叩いている

「侯爵様、夜分に申し訳ございません
よろしいでしょうか」

執事は恐る恐る扉を開けた。
するとそこには王宮騎士団の制服を着た
騎士が立っていた。

執事は

「いよいよか…旦那様…」

心の中で呟くと目をきつく閉じた

侯爵はゆっくりと玄関に現れ
その後ろからカルロスが夫人を支えながら
歩いてきた。

騎士が侯爵に1枚の封書と袋を手渡した

「取り急ぎ陛下より
こちらを侯爵に渡すように命じられました」

侯爵は震える身体を隠しながら封書を
開いた

そこには

「モモゴウズの解毒薬をリディアーナ嬢
に飲ませろ。
テリウスは無事に生還した。
しかしこの事は口外禁止とする」

と記されている

「あ、、あああ……っ」

緊張が一気に解けた侯爵は
頭を抱え膝をつくと涙を流した

「ありがとうございました」

「いえ、では私達はこれで失礼します」

騎士は馬に跨ると颯爽とブェールス邸
から去って行った

侯爵は袋に入った草を抱きしめると
自ら台所へと向かい鍋に水を沸かし
始めた

「父上…それは?」

侯爵は陛下からの手紙をカルロスに
渡した。
内容を確認したカルロスは
全身から声を出した。

「うぉぉぉぉーっ!」

すぐに新しいガーゼを用意すると
出来たての薬草水をリディアーナに
飲ませた。



リディーは眠っていた
頭の中では色々と考えている。
身体が動かない。
睡魔と自分の戦いが続けられていた

「毒…姉様…飲む…」

「殿下…血が…流れて…だめ…起きて」

「痛い…水…喉…痛い…」

深い闇の中にいるような感覚だった。



つづく
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