+ワールド

darefumi

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Chapter1 Guns and mirrors

5 報酬

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僕は歩いて狙撃銃を取りに向かう。手を伸ばして床に落ちた狙撃銃を手にした。炎で焦げ付いた鬼面は苦しそうだ。怒りの解けた体は軟化し攻撃を受け付ける状態になった。僕は狙撃銃を構えて鬼面の体を狙ってトリガーを引いた。銃弾は鬼面の胸を貫通し、鬼面は姿を消した。
僕は牧田のところに寄っていった。彼女は床にどさっと横になり、倒れて動かない。息をしているか確認しなければ。僕は彼女の体を起こした。顔に耳を近づけると微かに呼吸音がする。どうやら無事のようだ。露わになった体はゲームの世界なのにまるで本物のように細部までリアルに作られている。これは目のやりどころがないな。

戦闘終了だ。牧田はこれ以上の続行は無理と判断されたようだ。勝利の報酬としてポイントを受け取る。鬼面を倒したせいか、僕は60ポイントという高得点を得ることができた。それにしても、このゲームでは集団でチームを組む方法はルール違反のはず。鬼面の者が指示を出しているとして間違いないだろうが。彼らは一体何者なんだ。


翌日、僕は牧田かなに会うことにした。
彼女にメールし、新宿の靖国通り方面にあるキメダコーヒー前で待ち合わせした。店の前で待っていると、背後から彼女が現れた。トンファーは持っていないようだ。ジーンズにストライプの肌着、野球帽を深めに被った姿は全くおしゃれという感じではない。「行こっか」、そう言うと彼女はスタスタと店の中に入っていった。
彼女は紅茶にケーキ、僕はコーヒーにサンドイッチを注文した。情報料、ここは僕のおごりだ。奥の席に向かい合わせで座った。この店は仕切りがあるので外に声が漏れにくい。万が一外では話せない話というのもあるからな。「昨日はお疲れ様」、彼女はそう言うと早速目の前のケーキに手を伸ばした。彼女の目が輝いている。視線を落とすと、ストライプの肌着は彼女の体によくフィットしている。そういえばゲーム内での姿は現実の姿をどの程度反映しているのだろうか。昨日見たものが頭の中に浮かんで落ち着かない。「何か聞きたいことがあるんじゃないの?」、彼女は僕の視線に気づいたのか、少し低い声で話してきた。「あ、その、えっと…」、僕は明らかに動揺してしまい、ゴホンと大臣のような咳払いをして話を始めた。
「昨日の奴らは一体何者なんだ?なんで複数で襲ってきたんだ?、あと僕が勝たないと困ると言ったのはどういうことなんだ?」、僕は矢継ぎ早に質問をした。彼女は紅茶を一飲みし、そうくることが分かっていたかのように答えた。「彼らはうちの会社の上司なのよ、正確には上司を含む…だけどね」

彼女の話によると、+worldが社会全体に及ぼす影響が社会問題になっているとのことであった。ゲームの勝者がそのまま現実世界での強者になってしまうらしい。強者はよりランクの高い生活を享受できるということだ。それで社内でも力関係のバランスが崩壊するという現象が起きてしまった。ゲーム内での強者は現実世界においても力を発揮するため、外敵により生活が脅かされたりするらしい。なるほど、電車での出来事など思い当たる節はある。
社内の連中はむしろこの状況を利用して自分達に有利な権力を現実世界で得ようと考えたらしい。それが鬼面を中心とした黒い服の連中であったということだ。彼らは特殊に訓練された存在であり、特別な力が与えられている。昨日受けた電磁波による金縛りや火の玉を放つ能力などのことだろう。ゲームの設定にまで影響を与える権力の持ち主だ。社会的にも身分が上の者たちだと予想される。会社員、役人、それに教育関係者たち。おそらく政治家や医者、教職などの身分の高い人たちから任命を受けた者どもと思われる。
牧田かなは実は会社の者たちに組織に入るように誘われていたらしい。しかし彼女は首を横に振った。自分の好きなゲームを奪われるのが嫌だったのだ。僕もそれには同意見だ。権力でルールを変えてまで力を得ようとは思わない。だから僕に勝ってくれと言ってきたのか。なるほど、だいぶ話が分かってきた。

「ところで、君はどこでその能力を手に入れたの?」ブーッ、突然の質問にコーヒーを床に吹き出してしまった。「こ、この能力は…ひ、拾ったんだよ」。「ふーん、怪しいなあ~」牧田はジト目でこちらを見ている。牧田に悟られてはいけない、この能力には特殊な条件が必要だということを。


僕の能力はもちろんポイントの報酬として得た力である。ミラーは100点取るごとに1枚もらうことができる。実は僕も、このゲームのポイントゲッターとして参加している。5枚ミラーを獲得するのはとても大変だった。それはもう血反吐を吐くような苦しみと恐怖に耐えてようやく手に入れたのだった。
実はポイントを100点集めると、ゲームの開発者と少しコンタクトを取ることができる。僕の力は僕が要求したものだ。個人的に開発した三次元空間座標での位置管理システム、よく車の自動運転で使われる物質感知AIの技術だ。人物や建物の位置と車両間の距離が一瞬で把握できる。あれを少し改良してゲーム内で使わせてもらえるよう交渉したのだ。対価としてこのゲームに参加する女の子のセクシーショットを開発に渡すことを約束している。実は牧田の写真も既に開発に渡してある。こ、これだけは牧田に知られるわけにはいかない、絶対に。
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