金平糖

三月 深

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38.あぁ、その時はあんたも見られるといいね」

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「私じゃダメなんですか?私も涙流が好きです。和のような、甲斐性のない男じゃないですよ?こんなにも悲しい決断もさせません。ずっと貴方の傍にいます」

驚いた。

美来が俺のことを好きだなんて。

でも、この結論が変わらないことに違いは無かった。

俺は、首をゆっくりと横に振った。

「ありがとう。嬉しいけど俺、多分この先もずっと和のことが好きだから」

美来はまるで俺がそう言うことをわかっていたかのように笑うと

「知ってます。…では行きましょう、鳥は?」

と言った。

「鳥は外で待ってる。行こう」

裏口から外に出ると、そこには人が二人軽く乗れるサイズの鳥が居た。

学校で見たときの比じゃないレベルだ。

「早う乗れ」

と急かす。

俺と美来は鳥の背に乗って、上空へ飛んだ。

「今までありがとな、和」

そう言うと、和と初めて会ったとき、昼寝を邪魔されたとき、じゃれ合いをしたとき、和にキスされたときなど、様々な和との記憶が蘇ってきて、涙が溢れてきた。

「もう和と会えないんだ…寂しいよぅ和…」
「涙流…」

美来が俺の目元の涙を拭き取った。

もう二度と会えない。

そんなことは覚悟して来たのにそれでもなお溢れる涙は、風がさらっていく。

美来は再び指先で俺の涙を拭うと、ふぅっと息を吹きかけた。

途端に、ころりと金平糖が転がり落ちる。

「金平町のおまじないです。人間の涙は金平糖になる」

美来が優しく微笑むと、また涙が出てきた。

美来の言うとおり、それはすべて金平糖になって和のいるこの町に降り注ぐ。

その夜、金平町には金平糖の雨が降った。




三分ほど夜空を飛ぶと、月明かりに照らされた美呼様が見えてきた。

こっちこっち、と手招いている。

「よく来たね、涙流君。さぁ、ゲートは開いているよ」

美呼様の言ったように空中には来たときのような穴が空いていた。

鳥の背中から美来が降りる。

どうやら美来は美呼様と同じく空中に浮けるらしい。

「鳥は涙流君を彼の家まで送るように」

美呼様の言いつけに鳥は頷くと、ゲートへと入っていく。

「じゃあ、さよなら美来」
「えぇ、さようなら、涙流」

俺はそうして、人間界に戻ってきた。
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