金平糖

三月 深

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End.『人間が愛する人を思って流す涙は金平糖の雨を降らす』

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「俺のって印、嫌ってほど付けたげる」
「は、な、何言ってっ、んあっ」

和が少し位置を変えたところに噛み付く。

高い声が出て、恥ずかしくなって、自由になった手で口を抑えた。

「何っすんだよ、和っ」

恥ずかしいからか何なのかわからないが、顔も身体も熱くなる。

いやだ、いやだと自分の顔を隠す手は抵抗の意味もなくなり、エプロンもワイシャツもとっくのとうに脱がされていた。

鎖骨で止まっていたキスはさらなる愛撫と共に再開される。

和の骨ばった手が肌を滑っていく。

頬、首、肩、胸、腰、触られた場所の全てが熱くておかしくなりそうだ。

そんな中、肌に鬱血の花びらを散らしながら降りてきた和の唇が、胸のあたりで留まった。

そして胸の突起にカプリと噛み付く。

「ひゃん!?」

はっとして自分の口を抑えると、ニヤリと笑う和と目があった。

もう片方も、指先で摘まれる。

痛みよりも、気持ちよさが勝った。

なんだか足と足の間がもぞもぞとする。

足を擦り合わせていると、それを和に見つかってガパリと開かれた。

「へぇ涙流、気持ちいいんだ?」

するりと下もすべて脱がされる。

和は俺の腰を持ち上げると、勃ち上がった前のそれに触れることなく、内ももを舐めた。

そこにも深く吸い付いて、真っ赤な跡を残すと、その舌は次第に内側に入っていく。

そしてついには、その奥の、そこ、に届いた。

ぬろっとした感覚が全身に奔る。

「なっ、なごみ、そこ汚っ…!」
「大丈夫。涙流は奇麗だよ」

そういう問題じゃない、と言う前に、また快感が襲ってくる。

なんか、和ばっかり余裕でずるい。

「なごみっ、こっち…!」

精一杯手を伸ばす、と、その手を掴んで和が登ってきた。

掴まれなかった方の手を和の首にまわす。

体重をかけて引き寄せて、その唇に自分の唇を重ねた。

和の真似をして、そっと舌を差し出す。

途端に後頭部をぐっと抑えられて、深い深いキスが落とされた。

そっと、口が離される。

和の口が動く前に声に出ていた。

「和…好き、だから…早くっ…!」

和は少し驚くと、垂れてきた髪をかき上げて言う。

「俺も涙流のこと愛してる」

ちらりと覗く耳にはお揃いの白とオレンジのピアスが光って見える。

和が初めて俺にくれた言葉をうわ言のように繰り返しながら、俺は初めて和とつながった。






……「和のせいで疲れた。もうわけわかんねぇ」

俺はベットの上で足をバタつかせた。

「ってか和、何でいるんだよ。お前は俺と会っちゃ駄目なんだぞ」
「あ、お前まだそれ言うか?…もう一回すんぞ?」
「…うそ、ごめん」

もう一回する元気ないし…と思って『俺と会っちゃいけない』という言葉を封じた。

「じゃあ取り敢えず質問に答えろよ。なんでここにいるんだ?」

その質問に和はちょっときまり悪そうに答えた。

「あー、俺と美呼の婚約ってさ、すげー小さい頃に親父たちが決めた約束なんだよ。だから親父とお袋に会いに行ってきた。俺は愛してる奴がいるから美呼とは一緒にならないって言って、美呼との婚約を解消してもらった。近々涙流に会いに来いって」

当たり前のように言っているが、この一ヶ月でかなりのことをやらかした気がする。

その口ぶりからして、俺の考えや行動は美来や美呼様から伝わっているんだろう。

「で?何で涙流は一人で帰っちゃったの。俺が怒ってんのはそこなんだけど」

俺の額を小突いて言う和に俺は今までのことを話した。

特に、「帰ることが和のためになると思った」という部分は和の額にしわが寄った。

「…だから俺はこっちに帰ってきた。ごめんな」

そう言葉を締めると、和は

「不安にさせてごめんな。もう大丈夫だから」

と俺を抱き締めた。

久しぶりの暖かい感覚に、俺も和の背中に腕を回す。

「だからさ、これからは和と一緒にいていいか?」
「もちろん。ずっと一緒だ」

そう優しくキスされて、一つ疑問が浮かんだ。

「和、妖怪と人間の寿命は違うんだろ?俺のほうが先に死んじゃうんじゃ…」

俺がそう聞くと、和は少し困ったように笑って

「人間と妖怪の夫婦で、人間側の寿命が格段に伸びたケースがある」

と言った。

「どうなるかわからないが、傍に居てくれるか?」

和のそんな言葉に、俺は笑って頷いた。
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