金平糖

三月 深

文字の大きさ
上 下
37 / 41

36.そうだねぇ、次の金平糖が

しおりを挟む
家に帰って、鳥に礼を行った。

鳥はその羽で俺の肩を二、三度叩くと

「よい、よい」

と言って引っ込んでいった。

どうやら風呂が沸いているらしい。

夜ご飯は外で三人で食べてきたので、沸かしてくれたんだろう。

美来は

「涙流と和で先に入っちゃって下さーい」

と、布団の準備をしに行った。

「おっ風呂!おっ風呂!」

と自作の歌を歌いながら和と風呂に向かう。

「どうした涙流、今日はやけに上機嫌だな?」
「楽しいからな!」

幸せだ。

俺は今、幸せを噛み締めている。

上機嫌のままに脱衣所で服を脱いで浴室の扉を開け放つ。

ちゃぽん、と二人で湯船に入るとけむりが一気に室内中をけむらせた。

白くなった視界がまた透明になっていき…和が現れる。

「なーる」

俺の名前が囁かれる。

「なーに、和?」

俺は和の方に手を伸ばして、頬をぶにぃーっと引っ張った。

「なる、いひゃい」
「あっはは!和変な顔ー!あはは!」

あぁ、楽しいな…。

このままずーっと楽しければいいのに。

「和~っ!」

ふふふっと笑いながら、和の顔で遊ぶ。

和は「いたいぞ!」と言いながらじたばたした。

「にゃる離せっ、やめろー!」
「んーえー?何てー?」

と言いながら俺は和の頬で遊び続ける。

和は反撃だ、と言わんばかりに俺の頬を引っ張った。

お互いに変な顔。

「ちょっといつまでも遊んでないででて下さーい」

と言う美来の登場により俺らの勝負は引き分けとなった。

大急ぎで身体と頭を洗ったあと、少し湯に浸かって風呂を出る。

着替えて歯磨きをして、手を繋いで寝室に向かった。

敷かれている布団に飛び込む。

すると続いて和が横に寝転んだ。

垂れてきた横髪を和の指が掬って、耳にかけられる。

「今日は楽しかったか、涙流?」
「うん、最っ高!」

これで潔く諦めがつく。

「…ねぇ和、大切にしてね、そのピアス」

俺が和にした、最初で最後のプレゼントだ。

「あぁ、もちろん」

和のそんな言葉に微笑むと、和は

「さぁ、明かり消すぞ」

と燭台に息を吹きかける。

これで、終わりだ。

和に、最後の「おやすみ」を言って、俺らは眠りについた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

真・身体検査

RIKUTO
BL
とある男子高校生の身体検査。 特別に選出されたS君は保健室でどんな検査を受けるのだろうか?

大学生はバックヤードで

リリーブルー
BL
大学生がクラブのバックヤードにつれこまれ初体験にあえぐ。

普通の学生だった僕に男しかいない世界は無理です。帰らせて。

かーにゅ
BL
「君は死にました」 「…はい?」 「死にました。テンプレのトラックばーんで死にました」 「…てんぷれ」 「てことで転生させます」 「どこも『てことで』じゃないと思います。…誰ですか」 BLは軽い…と思います。というかあんまりわかんないので年齢制限のどこまで攻めるか…。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

目が覚めたら囲まれてました

るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。 燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。 そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。 チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。 不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で! 独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

【連載再開】絶対支配×快楽耐性ゼロすぎる受けの短編集

あかさたな!
BL
※全話おとな向けな内容です。 こちらの短編集は 絶対支配な攻めが、 快楽耐性ゼロな受けと楽しい一晩を過ごす 1話完結のハッピーエンドなお話の詰め合わせです。 不定期更新ですが、 1話ごと読切なので、サクッと楽しめるように作っていくつもりです。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー 書きかけの長編が止まってますが、 短編集から久々に、肩慣らししていく予定です。 よろしくお願いします!

処理中です...