金平糖

三月 深

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26.金平糖が降ってくるんだから。

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「あぁ、そう言えば涙流、今日は猫耳の帽子はしていないのですね?」

俺は頭に手を乗せてはっ、とする。

「うん、そう言えば…急いでたから忘れてた…」
「うーん…別にいいのですが…まわりの者に変な目で見られていますので」

と言って、美来が指をパッチンと鳴らす。

すると俺の頭に、リアルな猫耳と尻尾が生えた。

「わ、わわわっ何だコレ!?」

すごい。尻尾も耳も思うままに動く。

「一時的に生やしただけですので、すぐに消えてしまいますが…まぁ家に帰るまでは持つでしょう」

自分の耳と尻尾だがモフモフだ…!

一人感動していると、美来が

「あ」

と声を上げた。

「どうしたの、美来?」
「いえ、彼処の薬局のヤケド治しはよく効くんです」

と指さしたのは小さな薬局。

美来は俺の手を引いて細い路地に入ると

「涙流、処方箋を頂いてくるついでに買ってきますので、ここで和と待ってて下さい」

と和を降ろした。

「うん!言ってらっしゃい!」

美来が俺に手を振って、大通りに消えていく。

和の方を見ると、相変わらず和は苦しそうにしていた。

薄暗いこの路地だと、さらに顔色が悪く見える。

「な…る……?」

和がうっすらと目を開ける。

「和!」

体調は大丈夫?と言葉を続けようとしたとき、背後から声が聞こえた。

「あぁ?何だこの猫?弱小妖怪がここで何やってんだよ?」

振り返るとそこには顔が大きな一つ目の大男と、大きな口を持つ口裂け女ならぬ、口裂け男がいた。

「あ、えっと…その…薬を…」

オドオドモニョモニョ喋る。

いきなり暗がりからこんなんが現れたので、少し怖くて怯えてしまった。

一つ目の大男が言った。

「あぁん、何だ?聞こえねぇなぁ?ハッキリ喋らんかワレェ!」

コイツの喋り方、癖あるな…怖い。

和の裾をグッと強く握り締める。

「す、すみません…」

俺は目に涙を浮かべながら頭を下げた。

すると口裂け男はにやにや笑いながら俺の顔を覗き込んできた。

「へぇ、それが謝罪?足りないなぁ?」

一つ目の大男の蹴りが腹に入る。

「ぐっ……!?」

その蹴りは重たくて、吐血しながら座り込んだ。

ブラックアウトしていく世界の中で、口裂け男の笑い声が聞こえた。


△▼△▼△


気付くと、そこは路地より薄暗い部屋だった。ホコリ臭い。

ぼやける視界に目を開けると、そこには口裂け男が居る。

「お、起きたぁ?びっくりしたよ~。キミ、人間だったんだぁ?」

男を睨みつけて室内を見回すと、ギリギリ三メートル離れないところに椅子に縛られた和がいた。

意識は…あるんだろうか?

「人間はここに居ちゃいけないんだよぉ…?わかるかなぁ?」
「お前には関係ないだろ!!」

怖いが、強く言い返す。

「君…さ、あのキツネの人のモノらしいケド、今アイツはぐったりしてるし、君に勝ち目はないんだよ?」

それなのにそんな強気でいられるのすごいよ、と、口裂け男が嘲笑う。

「何が…何が目的なんだよ!!」

ニヤリと汚く笑う口裂け男と一つ目。

「いやぁ思っちゃったんだよねー和サマが大事にしてるキミを、和サマの目の前で俺らのモノにしたら和サマはどう思うかなぁって」
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