金平糖

三月 深

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22.ふぅわりと甘みが広がった。

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「和ー!ついでにお風呂の掃除、してもいいですかー?」

…美来めっちゃ優秀だな…。

「あー、よろしく頼むー!」

と和が返事をする。

「わかりましたー!」

という美来の声が聞こえると、再び沈黙が訪れた。

「な、なぁ和」

俺が差し出した手を、和は怯えるような目で見ると

「近寄らないでくれ…」

と言った。

いつもの呑気で気丈な和とは違う。

そっと手を引くと、和はほっと息をつくのが伝わってくる。

わかっていたことだけど、すごく悲しい。

ただの友達なのに、こんな思いをするなんて思わなかった。

ここのところずっと繋いでいた手が離れて、冷たい気がずる。

その耐えられない沈黙を壊したのは美来だった。

「お風呂、沸きましたよ?」

と。

「二人とも先に入っていいですよ。たくさん歩いてお疲れでしょうから」

ふふっと美来は微笑み、座布団の上に座り込んだ。

何で二人で入らないといけないんだっけ…?

あ、そうだ呪いだ。呪いが掛っているから和と入らないといけないんだ。ぼーっとしてて忘れてた。

「じゃあ先に入る。行くぞ涙流」
「あ、うん」

和と俺はスッと立って、風呂場に足を進めた。

脱衣所でもずっと続く沈黙。

それを破ったのは和だった。

「ごめんな、涙流」

お互い背を向けて着替える中で、和の声が響く。

「あんま離れるのはよくねぇってわかってるし、涙流に冷たくするつもりも無いけど…。近くにいると触りそうだし、触りたくなっちまいそうだ」

だから近寄らない、と言葉が締めくくられた。

寂しい。触りたい。でも友達同士ってそんなに距離近いっけ?

ガーガーと頭の中でぐるぐる回る。

「あーもーめんどい!布越しならいいんだろ!?別に触ってもちょっとヤケドするだけだし、いいから!…俺に冷たくすんな……」
「涙流…」

そうだな、悪い、と和はうつむいた。

「ほら、早く入ろうぜ風呂!お前が冷たくするから、体まで冷えちまったんだよ」

誰がうまく言えと…と苦笑する和。

これでまた和との距離が近くなったらいいな…。

そうして俺と和は風呂場に入った。

「和、シャワー取って」
「はいよ」

和が俺にシャワーを渡そうとする、その手が止まる。

「どうした?」

と顔を覗き込むと、和が口を開いた。

「これさ、間接キス的な間接水で…当たってないけど間接的に当たってるから、ほ、放電とかすんじゃねェか…?」

「……はぁ?」

そのあと少し考えて、やっと和の言いたいことが分かった。

「あのなぁ和。俺らの間であのヤケドみたいなのが起こるのは直接触ったときだけだと思うよ?もしもあのヤケドモドキが電流によるものだったとしても、二人が同じ水の中に同時に存在でもしない限り、ヤケドしないの」

つまり、同時に風呂に入ればアウトかもしれないけど、時間差とか、シャワーなら平気だってこと。

だが和はイマイチ理解していないらしく、頭の上にたくさんの?マークを浮かべている。

「ええっと…どゆこと?」
「…お前本当に授業出てんのか?」

俺よりずっと真面目に授業受けてろハズだろ。

「だから……」

それから五分後、俺の説明の甲斐あってやっと和は理解した。

和って、意外とバカなんだな…。

ま、そんなところもスキだけど…。あ、友達としてな?

なら大丈夫かーよかったーと言っている和の尻尾の先端が少し浸かっていた。

これなら電流によるものか実験できる!

…いつかは調べないといけないことだしな!うん!

和に実験をするというと百パーセントやめろと言われる…ので和には言わず、和の尻尾が浸かっている湯船に勢いよく指を突っ込んだ。

痛みを覚悟してぐっと目をつむる。

…痛く……ない?

恐る恐る目を開けると、

「何やってるんだ涙流?」

と和に言われた。

「いや…水中なら離れててもヤケドするかと思ったけど、しなかった」

和の尻尾の浸かった浴槽に指先をちゃぷんちゃぷんと浸けながら言うと

「また何でそんな危ないことを…」

とあきれられた。

とすると、電流とは違うタイプか…。

次は水中で直接触ったらどうなるかの実験を…と思ったら、頭にばさりとタオルを掛けられる。

「ほらそろそろ風呂出るぞ」
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