金平糖

三月 深

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19.月にかざせばキラリと光った。

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パタパタと奥から店員がいくつかお盆にのせて持ってくる。

「まずは軸となる竹の素材ですが、こちらの妖力を伝えやすい物か、こちらの妖力を保つ物か、どちらになさいますか?」

妖力…?

よくわからなくて和の方を見ると、和は

「こっちで」

と左側の『妖力を保つ』方の竹を選ぶ。

「はい、次にデザインですが、何かご希望はございますか?」

これは、和や美来が答えるよりもはやく答えた。

「オレンジと青!」

和と美来の色だ。

俺のイメージする、和と美来の色。

店員は「それでよろしいですか?」と和に確認をとった。

「そうだな、その色で、夕日と海のようなグラデーションで頼む」

和もそう返事をすると、店員もまた「わかりました」と頷いた。

おぉ、海か…!いいな!

「では、文字は何になさいますか?」

文字か…それはよくわからないな…。

「和、美来、一文字ずつ決めてよ!」

二人の方を向いてそう言うと、二人は少し考えて「防でお願いします」「護で頼む」と言った。

「かしこまりました。防と護ですね」

…何か、すごい守られてるな、それ。

「すぐに出来ますので、店内をご覧になってお待ちくださーっい!」

犬のお兄さんはまたパタパタと中に入っていった。

「なーなー和。俺は思うんだっ、『命』と『奪』だったら人を殺せるの?『何を』『どうする』でしょ?悪用されるじゃん」

和は、いや、と首を振る。

「文字は力が強くなればなるほどお金がかかるんだ」
「明確に人を殺める目的の扇子の販売は禁止されていますし、安全ですよ」

と、美来美来も付け足して言う。

「その点、涙流は防御で護る、ですからとってもお財布に優しいんですよ?」

と満足そうに微笑んだ。

「二重バリアを張れるしな!」

これでよし、と笑う二人を見ていると、この慣れない妖怪の世界でちゃんと大切に守られている気がする。

「へへっ、和、美来、ありがと!」
「いえいえ!」
「涙流のためだからな」

すると店の奥から「完成致しました」と店員がお盆に一本扇子をのせて持ってきた。

「開いて中の文字やデザインをご確認ください!」

恐る恐る扇子を手に取り、開いてみた。

広がる夕焼けのようなオレンジと、下に行くほど深くなる青い海。

端には優美な文字で『防』『護』と書いてあった。

「うわぁ、すっげぇ…」

感動する俺に犬の店員は微笑むと

「では最後に、妖力を込めて扇子に力を与えてください」

と言った。

「え…妖力…!?ンあ…なごっ、和…?美来…?お、俺?」
「そうだ」
「そうです」
「そうですよ?」

三人がハモった。

え、いや俺、妖力なんて使ったことないし…ってか、妖力なんてない…!

「えっと…?猫のお客様~?ど、どうしました?」

どうもこうもないっつの!

おい和!美来!どうすればいいんだよ!!と心の中で悪態をつきながら二人を見る。

すると二人は笑って

「すみません涙流」
「ごめんな。この猫は妖力が弱いから飼い主の俺らが妖力を与える」

と店員と俺に言った。

クッソこいつら俺の反応を楽しんでたな!?

店員は少し驚いた後、また商売用の笑顔で

「大切のなさっているんですね、かしこまりました!ではお手を扇子に」

と言った。

二人は頷いて扇子の両端に手を置く。

「では妖力を注いでください」

そう店員さんが言うと、じんわりと『防』と『護』の字がそれぞれの色に染まっていった。

「はい、それぐらいで結構です」

店員の言葉に二人が手を離す。

「以上で完成でございます!」
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