金平糖

三月 深

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17.コロン、と風に乗って降ってきたんだ。

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「痛っ!?」

そこには水を絞ったタオルが置いてある。

「あ、ごめんなさい。人間ですもんね、妖怪よりずっと痛いんでしたっけ…」

と言いつつも美来はタオルで手の傷を拭って、和から受け取った消毒液をかける。

「痛ったぁ!?」

人間の消毒液の数十倍痛い。ヤバいこれ。

「はい次いきますよー」

と美来は追い打ちをかけるように痛み止めを塗り込んだ。

「っ~!?」

もはや声も出ないほど痛い。

そこに美来はぺたりと大き目のガーゼを被せると、包帯をまいた。

「はい、完成です!」
「ありがとう…」

痛い…痛かったぁ…。

包帯が巻かれている手を見る。

少し血が出て、滲んでいただけなのに、少し大袈裟だなっ…でも、嬉しいや。と心がほくほくした。

「よく我慢したな…!偉いぞ!」

和の手が俺の頭を撫でようと伸ばされる。

和は俺の怪我の理由。

触れては、いけないということを忘れていた。

やっばい、どうしよう……!

「和、気を付けなさい。涙流を傷つけることになりますよ」

気が付いたら俺は美来に抱かれていた。

また助けてもらってしまった。

「あぁ、すまん」

と、和が手を引く。

なんだか、それはそれで寂しい…。

少ししゅん…としていると、和が

「あ、そうだ。折角だし、金平町を涙流に案内しよう」

と言い出した。

「何言ってるんですか和。こんな大変な時に…」
「いいじゃないか。今俺にできることは無いんだし」

美来はカラリと笑う和に「ですが…」と不安そうな顔をする。

金平町…、見てみたい!

「行こう美来!俺も金平町を見てみたい!」

夢の和風メルヘンワールド!

俺がそう言うと、美来もにっこり笑って「仕方ないですね、では行きましょう」と言ってくれた。

すると和が「あ、なら…!」と棚をごそごそして猫耳型の膨らみの付いた帽子を出した。

「何だコレ?」

刑事のような帽子に猫耳…って何のコスプレだよ…(汗)

「可愛いだろー!?」
「可愛いけど恥ずかしいし…ってかコレ被るのか…?」

和から帽子を受け取り、頭を仰ぐ。

「一応俺のって印。オーラっつうの?んまぁそんな感じのがついてるし、出てるから、喰われることは無いと思うケド」

和は俺の体を指さした。

「…?そういえばさ、和。美呼様がさっき『和の匂いがするー』って言ってきたのと何か関係あるのか?」

和は俺がそう言った途端にゴホゴホッと咳き込むと、顔を赤らめて

「あー…それはその…」

とモゴモゴする。

すると横から美来が

「あれはキスマークのことですよ。妖がそれを付けることは強い独占欲を示すんです」

と説明してくれた。

独占欲…。

犬みたいでちょっと可愛い…かも?

「それに、その帽子をかぶっていれば涙流にも耳があるように見えるので、人間だとバレませんよ」

人間だとバレない、か。

「人嫌いの妖怪も居るしな」

と和が付け足す。

「よし、行くぞ!」

立ち上がった和の後に続いて俺も美来も玄関に向かった。

そうして俺らは金平町に出たのだった。
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