金平糖

三月 深

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7.あれは空の綺麗な夜のことでね、

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「そしてそしてー!見てなさい涙流!」
「おぉ!何だ何だ!?」

美来は自分の胸の前で手を握った。

美来がんーっと力を入れると、どこからか煙が出てきて!美来の体が煙に包まれる。

美来の体が全て煙に包まれたかと思うと、いきなり煙がすーっとひいた。

その中から現れたのは、白い鱗に青い目、頭から尻尾にかけて青い毛が背中に生えており、右手にはネックレスだった玉を持っている龍が現れた。

「え…これが美来!?」

驚いて出た声に

「はい、私です!」

と龍が喋った。

「わ、喋れるんだ!すごい、格好いい!」
「でしょう!そうでしょう!」

つるつるの鱗にフサフサの鬣!まさに神秘!

「ふふっ、涙流のことは気に入りました。特別に背中に乗せてあげます。何処か行きたいところはありますか?」

自慢気な美来のお誘い。

やった!あの伝説の龍の背に乗れる!?と思ったらポン、と頭の上に手が降りてきた。

「それもいいけど、まずは俺の家に行くぞ。涙流や俺の洋服だとここじゃ目立つからな」
「んぇー…いいよ服なんてー!俺、美来に乗りたーい!!」

だってだってあの龍だぞ!?憧れの!!和風メルヘンだぞ!?

和が俺の襟を掴む。

「離せよ!」と喚くが、和は一向に聞く耳を持たない。

「ん、確かにそうですね、ここではその服は目立ちますしね…。涙流、着替えたらたーっくさん連れ回してあげます!」

美来がそう言うなら仕方無いかぁ…と思い、暴れるのを止めた。

「じゃあウチに行くぞ」と和に手を引かれて歩くこと十五分ほど。

道ですごくたくさんの妖怪の方々に見られた。

やっぱり人間は珍しいのだろうか。



「ほら、付いたぞ」と、和に話しかけられた。

そっと見ると、そこは和風のそこそこ大きな平屋のようだ。

おー、いかにも妖怪っぽい家…。

「ここが和の家?」
「そうだ。早く上がれ」

和に急かされて「お、お邪魔しまーす…」と家に入った。

「えーっと…そうだな…これくらいならサイズ合うか…?」

和は俺を連れて箪笥の元まで行くとごそごそやりだす。

「はい、これ、俺が小さい時着てたもんだ。だいたいサイズは合うんじゃないか?ほい、着てみろ」

小さい時、という言葉に怒りを覚え、和の腹に一発殴りを入れ、服を勢いよく奪った。

「い…良い殴りじゃねェか…うぐ…」

その場にうずくまり、気絶したフリをする和。

「お前が悪い」といいながら俺は着替えをした。

途中で和が目を開けて「おーいい眺めー」なんてほざきやがったのでさらに腹を踏んでおいた。

さすがに俺でもそれは引く。

「ん?ちょっ、和、ヘルプ!」

腰の帯がうまく結べない。

そう言うと和は立ち上がって俺の後ろ越しのあたりを少し弄る。

「ほれ、出来たぞ」

という声に振り返って礼を言おうとすると…腰をガシッと掴まれた。

「涙流…やっぱりちっこいな…」
「おっ前、また馬鹿にしたな!?もう一発殴ってやろうか…?」

俺は拳を和に見せつけて威嚇をした。

「え?この状態で殴ろーとしてんの?ムリでしょ?今のお前は俺に抵抗できないぞ」

確かにこの状態だと殴れないし、和の方はビクともしないし…ってか何、何だコレ、めっちゃドキドキするんだけど…い、意味わかんねェ…。

「どうしたんだ涙流?」

和が耳元で囁いた。

「ひゃうっ!?」

思わず女みたいな声が出る。

驚いて少し緩まった和の腕から離れる。

「そ、外!外行こう!美来が待ってるだろ?」

取り敢えずこのまま和と二人はヤバい。

何かわからないがヤバい気がする。

だが和は

「ん?美来ならさっき『申し訳ありませんが美呼様に呼ばれました。散歩はまた今度の機会に』って置き手紙残して飛んで行ったぞ」

とすまし顔。

ヤバい。このままでは絶対ヤバい!

「さぁ涙流、今日はここら辺にして風呂でも入ろうか?」
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