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七章

46.犬猫戦争編①<集結>

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そして翌日。

僕は一人、クローデンの部屋に向かった。

あーもう!めんどくさい!

「ニャー(あったあった、ここだ、クローデンの部屋)」

前足でドアを叩こうとすると、するりと前足がドアの中に入っていった。

思わずバランスを崩して、前に向かって転がる。

「ニャー……?(あれ、部屋の中……?)」

そこはクローデンの部屋の中だった。

まるで壁をすり抜けたみたいだ。

「よしっ!成功だ!」

何故か僕の前でガッツポーズをしているクローデン。

「ニャー?(ちょっ、どういうこと?)」

「ふっふっふ……」と不気味な笑いをクローデンがこぼす。

「壁をちょっと改造したんだ。テトラの神通力を覚えさせて、扉をすり抜けれるようにした!」

嬉しそうに言うクローデン。

いや、便利だけどさ……。

「ニャー(で?今日は何するの?)」
「あぁ、そうだな」

途端にまじめ顔になって、ガサゴソと机の中を漁る。

「あ、あった」

と、取り出したのは赤い宝石の付いたチョーカーと青い宝石の付いたネックレスだった。

あぁ、あれだ。ニンゲンの首輪。

「さぁ、これをつけるぞ」

手を伸ばして、赤いチョーカーの方を僕の首に嵌める。

「サイズは良いか?」
「ニャー?(いいけど、なにこれ?)」

クローデンは僕の疑問に答えず、自分も青い方のネックレスを胸元に垂らして付けた。

「よし、行くぞ」

スタスタと歩いて、扉に手を掛ける。

「ニャー(どこに行くんだよ!)」

するとクローデンは振り向きざまに笑って言った。

「旧友のところだよ」

と。

そこから三十分ほど経って、何故か民家の前に立っていた。

コンコン、とクローデンがドアを叩く。

すると、ドアがうち開きに開いて、一人の男が出て来た。

いや、若いので青年だな。

でも、何処かでも見たことがあるような…?

「やぁハロルド」

片手を上げて挨拶するクローデンに、青年も

「クローデン・クラウス、お久ぶりです」

と答える。

ハロルドと呼ばれた青年は僕の方を見て

「テトラ・アニャビスもお久しぶりです」

と言った。

なに!?僕の神名もクローデンのことも知っているだと……?

「さぁ、中へ」

確実に怪しいが、クローデンが迷わず入っていくので、僕もついて行く。

青年は玄関の鍵を閉めると、急いで僕たちの前に来てしゃがんで、何故か床を二回強く叩いた。

すると突然床が化け物の様に上がってきて…そこには、下へと続く階段があった。

「師匠は中で待っています」

と言う青年の言葉にクローデンは鷹揚に頷くと、中へ降りて行った。

えー……まじで……?その中あぶなくない…?

だけどここで入らないわけにはいかないっぽいので、仕方なく僕も降りていく。

そして地下一階に着いたとき、そこに居たのは。

我が旧友たちだった。

「ニャー!!(エルーズバッハ!)」

悪だくみさせたら神界一の職人のおっさん!

猫としてどうなのってくらい筋肉質かつ丸いフォルムも、その残念な感じにくるくるした灰色の長毛も神界のあの頃のまま!

「ニャー!(久しぶりよのう、アニャビスよ!)」

てことはもしかして……。

ぐるりと辺りを見回せば、そこらかしこに猫・ネコ・ねこ!

全員神界の頃と同じ、同じ猫神だった。

「ニャー!(お前ら……久しぶりだなぁ!)」

僕がそう言えば、みんなそれぞれに

「ニャー!(久しいな、アニャビス!)」
「ニャー?(元気してたか~?)」
「ニャー!(お前だけ城暮らしはずるいぞー!)」

と僕に言葉を掛けた。

「ニャー……(てことはハロルドって……)」

ハロルドの方を見ると、ハロルドはにっこり笑って

「はい!あのハロルドです!」

と言った。

ハロルドはエルーズバッハに憧れ弟子入りしたフワフワの長毛のくり色の毛をした猫神…だったのだが……?

「ニャー?(お前だけなんで人型?)」

くり色の長毛はくせっ毛にな髪になり愛嬌ある顔もぽやぽやしたゆるふわ美男って感じになっている。

「えっと……その……ちょっと手違いがあったみたいで……」
「ニャー(ニンゲンの体で降りてきてしまった、と)」
「はい……」

シュン……としょげるハロルド。

いや別に叱ったつもりは無いんだけど……。

「ニャー(まぁまぁアニャビス、そこらへんにしておいてやれ)」

いや、だから怒ってないって。

するとさっきからずっと微笑んでいたクローデンが自慢げに

「な?猫神も集結してるって言ったろ?」

と言った。

「ニャー(あぁ、ありがとな)」

神界にいた頃と同じ様子のみんなに、じんわりと目がしらに熱がこもる。

クツクツと笑いながらクローデンが

「テトラお前、泣きそうなところ悪いが、私たちが来たのには理由があるぞ」
「ニャ?(え?)」

ただみんなに会いに来ただけじゃないの?

「さぁみんな、ツクヨミ様が守ろうとしているミーシャ嬢の思い付きにより、我らが力を尽くす時が来た」
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