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転機
第百二十五話 変化
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シアンの作ってくれた食事は美味しかった。
オレ自身が、食事にそこまでの頓着があるわけではないのもあるかもしれないが、普通に自分で作るものと大差なく感じた。
「おいしかった。ごちそうさま」
「ほんとっ!?」
「ああ。嘘は言わない」
「シアンさん、よかったですね」
「うんっ!ありがとっ!」
なんとも可愛らしい光景だ…。
これから先、毎日こういった光景を見ることが出来るのだろうか…。そんな幸せがあってもいいのだろうか…。
「片付けはオレがするよ」
「手伝います」
イレーナはいつも良く手伝ってくれる。
これは観察や性格から予想した持論だけど、イレーナはきっとみんなの役に立つことを日常的に行っている性格だと思う。
気遣いというか、オレと二人だけでいる時とはどこか違うというか…。ともかく、彼女のそうした部分は好ましく、良い意味で自分も何かしてあげようと思える存在だ。
「うーん…」
「…?信希、どうかしましたか?」
食器を洗いながら考え事をしていた。
「あれ、声に出てた?」
「しっかりと…」
「気のせいかもしれないけど、みんなに違和感を感じるっていうか…」
「違和感ですか?」
食事をしている時の会話からも色々考えてみたものの、その正体を見つけることは出来ずにいた。
「うーん…どう伝えればいいか…」
「……?何かおかしなことがありますか?」
イレーナはオレの感じている違和感には気づいていないみたいだ…。
「イレーナが感じてないとなると…これはオレの問題か?」
「変わったことと言えば、信希が結婚してくれるということですけど」
確かに…。もしかして、オレの言葉でみんなの中に少なからず何か変化があったのか…?
「イレーナは普通だよね…」
「ふふっ。そう言われると、みなさん確かに少しだけ緊張されていたかもしれませんね」
くすっと笑いながら、イレーナはオレの違和感の正体を考えている。
「あー…そういうこと…?」
「ワタシは、信希がワタシのことを嫌いになるまで一緒に居るつもりでしたから、これと言って何かあるわけじゃありませんけど、皆さんは心の準備をしている最中だったかもしれませんね」
なるほど…。
「オレがイレーナの事を嫌いになるなんて絶対にないよ」
「絶対…ですか?」
こちらを向き、少しだけいたずらっぽく笑う彼女のいつもと違う表情にドキリとしてしまう。
「ああ、どんなに激しい喧嘩をしたとしても、好きな気持ちは変わらない」
「そう……ですか…」
自分でやっていて照れくさくなったのか、再び食器を拭いている手を動かし始めた彼女は、オレの隣に来て体をぶつけてくる。
「結婚は突然すぎたかな…」
「…?そんなことは無いと思いますけど、信希は以前に『定住地が決まったら…』みたいなことを言っていましたから」
確かに自分が言った言葉に覚えがある。
「あー。そんなことを言っていた気もするな」
「ワタシは信希が決めてくれたことが嬉しいです」
「そのうち、みんなから迫られる前にと思ったんだ。本当に自分で決めたって覚悟みたいなもの…分かるかな?」
「ええ、信希らしいです」
こんな何気ない会話の中にも、イレーナには彼女だけの、他のみんなにも一人だけの個性があって、みんなとの会話が本当に楽しいと感じる。
「すっごく緊張してたんだ」
「そうかもしれませんね。それを乗り越えてくれた信希には本当に感謝してます」
「そう…。ならよかった」
「これからは少しだけゆっくり生活できそうですね」
「ああ、スローライフの始まりだね」
「ふふっ。まだ少し早いんじゃないですか?」
オレはみんなとゆっくり生活できればいいと思っていたんだが、イレーナが予想しているこれからとは違うみたいだ。
「あ」
「どうしました…?」
「大事なことを忘れてた」
「…?」
彼女がこちらに視線を向けているのが分かるが、そのまま続けていく。
「メキオンとだけデートしてない。それにイレーナへのアクセサリーも…」
「ワタシは今日貰った指輪だけで満足してますよ…?」
「これと言ってほしいものはない?」
「そう…ですね」
困ってしまった。流石にイレーナにだけ贈らないというのも気が引ける…。
「じゃあ、メキオンとデートしたときにイレーナへの贈り物を買ってくるよ」
「はいっ、ありがとうございます」
彼女は嬉しそうに笑い、オレが選んだ物でも喜んでくれるみたいだ。
「メキオン、明日デートに行かないか?」
「まぁ、いいんですのっ!?」
「ああ、行く場所だけど…」
「そうですね…。イダンカであれば目立つことも少ないと思いますの」
「そう?流石にローフリングはまずいか」
「はいですの。ローフリングへ行く時は流石に変装しないとまずいですの」
そうして、明日はメキオンとデートすることになった。
──。
それからは特に何もなくいつも通りにお風呂に入り、先ほど作ったゲームをみんなで楽しんでから眠ることになった。
今日も誰かが部屋に来ることは無く、ゆっくり眠れそうだと思っていた時─
「信希、お邪魔していいですか?」
「え。ああ、いいよ?」
扉が開かれイレーナが入ってくる…と思ったが、続々とみんなが部屋に入ってくる。
「えっ、み、みんな来たの…?」
──。
オレ自身が、食事にそこまでの頓着があるわけではないのもあるかもしれないが、普通に自分で作るものと大差なく感じた。
「おいしかった。ごちそうさま」
「ほんとっ!?」
「ああ。嘘は言わない」
「シアンさん、よかったですね」
「うんっ!ありがとっ!」
なんとも可愛らしい光景だ…。
これから先、毎日こういった光景を見ることが出来るのだろうか…。そんな幸せがあってもいいのだろうか…。
「片付けはオレがするよ」
「手伝います」
イレーナはいつも良く手伝ってくれる。
これは観察や性格から予想した持論だけど、イレーナはきっとみんなの役に立つことを日常的に行っている性格だと思う。
気遣いというか、オレと二人だけでいる時とはどこか違うというか…。ともかく、彼女のそうした部分は好ましく、良い意味で自分も何かしてあげようと思える存在だ。
「うーん…」
「…?信希、どうかしましたか?」
食器を洗いながら考え事をしていた。
「あれ、声に出てた?」
「しっかりと…」
「気のせいかもしれないけど、みんなに違和感を感じるっていうか…」
「違和感ですか?」
食事をしている時の会話からも色々考えてみたものの、その正体を見つけることは出来ずにいた。
「うーん…どう伝えればいいか…」
「……?何かおかしなことがありますか?」
イレーナはオレの感じている違和感には気づいていないみたいだ…。
「イレーナが感じてないとなると…これはオレの問題か?」
「変わったことと言えば、信希が結婚してくれるということですけど」
確かに…。もしかして、オレの言葉でみんなの中に少なからず何か変化があったのか…?
「イレーナは普通だよね…」
「ふふっ。そう言われると、みなさん確かに少しだけ緊張されていたかもしれませんね」
くすっと笑いながら、イレーナはオレの違和感の正体を考えている。
「あー…そういうこと…?」
「ワタシは、信希がワタシのことを嫌いになるまで一緒に居るつもりでしたから、これと言って何かあるわけじゃありませんけど、皆さんは心の準備をしている最中だったかもしれませんね」
なるほど…。
「オレがイレーナの事を嫌いになるなんて絶対にないよ」
「絶対…ですか?」
こちらを向き、少しだけいたずらっぽく笑う彼女のいつもと違う表情にドキリとしてしまう。
「ああ、どんなに激しい喧嘩をしたとしても、好きな気持ちは変わらない」
「そう……ですか…」
自分でやっていて照れくさくなったのか、再び食器を拭いている手を動かし始めた彼女は、オレの隣に来て体をぶつけてくる。
「結婚は突然すぎたかな…」
「…?そんなことは無いと思いますけど、信希は以前に『定住地が決まったら…』みたいなことを言っていましたから」
確かに自分が言った言葉に覚えがある。
「あー。そんなことを言っていた気もするな」
「ワタシは信希が決めてくれたことが嬉しいです」
「そのうち、みんなから迫られる前にと思ったんだ。本当に自分で決めたって覚悟みたいなもの…分かるかな?」
「ええ、信希らしいです」
こんな何気ない会話の中にも、イレーナには彼女だけの、他のみんなにも一人だけの個性があって、みんなとの会話が本当に楽しいと感じる。
「すっごく緊張してたんだ」
「そうかもしれませんね。それを乗り越えてくれた信希には本当に感謝してます」
「そう…。ならよかった」
「これからは少しだけゆっくり生活できそうですね」
「ああ、スローライフの始まりだね」
「ふふっ。まだ少し早いんじゃないですか?」
オレはみんなとゆっくり生活できればいいと思っていたんだが、イレーナが予想しているこれからとは違うみたいだ。
「あ」
「どうしました…?」
「大事なことを忘れてた」
「…?」
彼女がこちらに視線を向けているのが分かるが、そのまま続けていく。
「メキオンとだけデートしてない。それにイレーナへのアクセサリーも…」
「ワタシは今日貰った指輪だけで満足してますよ…?」
「これと言ってほしいものはない?」
「そう…ですね」
困ってしまった。流石にイレーナにだけ贈らないというのも気が引ける…。
「じゃあ、メキオンとデートしたときにイレーナへの贈り物を買ってくるよ」
「はいっ、ありがとうございます」
彼女は嬉しそうに笑い、オレが選んだ物でも喜んでくれるみたいだ。
「メキオン、明日デートに行かないか?」
「まぁ、いいんですのっ!?」
「ああ、行く場所だけど…」
「そうですね…。イダンカであれば目立つことも少ないと思いますの」
「そう?流石にローフリングはまずいか」
「はいですの。ローフリングへ行く時は流石に変装しないとまずいですの」
そうして、明日はメキオンとデートすることになった。
──。
それからは特に何もなくいつも通りにお風呂に入り、先ほど作ったゲームをみんなで楽しんでから眠ることになった。
今日も誰かが部屋に来ることは無く、ゆっくり眠れそうだと思っていた時─
「信希、お邪魔していいですか?」
「え。ああ、いいよ?」
扉が開かれイレーナが入ってくる…と思ったが、続々とみんなが部屋に入ってくる。
「えっ、み、みんな来たの…?」
──。
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