女性経験なしのオレ、夢に見たケモミミ様の居る世界へ転移、神にすらなれる能力をもらっていたみたいだけど、ケモミミハーレムを作ることにします。

たんぐ

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転機

第百十五話 準備万端

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 街から出るのは簡単だった。

 せっかく用意していたので、オレは転移の魔法具を発動させることにした。以前のように転移することに躊躇いが無くなっていて、みんなのことも転移させていることに気付いたのは、女性たちの反応を見た時だった。



「方角はあちらでしたね?」

「そうだね。このまま道通りに進んでいいらしい」



 出発するにあたって、食料や旅の支度をしていないにも関わらず飛び出してしまったのは少し失敗だったかもしれないと、今更になって後悔している。



「食料とか大丈夫かな…」

「ふふっ、大丈夫ですよ。信希が作ってくれた冷蔵庫に保存食を買い込んでいますからね」



 いつの間に…という言葉は出なかった。

 流石だと感じるイレーナの行動に、自分ひとりだったら他のみんなにも苦労を掛けてしまうなと感じた。



「あ、ありがとう…。そこまで気が回らなかったよ」

「それに、信希がちょこちょこ食料を買ってきてくれているので、保存食とは別に一週間分くらいの食事も確保できていますよ」



 なるほど…。確かに冷蔵庫の中には色々な食料をため込んでいたような気もする。



「かなり慌ててますか…?いつもの余裕が感じられませんよ?」

「あ、ああ…。普通の子供たちなら少しは落ち着いているかも知れないけど、今回は獣人の子供たちばかりだと聞いているからな…」



「無事だといいですね…」

「うん。それにドラゴンってのも少し気になる」

「私にも関係のあることかもしれないからな」



 馬車を操縦しているのはオレで、隣にイレーナが座っていて、二人だけで会話をしているつもりでいたが、小窓からロンドゥナが話を聞いていたみたいだった。



「び、びっくりした…」

「ロンドゥナさん、ドラゴンとの関りがあるんですか?」



「うむ。関りと言うほどではないが、眷属のドラゴンもいるし我らよりも上位の存在になるドラゴンまでいるはずだ」

「なるほど…」



 何やら二人だけで話が進行して行ってるが、気になることがある。



「ロンドゥナよりも強いドラゴンが居るってことか…?」

「その通り。その場合、信希だけが強引に止めることが出来るだろうな」



 とんでもないことだな…。

 獣人の子供たちのためにと思い勢いで飛び出してきたが、今回ばかりはみんなも危険にさらされるかもしれないと知らされて一気に恐怖が大きくなってくる。



「準備しておこう」

「それがいいですね。ワタシたちも出来るだけ力になります」



「私が交渉できれば、一番安全で解決できそうなんだがな」

「分かった。色々な状況に対応できるようにしておくよ」



 まずは状況を整理しておくことからだろう。

 相手がとても強かった場合、オレが守る優先度を決めておかないといけないだろう…。

 まずは一緒に居る女性たち、次に獣人の子供たち、次は馬車を引いてくれている馬たち、それから子供たちを護衛してくれている人たちといった感じだろうか…。



「お守りの魔法具は、そこまで強い力から守るだけの信頼性はないな…」



 防御系の魔法ってどんな風にイメージすればいいんだろうか…。

 みんなから守るために使った魔法は、刃物や小さな落石程度から守るための物だから、接近する危険な物を弾き飛ばすイメージなんだよね…。



「なぁ、イレーナ?」

「どうしましたか?」



「防御系の魔法のことについて知ってることは無い?」

「防御系…ですか?守るということですよね…」



 イレーナは考え込んでしまった。彼女の記憶の中に防御につながる何かが無いか考えてくれているみたいだ。



「ロンドゥナはどう…?」

「むぅ…。難しいな、そういう魔法があると聞いたことがある程度だ。我々も肉体強度的に強い種族だからな…」



 難しいのか…?どうしても自分の思いつく限りで強大な力を防ぐようなイメージが思い浮かばない。元居た世界の知識でも、そこまでの危険な物やそういったものから守ることなんてのは無い…。あるとしたらアニメやゲームの知識だけ…。



「当たらなければいい…?」

「ん?まぁ、そうだな」



 だったら、馬車全体をカバーできるくらいの大きさで、接近物をゆっくり近づけるようなものに出来れば、オレが対応できるんじゃないか?

 そして、今思いついたことを魔法としてイメージを作り上げていく。



 ──。



「よし、何とかできたな…」

「完成ですか?」



 魔法具が完成したのは夜の休憩になる頃だった。

 馬車を進めていたせいももちろんあるが、それ以上に今回の魔法具には手間がかかってしまった。

 これまでにないくらい、にみんなの命を預かるかしれない魔法具だったからな…。失敗なんてすることはもちろんできないし、どんなことがあってもかなりの時間を稼げるように工夫するのに時間が掛かってしまった。



「ああ。これで、もしもオレの手に負えない相手だったとしても、みんなを連れて逃げるだけの時間は作れると思う」

「信希の手に負えなかったら、この世界の終わりかもしれませんけど…」



 …?イレーナは何を言っているんだろうか…。確かにオレ自身の能力が高くて強いのもある程度は理解しているつもりだけど…。オレよりも強い存在ってのが居てもおかしくないのが異世界と言うものだからな。



「この魔法具は、ドラゴンと遭遇したらすぐに使う。そして、無理だと判断したらイダンカに記憶している転移の魔法具でいったん逃げることにするよ」

「なるほど、分かりました。ワタシたちは馬車から離れなかったら大丈夫だということですね」



「そういうことだね」

「分かりました。皆さんのことはワタシに任せて、信希は自由に動いてください」



 イレーナもいつになく真剣といった感じで準備を手伝ってくれている。彼女もそれほどに今回の事件が危険だと判断しているのだろうか…。



 それとは別に、自分自身もドラゴンと戦闘になった時の準備を進めて行く。

 攻撃系の魔法具を作るのは止めておいた。難しいというよりも暴発すると、とんでもないことになってしまうかもしれないと思ったからだ。

 それよりも、これまでに作っておいた魔力を込めた水晶から、いつでも魔力を取り出せるようにしておく方が無難だと考えたせいもある。引き出せるほど魔力に余裕があれば、全力で魔法を使うこともできるからな。



 ここまで、ルーファーから聞いたままの勢いで来てしまったが、どんなことがあってもみんなのことは守れる準備が出来たので、ひとまずは大丈夫だろう。



「あとは出たとこ勝負だな…この世界に来てから、こういうことに巻き込まれる確率高くないか…?」



 ──。
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