女性経験なしのオレ、夢に見たケモミミ様の居る世界へ転移、神にすらなれる能力をもらっていたみたいだけど、ケモミミハーレムを作ることにします。

たんぐ

文字の大きさ
上 下
110 / 127
転機

第百十話 お酒はほどほどに

しおりを挟む
 みんなとのデートを始めてから三日目になる。

 今日は酒豪ポミナとのお出かけだ。



「ポミナは行きたい所がある?」

「お酒が欲しいです…」



「分かった。酒屋を探してみようか」

「はいっ」



 出会った頃のように、少しだけ会話にぎこちなさは残っているものの、言いたいことを素直に言うくらいには距離は近づいているのだろうか。

 ポミナはみんなの中で一番つかみどころがないというか、正直彼女自身がどうしたいのか分からない女性といった感じだった。



 出会った頃の方が積極的で、距離の近づき方も一番早かった気がするだけにオレへの興味が薄れているのかとすら感じてしまう。



「ポミナはさ、結構遠慮がちだったりするのかな?」

「え…?」



 それはオレの近くに居る女性が増えていくにつれて、感じていたことでもある。



「いや、他のみんなに気を使ってたりするのかなって」

「……」



 どこか痛いところを突かれたかのような表情を浮かべているポミナに、大方正解を引き当てたのではないかと感じる。



「はははっ、今日は二人だけだから遠慮なんて必要ないし、みんなもそんなこと気にしてないと思うよ?」

「本当ですか…?」



 ポミナは酔っている時が素なのではないかと思っているが、実際に幾度も酔っていた状況があるにもかかわらず、最初のころのような積極的な行動は見られなくなっていた。



「ポミナはオレのこと嫌い?」

「…」



 返事はしないものの、首をぶんぶんと左右に振っているので、オレの予想している通りになっていく感じがする。



「他のみんなのことが苦手とか?」

「いや、特に…」

「そうだよね、苦手だったら一緒に居るのもきついだろうし…」



 彼女の過去のことについては、それほど詳しく話を聞いているわけではない。

 それから、どうしてそこまでお酒が好きなのかも気になっている。ただただ好きなだけなのかも確認してみたいと思っていたことだ。



「ポミナはどうしてそんなにお酒が好きなの?」

「どうして…でしょう?」



「分かんない感じ?」

「気にしたこと無いです…お酒があれば嫌なことを忘れられるから…?」



「なるほどね」



 ここから先は少し慎重に進めて行く必要があるだろう。

 シアンの時とはわけが違うだろうからな…。お酒の力が必要なほどに嫌なことは数えきれないほどあるだろう。だが、この世界の獣人たちには辛過ぎる過去があったりする。

 ポミナの話を聞くのは、お酒を飲んでいる時の方がいいかもしれないと考えた。



「あ、酒屋ってあそこかな?」

「みたいですっ」



 その店には色々な種類の酒が用意されていた。



「そういえば、酒の種類で好みの物ってある?」

「ぶどう酒が一番好きです」



 なんだか酒を前にしたら、いつもより元気よく会話できているような気がしないか…?

 ぶどう酒というとワインあたりだろうか。



「種類がいっぱいあったり?」

「いや、安くておいしくて一番酔っぱらい易いんです」



「そ、そっか…」



 その酒を好きな理由が完璧におっさんのソレなんだが…。ここではあえて触れないようにしておこう…。



「じゃあ軽く試飲してから、好みのやつをいっぱい買っていこう?」

「いいんですかっ!?」



 彼女の酒好きは、嫌なことを忘れられるだけじゃないと確信する。

 それだけの理由で、ここまで喜ぶことのできる人をオレは見たことが無いからだ。



「その代わり約束がある」

「約束…」



「今日買ったお酒は、ちゃんとオレの前で飲むことね?」

「それだけですか…?」



「こうでもしないと、ポミナは間違いなく飲みすぎるからね?」

「な、なるほど…」



 ちょっぴりアホっぽい所も彼女の魅力の一つだろう。

 自分がどれだけの量を飲んでいるのか、全く理解できていないようだった。



「お酒はほどほどにだよ?」

「わ、わかりました…」



 そうしてオレたちは色々なぶどう酒を試飲してから、互いが気に入った種類を一つずつ大樽で購入することにした。



「こんなにいいんですか…?」

「ああ。みんなも飲むだろうし」



 はっきり言ってしまうと、オレの金銭感覚はおかしくなりつつあった。

 未だに、ローフリングで売却した素材の代金も底を尽きていない。にもかかわらず、次から次にお金が懐に入ってくる。



「それにそろそろ街を出るだろうから、道中でもお酒は必要だろう?」

「ありがとうございますっ」



 ポミナは本当にうれしそうにオレに抱き着いてくる。

 他の女性たちと比べても力強い抱擁に、流石だなと感じてしまうが彼女の体が力強く密着してきて、それどころではなくなってしまいそうになる。



「ああ。喜んでくれたなら何より」



 オレは出来るだけ早く離れてもらうために、彼女の頭を撫でてみる。

 自分の状況に気付いたのか、さっと離れて照れくさそうにしている彼女は、これまでに見たことの無い魅力に包まれていた。



 ちゃんと、みんなを一人ずつの女性として見ると決めてから、それぞれの女性が唯一無二の魅力を持っていることに気付かされていく。



 購入したお酒を居空間収納に入れてから、ポミナと共にアクセサリーを選ぶことにした。

 彼女にはネックレスが魅力的に映えるだろうなと思っていたが、ブレスレットの中でお気に入りのものを見つけたみたいだった。少し残念ではあるが致し方ない…。



 ──。



 デートも終わり宿に停めてある馬車に戻るまでの間、ポミナは少しだけいつもと様子が違っていた。

 先ほどの試飲で軽く酔っているのかかなり積極的な様子で、腕に優しくしがみ付いてきてこちらに体を預けてきている。



「疲れてない?」

「だいじょぶです…」



 酔っぱらっている時とのギャップが、ポミナの女性らしさを際立たせているのでオレもどこか緊張してしまう。

 こういう時の決まり文句ってあるよな…。もしもその言葉を聞いたのなら──



「まさき…?」

「んっ!どうした…?」



 思わずおかしな返事になってしまう。



「わたしは、信希にどんなお礼をすればいいんでしょうか…」

「どういうこと?」



「わたしは信希に貰ってばかりです」



 そういうことか…、彼女なりに考えていることがあるんだろう。



「もしかしたらこれまでに言っているかも知れないけど、オレはみんなと居られるだけで幸せだし満足しているよ?」

「でも…お金は…?」



 彼女の悩みはもっともなのかもしれない。実際、ケモミミを拝ませてもらっているからというだけで貢いでくれる奴なんて、本当に信用できるかも怪しい所だろう。



「じゃあ、ポミナにも何か得意なことでお願いすることがあるかもしれないね?」

「得意なこと…」



 彼女はオレの言葉で、さらに悩んでしまって考え込んでいるみたいだけど、今はこれでいいのかもしれない…。

 みんなのことも、これからどんどん知っていけばいい。



 ──。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした

高鉢 健太
ファンタジー
 ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。  ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。  もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。  とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

異世界で穴掘ってます!

KeyBow
ファンタジー
修学旅行中のバスにいた筈が、異世界召喚にバスの全員が突如されてしまう。主人公の聡太が得たスキルは穴掘り。外れスキルとされ、屑の外れ者として抹殺されそうになるもしぶとく生き残り、救ってくれた少女と成り上がって行く。不遇といわれるギフトを駆使して日の目を見ようとする物語

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

俺は善人にはなれない

気衒い
ファンタジー
とある過去を持つ青年が異世界へ。しかし、神様が転生させてくれた訳でも誰かが王城に召喚した訳でもない。気が付いたら、森の中にいたという状況だった。その後、青年は優秀なステータスと珍しい固有スキルを武器に異世界を渡り歩いていく。そして、道中で沢山の者と出会い、様々な経験をした青年の周りにはいつしか多くの仲間達が集っていた。これはそんな青年が異世界で誰も成し得なかった偉業を達成する物語。

処理中です...