女性経験なしのオレ、夢に見たケモミミ様の居る世界へ転移、神にすらなれる能力をもらっていたみたいだけど、ケモミミハーレムを作ることにします。

たんぐ

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転機

第百八話 不安は大きくて

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 レストとのデートは、上手くいったと言ってもいいだろう。

 彼女のことも多く知れたし、目的のプレゼントも購入することも出来て、これまでにないくらい沢山の会話をすることまで出来た。



 カフェで楽しんでいた会話が思った以上に弾んでしまったので、気づいた時には夕方になってしまっていた。

 時間が経ちすぎていることに気付いたオレたちは、そのまま帰路についた。



 ──。



「ユリア…?大丈夫だった?」

「大丈夫ですじゃ。ゆっくり休んだので、もういつも通りですじゃ」



 馬車に戻って来て、一番に向かったのはユリアの部屋だった。

 今朝からイレーナが介抱してくれてるとはいえ心配はしていた。まさか自分があんな風に、自我を無くすくらいに暴走してしまうなんて思っても居なかったからだ。



「そう心配そうな顔をしないでほしいのじゃ」

「そ、そうか…?この後、自分の部屋でアクセサリーを加工するから、良かったら来てくれない…?」

「かしこまりましたですじゃ」



 ベッドに腰掛けてゆったりと休んでいた彼女は、オレの言葉と同時に立ち上がり付いてきてくれるみたいだ。



 レストは馬車に入るなりキッチンの方へぱたぱたと駆けて行った。

 イレーナも食事の準備をしているのか、ユリアの部屋には居なくてキッチンから良い匂いが漂ってきているので、おそらく予想通りだろう。



 オレはそのままの足で自分の部屋へ向かっていく。

 ユリアはたたっとオレの隣に駆け寄ってくる。



「アクセサリーの加工とは?」

「うん。ヨーファとカフィンにあげたみたいに、お守りの意味も込めてみんなに渡そうかなって」



「ほほう。みんなの分選んできたのかの?」

「いいや、一人ずつ選んでもらうつもりだよ。まずはレストの分だけ買ってきた感じ」



「それは楽しみですじゃ」



 彼女はそう言いつつ、満面の笑みでデートが楽しみなのかアクセサリーが欲しいのか、自分の順番を待ちわびているように感じた。



 オレの部屋に入り、研究や加工用に用意しておいた机に向かう。

 魔法具の制作から始めていると、ユリアがベッドに腰掛けて話しかけてくる。



「この街には、どのくらい滞在するおつもりかの?」

「うーん…とりあえずは、みんなとデートするまでは居るつもりだけど、どうして?何か気になることでもある?」



 ユリアにしては珍しい質問だなと思った。



「あ、あー…」



 ぎこちない返事に何かあるのかと思い、振り向いてユリアのことを確認してみる。



「ユリア?」

「……」



 何を考えているのか、俯いてもじもじしている様子だ。

 もしかして、話題に困ったりしているのだろうか…。



「ははっ、ユリアはアクセサリーとか興味あるの?」

「いえ…特には無いのじゃ…」



 呼んでおいてなんだが、彼女にいらぬ気を遣わせてしまっているなと感じてしまう。



「ユリア?ちょっときて」

「はいですじゃ…」



 椅子は一人用で作っているので彼女の座るところは無いのだが、自分の足に座っていいよと促してみる。



「よいのですか…?失礼するのじゃ」



 彼女は少し躊躇ったものの、オレが言っているので良いのかといった感じで座ってくる。

 本当に体重を預けているのかと思うくらいに、重みを感じない彼女の体に昨晩は無理をさせてしまっていたなと後悔する。



 少しだけでも何かできればいいと考えて、アクセサリーへ取り付けるための水晶を圧縮しながら、ユリアの体調を鑑定してみる。

 『若干の疲労』…やはりまだ彼女の体調は、万全というわけにはいかないみたいだった。



「信希さま…?」

「うん、少しだけそうしてて?」

「……?」



 ユリアの体力を回復させるために、疲労回復につながる魔法をイメージしていく。こうした魔法は以前にも止められはしたが、やはり自分が気になるのだから仕方ない…。



「なんだか温かいですじゃ…」

「そう?」



 オレは疲労回復の魔法を発動させたまま、レストへプレゼントするアクセサリーを完成させていく。

 仕上がり自体も良い感じで、レストに良く似合うのではないかと思う。



「すごいのじゃ、信希さまは本当に器用ですじゃ」

「そう褒められると少し照れるな」



 最後にちゃんと出来栄えを確認しつつ、おかしな所がないかチェックして完成だ。



「じゃあ、そろそろ食事みたいだし、みんなの所へ行こうか」

「はいですじゃ」



 ユリアは立ち上がり自分の体に違和感を覚えたのか、何やら不思議な動作を繰り返している。



「どうしたの?」

「い、いえ…何でもないですじゃ…?」



 そのままみんなの所へ向かっていく。



「はい、レスト。ちゃんと作っておいたから、できればずっと着けておいてほしいな」

「信希、ありがとう!レスト大事にする!」



 とても喜んでくれているみたいで安心する。

 お守りとは言ってるものの、やはり女性にプレゼントを贈るのに慣れているわけではないからな…。



「……」

「シアン?どうしたの?」



 明らかに顔色の悪いシアンに気付く。



「ん、ん…」

「シアンさんは、子供の話をレストさんから聞いて過去のことと照らし合わせてしまったみたいです…」



「なるほどね。シアン?安心していいよ。出来ないことはないよ、シアンが出来ないことはオレが支えるし、出来ないと思っていることも勉強すればちゃんとできるようになるから。ね?」

「う、うん…」



 子供のことやこれからの自分のことになると、不安やこれまでの自分の経験から恐怖を感じてしまっているのだろうか…。オレにそういった経験は無いし、周囲の人間にもそういった環境の人は居なかった。

 強いて言うなら、シアンが初めてと言ってもいい。そんなオレに出来ることなんて知れているのかもしれないが、全力で力になると決めている。



「ちゃんと子供を迎えることが怖いって思えるなら大丈夫。ゆっくり進んでいこう。慌てる必要なんてないからね」

「うんっ」



 頑張って作ったのであろうぎこちない笑顔が、オレの何とも言えない苦しく感じる気持ちを作り出していく。

 居ても立っても居られずに、シアンを抱きしめる。

 少し冷たいと感じた彼女の体温が温かく感じるまで、オレはシアンから離れることが出来なかった。



 ──。

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