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転機
第九十八話 突然の告白
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王様との交渉も終わり報酬の受け渡しも済んだところで、メイドのユフィーナがオレたちに付いてくることになった。
付いてくると言っても、オレは王様の元に戻ってほしいと思っているんだけど…。
旅に連れて行くわけにもいかないし、イレーナも怒っていたし…。
嫌なわけではないけど、何でも承諾していたらこの先もっと多くの問題を抱えることになるかもしれないからな。
「信希様、わがままを言ってしまい申し訳ありません」
「いや、そんなことはないけど…」
帰りの馬車の中で、ユフィは突然そんなことを言いだした。
「信希様はご自身で何もかも出来る御方ですから、女性にも困っていないとあれば私など必要ないのは理解しています…」
「そこまで自分のこと卑下しなくていいんじゃないか?多くの知識や技能を持ってるんだし、それにイレーナたちも手伝ってくれてよかったと言ってたじゃないか」
「そ、そういことではなく…」
ん?話の流れ的に自然な回答じゃなかったか?
なにか特別なことなんてあったりしたっけ。
「私のことを、信希様の近くに置いていてほしいということです」
「えーと…つまり──」
「信希様にお仕えしたいのです」
「え、えーと…」
さてこれはどうしたもんか…。
会話の流れがおかしくなったあたりから、他のみんなのことが気になってどうにも落ち着かなくなってしまう。
「ご迷惑でしょうか…」
「少し考えさせてっ!」
そうだ。いったん落ち着いてゆっくり考えよう。
そもそもユフィが、オレに着いてきたくなるような理由を昨日の今日で持っているとは考えにくい…。
それに加えて、彼女があの城の中でも信頼度の高い位置にいるメイドだということ。
他のことに集中していたとはいえ、背後に居るユフィの気配を感じることすらできなかったり…。
はたして、彼女は本当にメイドなのだろうかと思ってしまう。王様からの信頼も得ているみたいだし、オレの気のせいじゃなかったら普通のメイドではないんじゃないか?
「あの…」
彼女はオレのことを、真剣な眼差し見つめて答えを求めている。
「一つだけ確認しておきたいことがある」
「はい。なんでもお答えします」
「ユフィはオレのことや他の誰かのことを、監視することを命令されているわけじゃないのか?」
「ま、信希それはっ──」
「流石は信希様です。なんでもお答えするといったので答えます。私はルーファー国王より、信希様の監視と護衛の命令を受けております。もちろん、私がただのメイドじゃないということも理解されていると思います。私と信希様が出会った時に、廊下で見つけた隠密の隊長を任されています。気配を消すことに長けているので、メイドとして表向きは役目を言い渡されています」
「あー。やっぱり…?」
正直当てずっぽうだったけど、直感を信じてよかった…。それでも確信には至っていなかったのに、どうしてユフィは本当のことを話すのだろうか…。
「いやはや、信希には感心させられることばかりじゃ」
「確かになぁ。魔法や知識もそうだが、直感的な部分は鍛えられる環境だったとは思えないんだがな」
「まさか本当に…?」
「どうしてユフィはその命令のことを話すの?言わなければ、知られなかったかもしれないじゃん?」
「信希様に隠し事はしないと決めたので。これが理由ではおかしいですか?」
うーん…どうも引っかかるな…。
「ん-…。ユフィも正直に話してくれているし、オレも率直に意見を言おう。はっきり言って、今のユフィが何を考えているのかオレには理解できないっていうのが率直な意見だ」
「それはごもっともだと思います」
「そうなんだとしたら、ユフィの忠義はどこにあるの?」
「見透かされていますね…。私は、自分よりも強者にお仕えしたいと考えています。ルーファー様に仕えていたのは、あの御方に天賦の才を感じたからです」
「そうか…」
そしてオレは再び自分の思考に集中する。
オレ自身がユフィのような感覚を自分の人生で持っていたことが無いから、当然ながら彼女の心境なんかを想像することもできない。
このまま、ユフィを信用することもできなかったら、みんなと一緒に生活させることすら危険に感じてしまう。
「ま、信希…?」
「とりあえず、そのことも含めて考えさせてくれ。一旦馬車に戻って、今日決まったことをみんなに報告もしたいし…」
「かしこまりました。こんなことを言いましたが、信希様に危害を加えるつもりもありませんし、約束した『秘密』については王にも報告していません」
オレは正直、ユフィの扱いに困ることになりそうだとこれまでに感じたことのない不安に襲われていた。
とりあえずは、何があってもみんなのことを守れるようにしておかないといけない。
「ユフィ、最後に一つだけ。オレと一緒に行動している誰かに、危害を加えるような行動や素振りを見せたら…。確実にオレはユフィの命よりみんなのことを優先させると言っておくよ」
「かしこまりました。肝に銘じておきます」
ユフィはオレの言葉に一切怯んでいる様子なんてなく、はなからそんなつもりは無いといった感じだった。
そんな話をしていると馬車が止まり、宿に着いたようだった。
「到着いたしました」
「ああ。とりあえず、昨日と同じように一旦宿の中に入ろう」
もうすっかり、この馬車に乗り降りするのにも慣れてしまった。
そして、宿の中に入ると店主が話しかけてくる──
「今朝は出発されたお姿が見えなかったのですが…、いつごろ出かけられたのでしょうか…?」
「本当?馬車が迎えに来てくれる予定だったから、少し早めにここを出て自分たちの馬車を確認していたんだけどな?」
店主の言葉に思わずドキリとしてしまった。
そう言われると今朝は自分たちの馬車から、何も考えずに迎えの馬車に乗り込んでいたことを思い出したからだ。
「そうですか…、それは気付きませんでした」
「わざわざありがとうね」
そう告げてから自分たちの部屋へと向かう。
それからはいつも通りに、生活している馬車の中へ向かうことになった。
──。
付いてくると言っても、オレは王様の元に戻ってほしいと思っているんだけど…。
旅に連れて行くわけにもいかないし、イレーナも怒っていたし…。
嫌なわけではないけど、何でも承諾していたらこの先もっと多くの問題を抱えることになるかもしれないからな。
「信希様、わがままを言ってしまい申し訳ありません」
「いや、そんなことはないけど…」
帰りの馬車の中で、ユフィは突然そんなことを言いだした。
「信希様はご自身で何もかも出来る御方ですから、女性にも困っていないとあれば私など必要ないのは理解しています…」
「そこまで自分のこと卑下しなくていいんじゃないか?多くの知識や技能を持ってるんだし、それにイレーナたちも手伝ってくれてよかったと言ってたじゃないか」
「そ、そういことではなく…」
ん?話の流れ的に自然な回答じゃなかったか?
なにか特別なことなんてあったりしたっけ。
「私のことを、信希様の近くに置いていてほしいということです」
「えーと…つまり──」
「信希様にお仕えしたいのです」
「え、えーと…」
さてこれはどうしたもんか…。
会話の流れがおかしくなったあたりから、他のみんなのことが気になってどうにも落ち着かなくなってしまう。
「ご迷惑でしょうか…」
「少し考えさせてっ!」
そうだ。いったん落ち着いてゆっくり考えよう。
そもそもユフィが、オレに着いてきたくなるような理由を昨日の今日で持っているとは考えにくい…。
それに加えて、彼女があの城の中でも信頼度の高い位置にいるメイドだということ。
他のことに集中していたとはいえ、背後に居るユフィの気配を感じることすらできなかったり…。
はたして、彼女は本当にメイドなのだろうかと思ってしまう。王様からの信頼も得ているみたいだし、オレの気のせいじゃなかったら普通のメイドではないんじゃないか?
「あの…」
彼女はオレのことを、真剣な眼差し見つめて答えを求めている。
「一つだけ確認しておきたいことがある」
「はい。なんでもお答えします」
「ユフィはオレのことや他の誰かのことを、監視することを命令されているわけじゃないのか?」
「ま、信希それはっ──」
「流石は信希様です。なんでもお答えするといったので答えます。私はルーファー国王より、信希様の監視と護衛の命令を受けております。もちろん、私がただのメイドじゃないということも理解されていると思います。私と信希様が出会った時に、廊下で見つけた隠密の隊長を任されています。気配を消すことに長けているので、メイドとして表向きは役目を言い渡されています」
「あー。やっぱり…?」
正直当てずっぽうだったけど、直感を信じてよかった…。それでも確信には至っていなかったのに、どうしてユフィは本当のことを話すのだろうか…。
「いやはや、信希には感心させられることばかりじゃ」
「確かになぁ。魔法や知識もそうだが、直感的な部分は鍛えられる環境だったとは思えないんだがな」
「まさか本当に…?」
「どうしてユフィはその命令のことを話すの?言わなければ、知られなかったかもしれないじゃん?」
「信希様に隠し事はしないと決めたので。これが理由ではおかしいですか?」
うーん…どうも引っかかるな…。
「ん-…。ユフィも正直に話してくれているし、オレも率直に意見を言おう。はっきり言って、今のユフィが何を考えているのかオレには理解できないっていうのが率直な意見だ」
「それはごもっともだと思います」
「そうなんだとしたら、ユフィの忠義はどこにあるの?」
「見透かされていますね…。私は、自分よりも強者にお仕えしたいと考えています。ルーファー様に仕えていたのは、あの御方に天賦の才を感じたからです」
「そうか…」
そしてオレは再び自分の思考に集中する。
オレ自身がユフィのような感覚を自分の人生で持っていたことが無いから、当然ながら彼女の心境なんかを想像することもできない。
このまま、ユフィを信用することもできなかったら、みんなと一緒に生活させることすら危険に感じてしまう。
「ま、信希…?」
「とりあえず、そのことも含めて考えさせてくれ。一旦馬車に戻って、今日決まったことをみんなに報告もしたいし…」
「かしこまりました。こんなことを言いましたが、信希様に危害を加えるつもりもありませんし、約束した『秘密』については王にも報告していません」
オレは正直、ユフィの扱いに困ることになりそうだとこれまでに感じたことのない不安に襲われていた。
とりあえずは、何があってもみんなのことを守れるようにしておかないといけない。
「ユフィ、最後に一つだけ。オレと一緒に行動している誰かに、危害を加えるような行動や素振りを見せたら…。確実にオレはユフィの命よりみんなのことを優先させると言っておくよ」
「かしこまりました。肝に銘じておきます」
ユフィはオレの言葉に一切怯んでいる様子なんてなく、はなからそんなつもりは無いといった感じだった。
そんな話をしていると馬車が止まり、宿に着いたようだった。
「到着いたしました」
「ああ。とりあえず、昨日と同じように一旦宿の中に入ろう」
もうすっかり、この馬車に乗り降りするのにも慣れてしまった。
そして、宿の中に入ると店主が話しかけてくる──
「今朝は出発されたお姿が見えなかったのですが…、いつごろ出かけられたのでしょうか…?」
「本当?馬車が迎えに来てくれる予定だったから、少し早めにここを出て自分たちの馬車を確認していたんだけどな?」
店主の言葉に思わずドキリとしてしまった。
そう言われると今朝は自分たちの馬車から、何も考えずに迎えの馬車に乗り込んでいたことを思い出したからだ。
「そうですか…、それは気付きませんでした」
「わざわざありがとうね」
そう告げてから自分たちの部屋へと向かう。
それからはいつも通りに、生活している馬車の中へ向かうことになった。
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