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転機
第九十五話 交渉とは
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オレと王との会話にズカズカと割り込んできて、自分の言いたいことを言いうだけの偉そうなやつは、オレの事を睨みながら不満そうにしている。
「なぁ、あんた。もしかして、オレが獣人の子供たちを助けようとすると不都合なことでもあるのか?」
「何を言っているのだ!我々がどうして獣人を助けなければならないのだ!?獣人たちは獣人たちでどうにかすればいいだけのこと!」
我々ねぇ…。オレは国王に『してほしい』としか告げていないのにな。どんどん自分の首を絞めていることにすら気付かないなんて、国営に関わる者にあるまじき行為だな。
「だからそういう『施設を作らないか?』という提案を王にしているつもりなんだがな?」
「ふんっ!己が利益を得るために我々を利用しようと思っているのだろう!そんなことには騙されぬぞ!」
「あんたは随分偉そうだな?王の会話に割り込むのがこの国の礼儀か?」
「黙っていろ!何も知らないやつが!!」
「そこまで言うなら、あんたらの屋敷を調べさせてくれないか?そうしたら見られたらまずい物とか出て来るんじゃないのかなぁ?」
「貴様ぁ!失礼にもほどがあるだろうが!」
「そうだ!黙って聞いていれば、何様のつもりだ!」
「忙しい我々を集めるだけでも大変な労力なのだ!それなのに獣人の話など、笑わせてくれる!!」
よしよし、いい感じに釣れてるな。
オレは声をあげているヤツを確認するために魔法を使っていく。喋っているヤツを分かりやすくしているだけなので、特に難しいというわけではなかった。
「そもそも、ここに来たのは御使いの役目でもあるんだがなー」
「黙れ!身の程もわきまえず、偉そうに!!」
「部外者は引っ込んでいればいいのだ!」
その後も、オレが発言するたびに罵詈雑言がひどくなり、先ほどまでの静かな会場とはとても思えない状況になっていく。
「ま、信希これは…」
「流石にまずそうだが…」
「なぁ、王様よ。これくらいで十分か?」
オレの言葉にコクリと頷く王様。
「はぁ、この貸しは高くつくぞ?」
「心得ている」
オレは騒がしくなった会場で、声をあげている奴らに加えてオレに向けて反抗的な態度をとった連中に向けて魔法を発動させる。
簡単なことだ。動けないように空中へ持ち上げていく。ただそれだけの事だが、オレの力を示すには十分すぎたみたいだった。
「「なんだこれはぁああ!!」」
ざっと三十人ほどだろうか、オレの力を使い『邪魔』になるやつを選別した。
空中に浮かび上がらせると同時に、叫び声で会場はパニックになっていく。
「黙れよ」
深く響くように拡大されたオレの声が、会場全体に響いていく。
そして、浮かび上がっている奴らは喋れないように口を強引に塞いでいく。
「これで喚くヤツはいなくなったな。静かに話をしようじゃないか」
「信希様の願いはそれだけなのだろうか…?」
「いや、まだあるな。こいつらが居たことで、より確信に近づいた。この国では奴隷売買が行われているんじゃないのか?」
「ま、まさかっ──」
「本当にそんなことがっ?」
周囲からそんな声がこぼれている。
王を睨みつけるが、オレの視線には恐怖を感じていないのか真っすぐに見つめ返して──
「情けない話です…。借金を負わされたり男を殺したりと、様々な手段を使い獣人たちを奴隷にしていた連中がいます」
「そうだよな…」
この王様はやっぱりわかっていた。これまでの行動から、この答えを見つけるのは多分難しい…。オレが本気でケモミミ様の事を考えていなかったら、道筋すら見えていないだろう。
「吊り上げたやつら全員か?」
「そ、その通りです。私が確認できていない人物も混じっていますが…」
「なるほどな。だけど、この人数が居なくなったら流石に国の運営がうまく行かなくなるよな?」
「…難しい…と思いますが…この貴重な機会を逃したら、この先この国に本当の平和が訪れることはありませんっ!どうか、信希様にもご助力いただきたく!!」
この王様は、本当に王様をしているんだと思ってしまった。
その必至に頭を下げる姿に、オレは獣人のためでもあるがこの王様になら手を貸してあげてもいいとすら思えた。
「分かったよ。出来る限り力を貸そう、こいつらの処分は?」
「私に考えがあります。お任せください、必ずこの国に立ち入ることも出来ないように致しますので」
「分かった。細かい話は別の所でしようか」
「かしこまりました」
何とかうまく行ったな…。
この王様は本当に賢い人間かも知れない。
オレの事すらも利用して、自分の国に溜まっていた邪魔な奴らをまとめて吊り上げてしまったんだからな。
獣人の事もあるから、オレが力を貸すことも踏まえて奴隷売買を行っている貴族を一括処分するなんて…。ここまで上手くいくとは思っていなかったが、貴族連中が馬鹿で助かった。
「ふぅ…。本当にやれやれだな」
「何がどうなったんですか…?」
「ワシにもさっぱりじゃな」
「信希はここまで読んでいたいのか…?」
「大臣、采配は任せても良いか?」
「人数が減っております故…、ある程度の指示をいただけると…」
「時間なら大丈夫だ。出来るだけ早くしてくれれば問題ないよ」
大臣に語り掛ける王がオレの方へ確認してくるので、もうどうにでもなれとばかりに返事をしていく。
「ならば、信希様の話に大臣の補佐、教育関係者全員、それから手筈を整えていた教会の人たちを呼んでくれ!応接会議室を使う!すぐに準備せよ!
残りの者たちは、信希様が晒してくれている連中の対処にあたってもらう!全員独房へ搬送させよ!一人も逃がすことは許さん、騎士を呼び徹底して搬送せよ!!
それが済み次第、各貴族の屋敷を検める!全員の家族も軟禁状態にするために、大型の倉庫を利用する!王城への出入りが激しくなる、騎士たちには悪いが、休めると思わないでくれ!
獣人への虐待行為を発見させるのだ!今吊り上げている者の中には隠しながら行動している奴もいる、何としても見つけ出すのだ!商会や教育機関への監視も強化させろ!つながりを持つものはこの機に全て処分する!
もしも、奴隷や獣人を見つけた場合には王城へ招き、臨時の住まいを用意させる。場所の指定は大臣に任せる!問題解決までに速やかな行動が求められる、皆よろしく頼むぞ!これは御使い様がくれた好機である!」
すごいな…。この王様だったのなら、獣人の奴隷問題は解決できていそうだけど…。
今の瞬間に、ここまでの事を考えられるものなのか…?もしかして、予めオレが来ることを分かっていて、奴隷問題解決のために動いていたとか…。
流石に考えすぎだよな。
「では、信希様。イレーナ様。ロンドゥナ様。ミィズ様。部屋へ案内します。先ほどのメイドと一緒に行動をお願いします」
「ああ。わかったよ」
すっかりと騒がしくなってしまった会場を後にして、入口でオレたちの事を見て軽く頭を下げているユフィのもとへと向かっていく。
浮かび上がらせている奴らはそのままにしておくことにした。別に魔力を使っているわけでなかったので、各自で下ろしてもらった方が扱いやすいと思ったからだ。
「いやぁ、信希には驚かされるな」
「ええ、一国の内政を壊して作り直そうなんて…」
「いやはや、恐ろしい限りじゃな」
「や、やめてよ…そんなつもりじゃなかったんだから…」
彼女たちがオレに向けている視線は、すっかり怪物を見るものに変わってしまっていて…。
そんな話をしながら入口に到着すると、ユフィがオレたちに近づいてきて──
「応接会議室へ案内いたします。こちらへ」
「ああ、ありがとう…」
はぁ…。なんか思ってたのとは違うけど、ヨーファとカフィンの事は何とかなりそうで一安心といった感じだ…。
これから具体的なことを決めないといけないから、それはそれで大変なんだけど…。
応接会議室へ向かうために、オレたちはユフィの後をついて行く。
──。
「なぁ、あんた。もしかして、オレが獣人の子供たちを助けようとすると不都合なことでもあるのか?」
「何を言っているのだ!我々がどうして獣人を助けなければならないのだ!?獣人たちは獣人たちでどうにかすればいいだけのこと!」
我々ねぇ…。オレは国王に『してほしい』としか告げていないのにな。どんどん自分の首を絞めていることにすら気付かないなんて、国営に関わる者にあるまじき行為だな。
「だからそういう『施設を作らないか?』という提案を王にしているつもりなんだがな?」
「ふんっ!己が利益を得るために我々を利用しようと思っているのだろう!そんなことには騙されぬぞ!」
「あんたは随分偉そうだな?王の会話に割り込むのがこの国の礼儀か?」
「黙っていろ!何も知らないやつが!!」
「そこまで言うなら、あんたらの屋敷を調べさせてくれないか?そうしたら見られたらまずい物とか出て来るんじゃないのかなぁ?」
「貴様ぁ!失礼にもほどがあるだろうが!」
「そうだ!黙って聞いていれば、何様のつもりだ!」
「忙しい我々を集めるだけでも大変な労力なのだ!それなのに獣人の話など、笑わせてくれる!!」
よしよし、いい感じに釣れてるな。
オレは声をあげているヤツを確認するために魔法を使っていく。喋っているヤツを分かりやすくしているだけなので、特に難しいというわけではなかった。
「そもそも、ここに来たのは御使いの役目でもあるんだがなー」
「黙れ!身の程もわきまえず、偉そうに!!」
「部外者は引っ込んでいればいいのだ!」
その後も、オレが発言するたびに罵詈雑言がひどくなり、先ほどまでの静かな会場とはとても思えない状況になっていく。
「ま、信希これは…」
「流石にまずそうだが…」
「なぁ、王様よ。これくらいで十分か?」
オレの言葉にコクリと頷く王様。
「はぁ、この貸しは高くつくぞ?」
「心得ている」
オレは騒がしくなった会場で、声をあげている奴らに加えてオレに向けて反抗的な態度をとった連中に向けて魔法を発動させる。
簡単なことだ。動けないように空中へ持ち上げていく。ただそれだけの事だが、オレの力を示すには十分すぎたみたいだった。
「「なんだこれはぁああ!!」」
ざっと三十人ほどだろうか、オレの力を使い『邪魔』になるやつを選別した。
空中に浮かび上がらせると同時に、叫び声で会場はパニックになっていく。
「黙れよ」
深く響くように拡大されたオレの声が、会場全体に響いていく。
そして、浮かび上がっている奴らは喋れないように口を強引に塞いでいく。
「これで喚くヤツはいなくなったな。静かに話をしようじゃないか」
「信希様の願いはそれだけなのだろうか…?」
「いや、まだあるな。こいつらが居たことで、より確信に近づいた。この国では奴隷売買が行われているんじゃないのか?」
「ま、まさかっ──」
「本当にそんなことがっ?」
周囲からそんな声がこぼれている。
王を睨みつけるが、オレの視線には恐怖を感じていないのか真っすぐに見つめ返して──
「情けない話です…。借金を負わされたり男を殺したりと、様々な手段を使い獣人たちを奴隷にしていた連中がいます」
「そうだよな…」
この王様はやっぱりわかっていた。これまでの行動から、この答えを見つけるのは多分難しい…。オレが本気でケモミミ様の事を考えていなかったら、道筋すら見えていないだろう。
「吊り上げたやつら全員か?」
「そ、その通りです。私が確認できていない人物も混じっていますが…」
「なるほどな。だけど、この人数が居なくなったら流石に国の運営がうまく行かなくなるよな?」
「…難しい…と思いますが…この貴重な機会を逃したら、この先この国に本当の平和が訪れることはありませんっ!どうか、信希様にもご助力いただきたく!!」
この王様は、本当に王様をしているんだと思ってしまった。
その必至に頭を下げる姿に、オレは獣人のためでもあるがこの王様になら手を貸してあげてもいいとすら思えた。
「分かったよ。出来る限り力を貸そう、こいつらの処分は?」
「私に考えがあります。お任せください、必ずこの国に立ち入ることも出来ないように致しますので」
「分かった。細かい話は別の所でしようか」
「かしこまりました」
何とかうまく行ったな…。
この王様は本当に賢い人間かも知れない。
オレの事すらも利用して、自分の国に溜まっていた邪魔な奴らをまとめて吊り上げてしまったんだからな。
獣人の事もあるから、オレが力を貸すことも踏まえて奴隷売買を行っている貴族を一括処分するなんて…。ここまで上手くいくとは思っていなかったが、貴族連中が馬鹿で助かった。
「ふぅ…。本当にやれやれだな」
「何がどうなったんですか…?」
「ワシにもさっぱりじゃな」
「信希はここまで読んでいたいのか…?」
「大臣、采配は任せても良いか?」
「人数が減っております故…、ある程度の指示をいただけると…」
「時間なら大丈夫だ。出来るだけ早くしてくれれば問題ないよ」
大臣に語り掛ける王がオレの方へ確認してくるので、もうどうにでもなれとばかりに返事をしていく。
「ならば、信希様の話に大臣の補佐、教育関係者全員、それから手筈を整えていた教会の人たちを呼んでくれ!応接会議室を使う!すぐに準備せよ!
残りの者たちは、信希様が晒してくれている連中の対処にあたってもらう!全員独房へ搬送させよ!一人も逃がすことは許さん、騎士を呼び徹底して搬送せよ!!
それが済み次第、各貴族の屋敷を検める!全員の家族も軟禁状態にするために、大型の倉庫を利用する!王城への出入りが激しくなる、騎士たちには悪いが、休めると思わないでくれ!
獣人への虐待行為を発見させるのだ!今吊り上げている者の中には隠しながら行動している奴もいる、何としても見つけ出すのだ!商会や教育機関への監視も強化させろ!つながりを持つものはこの機に全て処分する!
もしも、奴隷や獣人を見つけた場合には王城へ招き、臨時の住まいを用意させる。場所の指定は大臣に任せる!問題解決までに速やかな行動が求められる、皆よろしく頼むぞ!これは御使い様がくれた好機である!」
すごいな…。この王様だったのなら、獣人の奴隷問題は解決できていそうだけど…。
今の瞬間に、ここまでの事を考えられるものなのか…?もしかして、予めオレが来ることを分かっていて、奴隷問題解決のために動いていたとか…。
流石に考えすぎだよな。
「では、信希様。イレーナ様。ロンドゥナ様。ミィズ様。部屋へ案内します。先ほどのメイドと一緒に行動をお願いします」
「ああ。わかったよ」
すっかりと騒がしくなってしまった会場を後にして、入口でオレたちの事を見て軽く頭を下げているユフィのもとへと向かっていく。
浮かび上がらせている奴らはそのままにしておくことにした。別に魔力を使っているわけでなかったので、各自で下ろしてもらった方が扱いやすいと思ったからだ。
「いやぁ、信希には驚かされるな」
「ええ、一国の内政を壊して作り直そうなんて…」
「いやはや、恐ろしい限りじゃな」
「や、やめてよ…そんなつもりじゃなかったんだから…」
彼女たちがオレに向けている視線は、すっかり怪物を見るものに変わってしまっていて…。
そんな話をしながら入口に到着すると、ユフィがオレたちに近づいてきて──
「応接会議室へ案内いたします。こちらへ」
「ああ、ありがとう…」
はぁ…。なんか思ってたのとは違うけど、ヨーファとカフィンの事は何とかなりそうで一安心といった感じだ…。
これから具体的なことを決めないといけないから、それはそれで大変なんだけど…。
応接会議室へ向かうために、オレたちはユフィの後をついて行く。
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