92 / 127
再び大国へ
第九十二話 準備
しおりを挟む
良い案も思いつき、そろそろ起きようと体を動かす。
「もう起きますか?」
「そうだね。起きようか」
少しだけ違和感を感じたのでイレーナの方を向いて確認すると、少しだけ名残惜しそうな表情をしていたのが気になった。
せっかく起きようとした体を再びベッドに預けて、イレーナを見つめる。
「信希…?」
「もうちょっとイレーナと一緒に居たくなった」
「え…?」
「今朝はそんなに急ぐ必要は無いし、もう少しゆっくりしていよう」
「ま、まぁ…いいと思いますけど…」
不思議そうにしているイレーナは、自分の気持ちには気づいていないのか?はたまたオレの勘違いか…。まぁ一緒に居るのは至福の時間でもあるから全く問題ない。
「なぁ、イレーナ?」
「はい?」
「もうちょっとハグしたい」
「はぐ?」
「抱きしめるってこと」
「え…?」
お願いしますと言わんばかりに、イレーナへ向けて両手を伸ばしてみる。
最初こそ戸惑っているように見えたけど、少しすると近づいてきてオレの事を抱きしめてくれる。
「ありがとう」
「少しだけですよ…?」
「か、カフィンもぉ…」
ん?あれあれ?聞こえちゃいけない声と言葉が聞こえている気がしませんか…?
「ん?イレーナ?」
「……」
イレーナではないのは既に理解している。だが、彼女は何も言わずに腕の中に居る。
そして、背後からオレの服を引っ張る感覚がある…。
「ね、ねぇ…」
お、オレも男だ…。覚悟を決めるんだ。
イレーナを抱きしめたまま、オレは力を入れてカフィンの方を向くために寝返りをうつ。
「ひゃっ──」
「痛かった?」
「だ、大丈夫です…」
「カフィン?」
「カフィンも『はぐ』したい…」
「こ、こまったな…。オレがいいの?」
「……」
コクリと頷く姿はとても可愛いもので、オレのケモミミ愛が爆発しそうになる…。だけど、先ほどもイレーナに指摘されたばかりで…。
いや、ここはカフィンの気持ちに寄り添うことを優先しよう。
「おいで、ここでもいい?」
「うんっ」
オレはイレーナを抱えたまま、空いた腕でカフィンも抱きしめる。
「あったかぁい…」
「それはよかった」
しばらくの間、二人の女性を抱きしめるという男の夢を体現していたオレだが、流石に居心地も悪くなってくるので起きることにした。
「そろそろご飯にしようか」
「はい。起きましょう」
「はぁーい」
そうして起き上がるために動こうとしたときに、部屋の扉が開く。
「信希さま、朝食はいかがするの──」
「「あ…」」
入口に立つユリアとオレたちの視線がばっちりと交差する。
「ズルいのじゃ…まさか子供たちの前でも…」
「ちょ、ちょ、ユリア!今起きるところだったんだ」
「じいぃー……」
今日はえらくジト目をもらう日だな…。
「ゆ、ユリアもくる…?」
「はいですじゃ」
ユリアはすぐにオレの布団に入ってきて、空いてる所でオレの側に密着してくる。
ひんやりとした空気に触れ、起きたくない気持ちと早くこの状況を抜け出したい気持ちで、自分の思考がおかしくなっているんじゃないかと思った。
「カフィンも居たのかの、信希さまはやさしいじゃろ?」
「うんっ」
「信希、重くないですか…?」
状況で言えば、オレは三人の女性に押しつぶされているような状況とも言える…。
「大丈夫、イレーナの事を重いなんて思ったこと無いよ」
それにこの状況が続くと、少し…いやかなりマズイ状況になる…。
いい匂いがするし、それに女性の香りもしてとてもマズイ…。
別の話をして、そっちに集中して誤魔化さなくては!
「今日、お城には誰が行こうか…」
「ん-、みんなで話した方がいいんじゃないですか…?」
「た、たしかに…」
会話、四秒で終了。
「あ。ユリア、朝食は?」
「まだ、みんな部屋で寝ていますじゃ」
「そ、そっかぁ…」
こっちは三秒…。
「あ。カフィン?今日の朝は何か食べたいものはある?」
「食べられるだけで嬉しい…」
「そ、そう…」
全て数秒で会話が終わるんですけど…?もしかしてオレ…、会話できなくなっちゃった?
「信希さまはこの状況を自分で作っておいて、逃げたくなってるのかの?」
「え、えーと…」
バレちゃった…。
「…」
「…」
誰も何も言わなくなっちゃうし…。なんだこれ…。
そうだ。いっそ開き直って眠ることにしよう。
──。
結局眠ることなんてできるはずもなく、しばらくの間みんなを抱きしめ抱きしめられることになっていた。
「そろそろ起きようか」
「はい」
「はーい」
「洗面とお手洗いに行きますじゃ」
「あー。カフィンもお願いしてもいい?」
「もちろんじゃ。カフィンよこちらにおいでな?」
「うん」
カフィンはユリアにも懐いているみたいだった。ユリアは子供の事が好きなのかな?これまでの印象だったら、特別に子供が好きという印象は無かったが…。
それ以前にこのメンバーの中に、少しでも子供が居たことは無いか。
「じゃあ、ワタシも行って来ます」
「うん。オレはヨーファを起こして、洗面を済ませてからキッチンに行くよ」
そうして長い夜は終わって、オレたちは王城へ向かうための準備を進めて行くのだった。
──。
「もう起きますか?」
「そうだね。起きようか」
少しだけ違和感を感じたのでイレーナの方を向いて確認すると、少しだけ名残惜しそうな表情をしていたのが気になった。
せっかく起きようとした体を再びベッドに預けて、イレーナを見つめる。
「信希…?」
「もうちょっとイレーナと一緒に居たくなった」
「え…?」
「今朝はそんなに急ぐ必要は無いし、もう少しゆっくりしていよう」
「ま、まぁ…いいと思いますけど…」
不思議そうにしているイレーナは、自分の気持ちには気づいていないのか?はたまたオレの勘違いか…。まぁ一緒に居るのは至福の時間でもあるから全く問題ない。
「なぁ、イレーナ?」
「はい?」
「もうちょっとハグしたい」
「はぐ?」
「抱きしめるってこと」
「え…?」
お願いしますと言わんばかりに、イレーナへ向けて両手を伸ばしてみる。
最初こそ戸惑っているように見えたけど、少しすると近づいてきてオレの事を抱きしめてくれる。
「ありがとう」
「少しだけですよ…?」
「か、カフィンもぉ…」
ん?あれあれ?聞こえちゃいけない声と言葉が聞こえている気がしませんか…?
「ん?イレーナ?」
「……」
イレーナではないのは既に理解している。だが、彼女は何も言わずに腕の中に居る。
そして、背後からオレの服を引っ張る感覚がある…。
「ね、ねぇ…」
お、オレも男だ…。覚悟を決めるんだ。
イレーナを抱きしめたまま、オレは力を入れてカフィンの方を向くために寝返りをうつ。
「ひゃっ──」
「痛かった?」
「だ、大丈夫です…」
「カフィン?」
「カフィンも『はぐ』したい…」
「こ、こまったな…。オレがいいの?」
「……」
コクリと頷く姿はとても可愛いもので、オレのケモミミ愛が爆発しそうになる…。だけど、先ほどもイレーナに指摘されたばかりで…。
いや、ここはカフィンの気持ちに寄り添うことを優先しよう。
「おいで、ここでもいい?」
「うんっ」
オレはイレーナを抱えたまま、空いた腕でカフィンも抱きしめる。
「あったかぁい…」
「それはよかった」
しばらくの間、二人の女性を抱きしめるという男の夢を体現していたオレだが、流石に居心地も悪くなってくるので起きることにした。
「そろそろご飯にしようか」
「はい。起きましょう」
「はぁーい」
そうして起き上がるために動こうとしたときに、部屋の扉が開く。
「信希さま、朝食はいかがするの──」
「「あ…」」
入口に立つユリアとオレたちの視線がばっちりと交差する。
「ズルいのじゃ…まさか子供たちの前でも…」
「ちょ、ちょ、ユリア!今起きるところだったんだ」
「じいぃー……」
今日はえらくジト目をもらう日だな…。
「ゆ、ユリアもくる…?」
「はいですじゃ」
ユリアはすぐにオレの布団に入ってきて、空いてる所でオレの側に密着してくる。
ひんやりとした空気に触れ、起きたくない気持ちと早くこの状況を抜け出したい気持ちで、自分の思考がおかしくなっているんじゃないかと思った。
「カフィンも居たのかの、信希さまはやさしいじゃろ?」
「うんっ」
「信希、重くないですか…?」
状況で言えば、オレは三人の女性に押しつぶされているような状況とも言える…。
「大丈夫、イレーナの事を重いなんて思ったこと無いよ」
それにこの状況が続くと、少し…いやかなりマズイ状況になる…。
いい匂いがするし、それに女性の香りもしてとてもマズイ…。
別の話をして、そっちに集中して誤魔化さなくては!
「今日、お城には誰が行こうか…」
「ん-、みんなで話した方がいいんじゃないですか…?」
「た、たしかに…」
会話、四秒で終了。
「あ。ユリア、朝食は?」
「まだ、みんな部屋で寝ていますじゃ」
「そ、そっかぁ…」
こっちは三秒…。
「あ。カフィン?今日の朝は何か食べたいものはある?」
「食べられるだけで嬉しい…」
「そ、そう…」
全て数秒で会話が終わるんですけど…?もしかしてオレ…、会話できなくなっちゃった?
「信希さまはこの状況を自分で作っておいて、逃げたくなってるのかの?」
「え、えーと…」
バレちゃった…。
「…」
「…」
誰も何も言わなくなっちゃうし…。なんだこれ…。
そうだ。いっそ開き直って眠ることにしよう。
──。
結局眠ることなんてできるはずもなく、しばらくの間みんなを抱きしめ抱きしめられることになっていた。
「そろそろ起きようか」
「はい」
「はーい」
「洗面とお手洗いに行きますじゃ」
「あー。カフィンもお願いしてもいい?」
「もちろんじゃ。カフィンよこちらにおいでな?」
「うん」
カフィンはユリアにも懐いているみたいだった。ユリアは子供の事が好きなのかな?これまでの印象だったら、特別に子供が好きという印象は無かったが…。
それ以前にこのメンバーの中に、少しでも子供が居たことは無いか。
「じゃあ、ワタシも行って来ます」
「うん。オレはヨーファを起こして、洗面を済ませてからキッチンに行くよ」
そうして長い夜は終わって、オレたちは王城へ向かうための準備を進めて行くのだった。
──。
0
お気に入りに追加
214
あなたにおすすめの小説

ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした
高鉢 健太
ファンタジー
ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。
ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。
もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。
とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!
異世界で穴掘ってます!
KeyBow
ファンタジー
修学旅行中のバスにいた筈が、異世界召喚にバスの全員が突如されてしまう。主人公の聡太が得たスキルは穴掘り。外れスキルとされ、屑の外れ者として抹殺されそうになるもしぶとく生き残り、救ってくれた少女と成り上がって行く。不遇といわれるギフトを駆使して日の目を見ようとする物語

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

俺は善人にはなれない
気衒い
ファンタジー
とある過去を持つ青年が異世界へ。しかし、神様が転生させてくれた訳でも誰かが王城に召喚した訳でもない。気が付いたら、森の中にいたという状況だった。その後、青年は優秀なステータスと珍しい固有スキルを武器に異世界を渡り歩いていく。そして、道中で沢山の者と出会い、様々な経験をした青年の周りにはいつしか多くの仲間達が集っていた。これはそんな青年が異世界で誰も成し得なかった偉業を達成する物語。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる