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再び大国へ

第八十話 お肉なごはん

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「じゃあ次はごはんっ!?」



 そんな元気のいいシアンの声を聞き、自分もずいぶんとお腹が空いていることに気付いた。



「うん。じゃあお肉の店を探そうか」



 この国に着いてから始めにやっておきたいことは終わったので、シアンは待ちに待ったごはんといった感じで、嬉しそうにケモミミと尻尾を動かしてお肉の店を探している。



「どんな店を選べばおいしい食事にありつけるかな」

「そうですね…あまり気にしたことがないので…」



「ではっ、わたくしにまかせてくださいですのっ!」



 ふんっ!という効果音が聞こえてきそうな勢いのメキオンが、飲食店の見分けのコツを教えてくれるみたいだ。



「そういったことにも詳しいんだ?」

「ええ。もちろんですの。国を率いていた身としては、国民のやる気にもつながる大切なことですの」



「なるほどな…。それで、この国でも分かりそう?」

「はいですの、既にいくつか候補は上がっておりますの」



 すごいな。メキオンの観察力と国家運営の知識には、本当に感心させられっぱなしだ。



「ごはんっ、ごはんっ!」

「楽しそうだね?」



「うんっ!」



 そんな会話は聞こえていないのか、シアンはご飯の事に夢中みたいだった。



「それで、メキオン。どんな特徴を見ればいいの?」

「まずは店舗の外観ですの。案外軽視される方も多いのですけれど、やはり見た目にお金をかけているところは、それなりに余裕のある経営をしておりますの。もちろんそれだけで判断するのは危険ですの、時間をかけても良いのであれば客層なんかを見ると、ほぼほぼ確定しているみたいなものですの」



「客層?それって自分の行きたい店によるんじゃないの?」

「もちろんそうですの。ですけれど、安価なお店の場合なら平民の方や冒険者や他国の方が多く利用しておりますの。逆に良い料理を提供しているお店は、装いだけでお金を持っているのが分かる人が多く利用しておりますの。あとは、当然ながら人が多く利用しているところが『おいしい』の基本ですの」



「なるほどなるほど」



 言われてみればどれも当然のような気もするけど、日常的に飲食店をそんな見方をしてこなかったオレとしては、少しだけ新鮮な感覚だった。



「じゃあ、まずは安価でいっぱい食べられる店に入ってみようか」

「信希様は流石ですの」



「え?何が?」

「まずは安価な食べ物から調査するのは基本ですの」



「そんなつもりじゃなかったんだけど…まぁいいか…」



 メキオンが色々と教えてくれる間に、移動しながら飲食店が多く並んでいる区画まで来られたので、賑わっていそうな肉を扱うを探してみる。



「あそこなんてどう?」

「良いかもしれませんの」



「あっ…。そういえばメキオンは安価な食事でもいいの?やっぱり貴族用とかが…?」

「構いませんの、皆さんとの食事も何度も食べてきていますし、あまり堅苦しいのは好きではありませんの」



 困ったような表情で笑って見せる彼女は、本当に一国の王女なのだろうかと思わせるような雰囲気があった。



「わかった。じゃあ食事にしよう」

「「はーい」」



 九人ほどで座れるだろうかと少しだけ不安になって店を覗いてみたが、大人数用のテーブルも多く用意されていて、外見からは想像できないくらいに店の中は広かった。



「よーし。いっぱい食べていいからねー?」

「おーっ!」

「お、お酒も…」



 そうして、各々が食べたいものを注文して、ぞくぞくと料理が運ばれてきた。



「うまそうだな。いただきます」

「「いただきまーす!」」



 どの料理もとても美味しかった。

 肉も付け合わせもサラダもスープも、いろんな種類を食べられたがどれも満足いく仕上がりの料理ばかりで、この店には何度通ってもいいなと思うくらいには満足のいく食事だった。



 特に肉は美味しかった。

 これまでに食べたことのない肉料理だったが、いったいどんな生物の肉を使用しているのか気になった。名前を見ているだけではどんな生物なのか想像するのも難しいからな…。

 牛や豚や鶏肉とも違い、臭みや癖が少なく肉本来の味がしっかりと感じられて色々な肉のいいとこどりみたいだと感じた。



「みんなもおいしそうで何よりだ」

「おいしーっ」

「お酒もおいしい!」



 ポミナは本当に酒が好きだな…。隙さえあれば飲んでいるのではないかとすら思ってしまう…。



 他のみんなも、楽しそうに酒と食事を楽しんでいた。

 やっぱり、便利になったとはいえ馬車の中で食べていた食事とは別物だなと実感させられた。

 楽しんでいる皆を眺めているのは、これはこれで楽しいものだ。



 ──。



 しばらくの時間食事を楽しんでいたので、外はすっかりと暗くなっていた。

 いい感じに満腹になってこれまでの疲れが一気に押し寄せてきたのか、眠気が随分と強くなってきた。



「そろそろ宿に戻って休憩しようか」

「そうですね。もう歩いている人も少なくなってきましたし、そろそろ戻った方がいいかもしれません」



 ──。



 その日は、そのまま宿に戻って休むことになった。

 結局のところみんな馬車の方が寝心地が良かったみたいで、一度部屋に行ったものの全員で馬車の中へ移動することになってしまった。



「なんか申し訳ないよね」

「信希がそれを言うんですね?こんな良い馬車を作っておいて」



「少しだけ…少しだけ反省してるよ?」

「そのおかげで良い生活が出来ているので、強くは言えませんね」



「そう言ってもらえると助かる…」



「もう寝ますか?それとも、オセロで勝負してくれますか…?」

「する?少しだったら相手になりましょうぞ」



「よーし、みんなで勝負するぞ!」



 相変わらずみんなはオセロが好きみたいだ。他にもいろいろボードゲームを作れるけど…、作ったりしたらそれこそガチの引きこもりの誕生に加担することになるかもしれないから、これからゲームを作るときには注意しておこう…。



 それから、みんなが眠たくなるまでオセロ大会は続いていた。



 ──。

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