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再び大国へ

第七十九話 街並み

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 素材の売却と必要な買いものをした後に食事をするため、みんなで街の中へ繰り出すことになった。



「ボクが信希のとなりっ!」

「ああ。いいよ」



 移動が決まった瞬間に、凄まじい勢いでシアンがオレの腕に飛びついてきた。

 先日の一件以来、シアンの甘え方が激しくなっている気がする。まぁ、可愛いし全然問題ではない。むしろ最高だと言える…。それに、他のみんなが嫉妬したりするのかなとも思ったが、みんなはそういった感情はないみたいだった。



 宿を後にして、店主に聞いた商会の方へと向かっていく。

 馬車の扱いに集中していたせいで、この街をあまり見れていなかったのでどんな街並みなのか気になっていた。



「やっぱりというか、ローフリングとは結構違うよな」

「そうですね。その国とかの特徴が街並みにも影響しているような様子がうかがえますね」



「とても綺麗な街並みですの。歩いている人たちも活気にあふれていますの」

「そうだね。今見ている感じだととても良い国なんだろうなって思うよ」



 元居た世界の知識をもってしても、こんな街並みは無かったのではないだろうか…。

 一見フランスのような見た目に感じるが、大通りには屋台などが出店していて、建物の一階には店舗がちらほら並んでいる。大通りに面している建物には生活に必要な店が多く、屋台には食べ物やアクセサリーなどに加え、別の国から仕入れているような行商人たちが集まっていたりと、様々なものを見ることが出来た。



「おいしそうな匂いもするし、ごはんが楽しみだねっ!」

「ああ。シアンはどんなものが食べたい?」

「ん-…。やっぱりお肉かも!」

「じゃあ夕飯はお肉にしようね」

「おーっ!」



 シアンは相変わらず食事に敏感なようで、オレには感じられないような匂いを体験しているのかと思うと少しだけ羨ましくなってしまった。

 少しだけ?肉を焼くような匂いを感じるが、これが本当に肉を焼く匂いかは分からない程度だから、シアンの嗅覚には驚かされるばかりだ。



「みんなもそれでいいかな?」

「「問題なーし」」



 お肉が沢山食べられる店が見つかるといいな。



「あそこじゃないですか?」

「かな?行ってみよう」



 ローフリングとは見た目が違うので、場所を聞いていてもどこが商会なのか分かりずらかった。

 イレーナはどんなことで判断しているのか分からないが、彼女の教えてくれた場所が素材回収をしてくれる商会みたいだった。



「あ!」

「ど、どうしたのイレーナ?」



 ささっと、駆け寄ってきたイレーナがオレの耳元で──



「素材は居空間収納の魔法具に入ってますよね…?」

「あ…」



 異空間収納の魔法具を作って、それまで馬車の中にあった素材やそれから追加で狩りをしたときに出た素材を、魔法具の中にしまっていたのをすっかり忘れていた。

 便利な生活に慣れすぎていて、この世界の常識を忘れてしまっていた…。イレーナも気付かなかったくらいだし、彼女もオレの行動に毒されているのかもしれない…。



「普通に出したらまずいかな?」

「持っている人もいますが…、大手の商会だったり貴族の人だったりと勘違いされる可能性もあります…」



「あんまり目立ちたくないよな」

「そうですね…。すみません、気づかなくて…」



「謝らないでくれ、そもそもこんなの作っちゃったオレのせいだからさ」

「お困りでしたら、認識阻害を使ってはいかがですの?」



 話を聞いていたのか、メキオンがそんな提案をしてくれる。

 自分の魔法適正でもあるからか、どういう使い方をすれば便利なのか良く把握しているなと感心させられてしまう。



「そうしようか。メキオンありがとうね」

「いえいえ、構いませんの。使うタイミングと解除するタイミングは気を付けて、見てる人が居ない瞬間を狙うと自然な印象を与えることが出来ますの」



「わかった。やってみるよ」



 メキオンに言われたように魔法を実行していく。

 これまでに魔法を使って慣れてきているのもあるだろうが、すんなりと認識阻害を使うこともできるようになっている。

 周囲からの視線が集まらくなったことで、認識阻害の魔法が上手く発動していると判断できたので、異空間収納を起動させて素材を取り出していく。

 素材はそれほど量が多いというわけではなく、数人で持ち運べる程度だったのでそのままみんなに渡していく。



「よし、じゃあ行こう」

「交渉はワタシに任せてください」



 ローフリングの時に素材の売却をしてくれて、一番安心できるイレーナに今回もお願いすることにした。

 商会の中に入ると、一瞬だが多くの視線が集まって怖くなってしまった。たったこれだけの素材を売りに来る人たちは少ないのだろうか…。

 素材を売却用受付に全て渡して、イレーナが交渉してくれているのでオレたちは出口付近で集まって待っていることにした。



 ──。



 しばらくして、イレーナが手続きを終わらせてこちらへ向かってくる。



「大丈夫そう?」

「はい。特に問題はありませんでした。全部で金貨が四十枚くらいになったので、信希に渡しておきますね」



「あれ?そんなにいい素材だったりするの?結構な金額じゃない?」

「そうですね…。どの素材も希少というわけではありませんが、解体や保存状態がいいのが気に入ったみたいで、少しだけ上乗せしてくれたみたいです」



「なるほどね。流石だなイレーナに任せてよかった」

「いえいえ。次は魔法具店ですね」



 そのまま商会を後にして、この近くにあると言われていた魔法具店へ向かっていく。



「水晶を買うときにさ、数チームに分かれて少数ずつ購入してくれないか?怪しまれると一番面倒なのが魔法関係だからね」

「わかりました。三つずつを三回に分けて購入しましょう」



「どのくらい準備しておけば安心だろうか…」

「個数を指定してないんですよね?だったら、三十個ほどでいいのではないでしょうか…?」



「そうだね。足りなかったら追加できるようにしよう」



 大量に購入しすぎても怪しまれるだけだからな。そこそこにしておいて、少しずつ仕入れが出来るようにしておくのがいいかもしれないな。



 そうこう話している間に、魔法具店がいくつか並んでいるところまで来たので、手分けして水晶を購入していくことにした。



 ──。

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