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目的の旅
第五十三話 馬車魔改造計画Ⅰ
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今日の御者担当は、ずっとオレになるみたいだった。
イレーナの隣に居られるのは嬉しいが、どこかみんなが気を使ってくれている気もする…。
イレーナとは他愛ない会話をしつつ、時には馬の事などの御者に必要なことも教えてくれていた。
オレも馬車を扱いだしてそれなりに時間も経過してきたおかげか、会話ができるくらいには余裕が生まれていた。
それもこれもイレーナが選んだ馬たちがいい子だからかもしれないが。
「そうだ。イレーナ?昨日作ったって言った魔法具を見てほしいんだけど」
「そういえば言っていましたね」
「これなんだけど、鑑定の水晶を使えば全部調べられたりするかな?」
「見てみますね」
オレは鞄の中に入れていた、魔法を刻んだ五つの水晶をイレーナに渡す。
「これが鑑定だったと思う」
「はい」
それぞれの水晶に特徴があるので、作った本人であればすぐに見分けがつくのは結構便利だなと感じた。
「…」
イレーナはオレから受け取った鑑定の水晶で、他の水晶を調べていった。
「どう?一応ちゃんと発動したんだけど」
「信希…」
「ん…?」
「どの魔法具も金貨にすれば、百枚を超えるようなレベルの代物ばかりです…」
「そりゃあ…すごいな…?」
「もう…。特にこの異空間収納はとんでもないです。話にも聞いたことがないくらいに巨大な収納量のようですし…」
「あれ?でもローフリングにも似たようなのがあったよね」
「普通に金貨五十枚程度で買えるものは五十センチ四方くらいの空間ですよ…?」
「やっべぇ…。詳しく覚えてないけど何十倍かありそうだね…?」
「間違いなく国宝になったり戦争が起こるくらいの魔法具ですね」
「な、内緒にしておこう…」
「そもそも異空間収納の魔法具を作ることは出来ないとされているのに…」
「え?でも売ってたよね」
「あれは迷宮の宝箱の中から入手したり古代の遺跡に奉納されていたり、一部の集落で国宝などとして扱われている大切なものです」
「な、なんてこっちゃ…」
やっぱりイレーナに確認してから作ればよかったな…。きっとまた怒られてしまう…。
それにこの世界には、まだまだオレの知らない知識もあるみたいだ。
「信希?この五つの魔法具はワタシたちの前以外で使っちゃダメですよ?」
「…え?怒らないの…?」
「怒ったりしませんよ…。せかっく頑張って作ったんでしょうから、使いたいでしょう?」
「あ、ああ。そうだね…」
思っていた反応とは違っていたイレーナの言葉に少しだけ動揺してしまう。
「今度からはちゃんと相談して作るようにするよ」
「作るのはやめないんですね…」
「ダメかな…?」
「ワタシたちにも使える便利なものがいいです」
「分かった!考えてみるよ」
イレーナは元からこんな性格だったのかもしれない。これまでのオレの態度とかで怒られているように感じていただけかもな…。
「これはオレがやってみたいだけなんだけど…」
「…?」
これは流石にみんなの許可を取らないと、やっちゃまずいだろうと思っていた。
「馬車の魔改造をしたいんだけど」
「何かそんなことを以前に言っていましたね…?」
「そうなんだよ!馬車の魔改造なんて夢が詰まっている─!」
「どんな風に改造するんですか?」
実際まだこうしたいっていう理想がいくつかあるだけだったので、突然言われると…。一応確認も兼ねて考えてみるか。
「そうだね、とりあえず馬車の中の空間を拡張させたいな。広くすれば、そのまま馬車の中で生活できるようになると思うんだ」
「なっ…また、とんでもないことを…」
「空間拡張のこと…?」
「そうです。そもそも聞いたことすらありませんけど、間違いなく存在しないことをやろうとしていると思います…」
「異空間収納が作れたから行けそうな気もしてるんだよね」
「…」
じぃーっという声が来そうな勢いで、イレーナがオレのことを見ている…。
「も、もしもそれが可能だったら、馬車の中にベットとかお風呂とかも作りたいなって」
「はぁ…」
「それにそれに、中の空間が広がった分重量も重くなるだろうから、馬車全体の強度向上に加えて、馬車の下部に重力反転のようなシステムを構築して、人間でも簡単に運べる超軽い馬車!なんてのはどうだろう」
こういったことを考えるのはとてもワクワクするな!
「そうだ、ちゃんと換気問題も解決しないとな。だとしたら、キッチンも作れるんじゃないか?もしかして冷蔵庫も作れちゃったり…。空調システムはどんな構造だったっけ。いやいや待つんだ、本当にエアコンが必要か?そうだな…、この世界の事はそこまで詳しくないから暑かったり寒かったりする国もあるかもしれない…。だったらエアコン、暖房器具、全部屋床暖房は完備したいな。そうだ!一番大切なトイレも忘れちゃあいけないな、処理をどうするのかが問題になるけど…別空間に移して肥料化させれば捨てるのも簡単じゃないか?やっぱりエコ意識は大切だろうし─」
「ま、信希…?落ち着いて…」
オレの袖をくいくいと引っ張る感覚があったので、オレは馬車の魔改造計画が停止させられる。
「あ…」
「そ、その何を言っているのかわかりません」
「もしかして、暴走してた?」
「ええ、はっきりと」
いつもの悪い癖が出てしまっていたようだ…。
優しいイレーナの言葉に我を忘れて妄想の世界に行ってしまっていた。
「とりあえず、馬車を動かしている時は危険ですから…あとでゆっくり考えましょう?」
「そ、そうだね。ごめん」
「やりすぎないようしてくださいね?改造した馬車で戦争が起きるかもしれませんよ」
「わ、分かってるって…安心して?」
「これっぽっちも信用できません…」
流石に無理もないかもしれない…。つい先ほど自分が思い描いていた馬車があったのならとんでもないことだ。
他にもまだまだ改造する余地があるかもしれないなと思いつつも、今は御者に集中して、時間の取れる夜にみんなともう少し考えてみようと考え野営の時間が楽しみになる。
──。
イレーナの隣に居られるのは嬉しいが、どこかみんなが気を使ってくれている気もする…。
イレーナとは他愛ない会話をしつつ、時には馬の事などの御者に必要なことも教えてくれていた。
オレも馬車を扱いだしてそれなりに時間も経過してきたおかげか、会話ができるくらいには余裕が生まれていた。
それもこれもイレーナが選んだ馬たちがいい子だからかもしれないが。
「そうだ。イレーナ?昨日作ったって言った魔法具を見てほしいんだけど」
「そういえば言っていましたね」
「これなんだけど、鑑定の水晶を使えば全部調べられたりするかな?」
「見てみますね」
オレは鞄の中に入れていた、魔法を刻んだ五つの水晶をイレーナに渡す。
「これが鑑定だったと思う」
「はい」
それぞれの水晶に特徴があるので、作った本人であればすぐに見分けがつくのは結構便利だなと感じた。
「…」
イレーナはオレから受け取った鑑定の水晶で、他の水晶を調べていった。
「どう?一応ちゃんと発動したんだけど」
「信希…」
「ん…?」
「どの魔法具も金貨にすれば、百枚を超えるようなレベルの代物ばかりです…」
「そりゃあ…すごいな…?」
「もう…。特にこの異空間収納はとんでもないです。話にも聞いたことがないくらいに巨大な収納量のようですし…」
「あれ?でもローフリングにも似たようなのがあったよね」
「普通に金貨五十枚程度で買えるものは五十センチ四方くらいの空間ですよ…?」
「やっべぇ…。詳しく覚えてないけど何十倍かありそうだね…?」
「間違いなく国宝になったり戦争が起こるくらいの魔法具ですね」
「な、内緒にしておこう…」
「そもそも異空間収納の魔法具を作ることは出来ないとされているのに…」
「え?でも売ってたよね」
「あれは迷宮の宝箱の中から入手したり古代の遺跡に奉納されていたり、一部の集落で国宝などとして扱われている大切なものです」
「な、なんてこっちゃ…」
やっぱりイレーナに確認してから作ればよかったな…。きっとまた怒られてしまう…。
それにこの世界には、まだまだオレの知らない知識もあるみたいだ。
「信希?この五つの魔法具はワタシたちの前以外で使っちゃダメですよ?」
「…え?怒らないの…?」
「怒ったりしませんよ…。せかっく頑張って作ったんでしょうから、使いたいでしょう?」
「あ、ああ。そうだね…」
思っていた反応とは違っていたイレーナの言葉に少しだけ動揺してしまう。
「今度からはちゃんと相談して作るようにするよ」
「作るのはやめないんですね…」
「ダメかな…?」
「ワタシたちにも使える便利なものがいいです」
「分かった!考えてみるよ」
イレーナは元からこんな性格だったのかもしれない。これまでのオレの態度とかで怒られているように感じていただけかもな…。
「これはオレがやってみたいだけなんだけど…」
「…?」
これは流石にみんなの許可を取らないと、やっちゃまずいだろうと思っていた。
「馬車の魔改造をしたいんだけど」
「何かそんなことを以前に言っていましたね…?」
「そうなんだよ!馬車の魔改造なんて夢が詰まっている─!」
「どんな風に改造するんですか?」
実際まだこうしたいっていう理想がいくつかあるだけだったので、突然言われると…。一応確認も兼ねて考えてみるか。
「そうだね、とりあえず馬車の中の空間を拡張させたいな。広くすれば、そのまま馬車の中で生活できるようになると思うんだ」
「なっ…また、とんでもないことを…」
「空間拡張のこと…?」
「そうです。そもそも聞いたことすらありませんけど、間違いなく存在しないことをやろうとしていると思います…」
「異空間収納が作れたから行けそうな気もしてるんだよね」
「…」
じぃーっという声が来そうな勢いで、イレーナがオレのことを見ている…。
「も、もしもそれが可能だったら、馬車の中にベットとかお風呂とかも作りたいなって」
「はぁ…」
「それにそれに、中の空間が広がった分重量も重くなるだろうから、馬車全体の強度向上に加えて、馬車の下部に重力反転のようなシステムを構築して、人間でも簡単に運べる超軽い馬車!なんてのはどうだろう」
こういったことを考えるのはとてもワクワクするな!
「そうだ、ちゃんと換気問題も解決しないとな。だとしたら、キッチンも作れるんじゃないか?もしかして冷蔵庫も作れちゃったり…。空調システムはどんな構造だったっけ。いやいや待つんだ、本当にエアコンが必要か?そうだな…、この世界の事はそこまで詳しくないから暑かったり寒かったりする国もあるかもしれない…。だったらエアコン、暖房器具、全部屋床暖房は完備したいな。そうだ!一番大切なトイレも忘れちゃあいけないな、処理をどうするのかが問題になるけど…別空間に移して肥料化させれば捨てるのも簡単じゃないか?やっぱりエコ意識は大切だろうし─」
「ま、信希…?落ち着いて…」
オレの袖をくいくいと引っ張る感覚があったので、オレは馬車の魔改造計画が停止させられる。
「あ…」
「そ、その何を言っているのかわかりません」
「もしかして、暴走してた?」
「ええ、はっきりと」
いつもの悪い癖が出てしまっていたようだ…。
優しいイレーナの言葉に我を忘れて妄想の世界に行ってしまっていた。
「とりあえず、馬車を動かしている時は危険ですから…あとでゆっくり考えましょう?」
「そ、そうだね。ごめん」
「やりすぎないようしてくださいね?改造した馬車で戦争が起きるかもしれませんよ」
「わ、分かってるって…安心して?」
「これっぽっちも信用できません…」
流石に無理もないかもしれない…。つい先ほど自分が思い描いていた馬車があったのならとんでもないことだ。
他にもまだまだ改造する余地があるかもしれないなと思いつつも、今は御者に集中して、時間の取れる夜にみんなともう少し考えてみようと考え野営の時間が楽しみになる。
──。
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