女性経験なしのオレ、夢に見たケモミミ様の居る世界へ転移、神にすらなれる能力をもらっていたみたいだけど、ケモミミハーレムを作ることにします。

たんぐ

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目的の旅

第四十六話 御使いⅠ

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 どれだけの時間そうしていただろうか?



 オレは魔法具の研究と作成に集中しすぎて時間を完全に忘れていた。

 まぁ、魔法具自体は上手に出来て満足だし、あまり時間を気にする必要もないのだけれど、何やら女性陣が密会をしているようなので時間がどのくらい経過しているのかが気になってしまった。



「ん-…、二時間…いや三時間くらいは経ってるか?」



 感覚的にそのくらい経過しているのではないだろうか、焚火の薪も安定した炎になるくらいには時間が経過しているみたいだった。



 それと同時に、少しだけ不安になるようなことを思い出す。



『これからは少し自重してくださいね?』



 イレーナのそんな言葉だった。

 これだけの魔法具を一度に作ってしまったら…。



 オレは背筋が冷えるような感覚を覚える。



「悪いことしている子供かよ…」



 だけど流石にやりすぎたか?

 最初の魔法具『認識阻害』を作った時のイレーナとメキオンの反応と表情を思い出す。



「あの時はかなり驚いているような感じだったよな」



 もしかしたら、教えてもらってすぐに魔法具を作れてしまったことに驚いていたのか?

 …絶対にないな。



「もしかしなくてもやりすぎたかも…」



 またイレーナを怒らせて嫌われてしまうかもしれないという不安が脳裏をよぎる…。



「ど、どうしよう…」



 自分の欲に忠実になってしまったことに後悔しつつ、これからどうするかを考えようとしていた時に、天幕の中から女性たちが出てきた。



「信希、一人で見張りをさせてすみません」

「い、いや!大丈夫だよ?」



 自分でも明らかに動揺しているのが分かるほどにおかしな返事になってしまう。

 気取られないように気を付けないと…。



「独り言を言っていましたか?少し信希の声が聞こえていたような気がしたような」

「聞こえてた?少しだけ魔法具の研究をしてみたんだ」



「…」



 ジトっとしたようなイレーナの視線がオレに突き刺さる。



「あっ…」



 完全にやっちまった。

 ケモミミ様に出会ってから、ケモミミ様には正直にあろうとした自分の考えが裏目に出てしまった。



「そ、そんなに大したものは作れなかったから!やっぱり難しいよ!」



 少しの時間イレーナの視線に晒されつつ、いたたまれない気持ちになり謝るか?などと考えていると─



「まぁいいです。それよりも信希に大切な話があります」



 なんとか許されたみたいだ…。どこか諦められたような気もするが…。



「は、話…?」

「はい、信希にとっても重要なお話です」



「わかった、とりあえず座って話す?」

「そうですね」



 オレの言葉に促されるように、女性たちが焚火の周りに集まり座る形となった。

 これまでのイレーナとはどこか違うような、何かを覚悟したようなそんな表情を浮かべる彼女に再度聞いていく。



「それで、どんな話をするの?」

「信希自身の話ですね…」



「オレの話か。でも、オレの知っていることは大体全部話してると思うけど?」

「ええ、そうですね。ですが、ロンドゥナさんの話を聞く限りどうやら信希は少し特殊と言いますか…。そういう状況にあるのです」



 どこか歯切れが悪いような喋り方をするイレーナは、オレに何かを隠したいのではないか?と感じさせるような話し方をしている。



「それは、オレが聞いておかないとダメなことなの?」

「…多分そうなんだと思います。この話をしてくれたのはロンドゥナですから…。あとの説明をお願いできますか?」



 少しだけ悲しそうな表情を浮かべるイレーナはロンドゥナを見つめて告げていく。



「ああ、もちろんだとも。信希、私の見立てだがあなたは『御使い様』じゃないのか?」

「…御使い様?」



 オレは、これまでに聞いたことのない単語に妙な違和感を感じる。



「御使い様は、この世界の神たちから『役目』を与えられて、この世界の救ったり変えることを目的に神から呼ばれる者のことをいう」

「え…?」



「皆から聞いた話だと、信希が御使い様かどうか判断するのが難しくてな。だから信希に直接聞こうと提案させてもらった」

「な、なるほど…?」



 オレはかなり困惑していた。

 ロンドゥナやイレーナがこの話を話題にしてから、他のみんなにも緊張感が走っているのが理解できるから…。

 いつもはなんとなく話を聞いてるんじゃないかと思っていたシアンやレストも真剣にオレを見つめて『その』答えを真剣に考えているようだったから…。



 だが、オレに御使い様?なんて自覚は無いし、どう答えたらいいのかも分からない…。



「例えば、この世界に来るときに神に会っているとか」

「い、いや…すでに話したかもしれないけど、オレは気付いたらこの世界の宿に居たんだ」



「ふむ。じゃあ何か役目のようなものを感じているとか」

「役目…?…あ!オレはケモミミ様を救うためにこの世界に居るぞ?オレの持てる全ての力を持ってケモミミ様たちに最高の生活をプレゼントさせてもらう!そんな使命なら持っている!」



「それは知っているが…、役目とはそういうものを言うのか…?」

「さあ?」



 オレのケモミミ愛は元居た世界で生活している時からだ。誰かに言われてとかその役目を与えられたからなんて半端な物じゃない。舐めるな。



「他にも、勇者の称号を持っていたりするな。心当たりがあったりしないか?」

「勇者?聞いたことはある言葉だけど、オレが勇者なんてどうやって調べるのさ?」



「そうだな、鑑定の魔法適正持ちが居ればすぐに調べることが出来るんだが…」

「鑑定?それってオレにも使えるのか?」



「ど、どうだろう。これまでの信希の能力を見る限りではすぐに使えそうなものだが」

「分かった、やってみるよ」



 少し不安な流れであるが、自分の持てる力は余すことなく使っていく。これはケモミミ様のためではないが、自分自身の境遇やこの世界に来た理由は知りたいと思っていた。

 そんな中で生まれたチャンスだ。出来る限りのことはやってみよう。



 鑑定ってあれだよな、その人のことを調べるみたいな。

 例えば、植物とかがどういった物なのかを説明してくれるような感じだろ…?



「ん-、どんな風にイメージすればいいんだ…?」

「信希様?わたくしが少しだけ心得ていますの。鑑定魔法適正持ちの方が仰っていたのは、本などで調べる感覚に近いと聞きましたの。ですけど、これだけで発動できることはありませんの…。信希様ならなんとかできそうですの?」



「ありがとうメキオン。少し考えてみるね」



 なるほどな。確かに鑑定は『調べる』ことに特化した魔法なんじゃないか?調べると言えばどんなことが連想されるだろうか。

 インターネット?辞典?歴史?図書館?こんな感じだろうか…。だがこの世界の知識や常識で考えるならインターネットなんてものは無いはずだ。だとしたら図書館や辞典…。これはメキオンが言っていたことだな。

 調べる…鑑定…。



 オレはアニメやゲームの知識も加えて考えてみることにした。

 鑑定ってそもそも『覗き見る』ものが多くなかったか?

 言ってしまえば、相手の個人情報とも言えるような内容を好き勝手に見ることが出来るような設定が多かったような感じだな。



 もしも本当に覗き見るのであればかなり合点がいく。

 それに加えて自分の知らない知識を調べることのできる本や歴史書が必要になってくるってことじゃないか?

 かなり具体的になってきたので一度試してみることにする。



 集中してイメージを鮮明にしていく。



「覗く…見る…調べる…」



 相手のことを調べられるようにそれらへ意識を集中させて、他の魔法を使ったとき同様に魔力を集中させる。

 そして、イメージが固まったところでイレーナへと視線を向ける─



「お…」



 どうやら成功しているみたいだった。

 イレーナの人生が描かれているような、プレートが宙に浮かんでいるように見える。



 イレーナ

 白狐人族 女性 二十二歳 独身

 名もなき山の奥地にある集落出身

 種族に与えられる使命により、自身を高めるための修行中

 白狐人族:寿命は長く、神に近しい存在として言い伝えられている。種族の男は役目を果たすことは出来ない、女性を支えるためにその生を受ける。人間の容姿に近く、女性には白狐の耳と尻尾があるのが特徴。男性にはない、人族との見分けは瞳の違い。



「なんだこれ…すっげえ」

「信希?出来たんですか?」



 オレと見つめ合うような形になっているイレーナが問いかけてくる。

 そこでイレーナの事を勝手に見ていることに気付く─



「ご、ごめん!イレーナの事を勝手に見ちゃったみたいだ…」

「なっ…何か変なことが書いてませんでしたか…」



「名前、種族、性別、年齢、配偶者、出身地、今やっていること、種族の説明って感じだけど…」



「なっ!なんてことですの…。信希様、そこまでの鑑定を出来る人なんてこの世界にはおりませんの!」

「や、やべぇ…」



 メキオンの言葉に驚きつつ、メキオンに向けていた視線をイレーナへと向ける…。



「い、イレーナ…ごめん。勝手に見ちゃって…」

「信希なら構いませんよ?別に隠すこともありませんから…」



「んんっ!信希、その『鑑定』で自分のことを調べることは出来るか?」

「あ、ああ。やってみるよ」



 オレとイレーナの会話を遮るロンドゥナの言葉で、オレは鑑定を使っている目的を思い出す。

 そして、イレーナに使った鑑定のイメージを今度は自分に向けて使ってみる。



「あれ…?出来ないな」

「ふむ…やはり、そう都合よくもいかんな」



「ああ。だったら魔法具にしてみるとかはどう?それだったら、みんなも使えるよね?」

「信希あったまいい!!」

「シアン、ありがとうね?」



 そしてオレは先ほどまで作っていたように水晶を取り出し、まだ鮮明にイメージ出来ている鑑定の魔法を水晶に刻み込んでいく。



 ──。
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