上 下
44 / 127
目的の旅

第四十四話 魔法具Ⅰ

しおりを挟む
 女性陣が何やら密談をしているようなので、オレはオレで何かやることを考えていた。



「魔法具の研究をしてみよう」



 前々から魔法具の作成には興味があった。

 王都ローフリングで、イレーナと一緒に見た魔法具店の商品が魅力的だったからだ。



「異空間収納…、炎の魔法…、水生成…、光源の魔法…、他には何があるだろう」



 オレはこの世界に来てからの目にしている魔法について思い出していく。



「問題はこれをオレがイメージ出来るかってところだよね」



 この世界の魔法は、イメージを具現化させるだけで発動できそうな感じがしていた。

 よくある話で、魔法を使うにはMPマジックポイントのような存在は今のところ確認できていない。もしもそういった存在があるのであれば、デストという獣人を治療した時に感じた頭痛と気分の悪さがそれに当てはまるかもしれない。



「ん-…まずは魔法が使えるかどうかだよね」



 オレはまだ自分が魔法を使っているという自覚がありまない。

 先日メキオンに教わりながら作った魔法具『認識阻害』は、どうもしっくり来ていない。

 というのも、目に見える魔法じゃないからだ。やはり元居た世界の人間からすると、魔法というのは派手に炎を使ったり風を巻き起こせたり、雷を扱えるような感じではないだろうか。



 でも、みんなの感想を聞く限りは魔法自体は使えていそうだからな…、他の魔法も使えればいいんだけど…。



「まずは炎だな」



 オレは右手を前に差し出し、炎を鮮明にイメージしていく。

 もちろん、ただの炎をイメージするだけではない。どうやってその炎が現れるのか、どうして燃焼できるのか、どのくらい燃焼を持続させるのか、周囲に酸素は必要か…。

 どんどん自分が発動する炎のイメージを鮮明にしていく。



「可燃性ガス…、着火は火打石…、引火現象を引き起こす…、酸素も合わせて供給してさらに火力をあげる…」



 かなり鮮明になったイメージを手のひらに集中させていく──



 ゴオッっという音をたてて、オレの手のひらに火柱が発現する。

 火柱は二メートル程立ち上がっただろうか、一瞬にして燃え上がり何事もなかったかのように消えていく。



「おおおお!すげえ!」



 感激のあまり大きな声が出てしまうほどに『魔法を使った』という感覚を覚えた。



「魔法具にするには火力が強すぎるな…、もう少し規模を小さくしてイメージしよう…」



 ここぞとばかりに、オレはイレーナから受け取っていた水晶へ魔法を刻んでいく。先ほどの炎よりも小さな規模で焚火やちょっとしたことにでも使えるくらいの炎を意識する。



「ライターよりは火力がほしいところだ…」



 そして鮮明になったイメージを今度は水晶に投影し、再度水晶をコーティングするイメージを追加していく…。



「出来たか…?」



 出来上がったであろう水晶は、先日完成させたものよりも変化が少ないように見えた。



「発動させてみよう─」



 ホワッっと音を立てているかいないかといった具合に小さな火が出現した。



「なるほど…、水晶を手のひらに置いてなら、このまま使用できそうだな」



 正直自分でも驚いていた。この世界に来て初めて見るちゃんとした魔法だ。これまでは、概念とかイメージとかそんな感じで魔法を考えていたせいか、どこか遠い存在のような感じだったが今は『魔法を使っている!』という感覚を理解して、もっともっと色々なものを作れそうな感じがしていた。



「すげえ…。何でも作れそうだ…」



 本当はここで自重するべきなんだろうけど、オレは自分の創作意欲と興味を抑えることは出来なかった。



「水生成はめっちゃ便利だよな」



 水のイメージはとてもシンプルで簡単そうだと思っていた。

 元の世界で言う『湧き水』をイメージすればいいだけだ。地脈とかから想像するとなると大変だろうけど…、これまでの傾向的にそこまで厳密な想像は必要ではなさそうだった。

 詠唱者のイメージ力次第だと思う。ソレがどういうものなのか理解出来ていれば発現できそうな感じだった。



「もしも飲み水にするなら綺麗な水がいいよな…」



 今まで見た一番綺麗な湧き水を想像していく。

 山奥で水が湧いていて、その水の流れる川はどこが水面か見まがうほどに透き通っていたな…。水温もかなり冷たかった覚えがある。



「おおおお…」



 魔法の発現を確認するが、水の冷たさと手のひらの上に水球が出来上がり少しだけ動揺してしまう。



「このイメージで水晶に投影しよう」



 一旦、魔法から意識を外し、今度は水晶に刻めるように再び湧き水に集中していく。



「やっぱり、炎の時とは勝手が違うな…」



 水晶に魔法を刻み込むときは、それぞれの魔法によって色々と手段や方法が変わってきそうだった。



 強引な魔法にならないように、丁寧に魔法のイメージを作っていく。

 湧き水の冷たさのせいか、先ほど作った炎の水晶よりもひんやりとした水晶が出来上がる。



「本当にできたか…?」



 出来上がったか不安になりながら、水晶へ意識を集中させる…。



 自分の手のひらの上で発動させた水球よりも規模は小さいものの、ちゃんと水晶から水が湧いて出てくる。



「おおお!成功した!」



 これはスゴイ!自分の魔力?さえあれば無限に水を作り出すことが出来るんじゃないか…?



「いやいや、そんなに甘い話は無いでしょ!」



 自分でも都合のよすぎる妄想だと自分に言い聞かせつつ、水晶から湧いて出た水を手のひらに集めて飲んでみる。



「これはうまいな。しっかり冷えてるし最高だな」



 この水晶が使える限り、料理や移動中の水分補給はとても楽になるなと考えつつ、オレはさらなる研究を進めていく。



 ──。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界で穴掘ってます!

KeyBow
ファンタジー
修学旅行中のバスにいた筈が、異世界召喚にバスの全員が突如されてしまう。主人公の聡太が得たスキルは穴掘り。外れスキルとされ、屑の外れ者として抹殺されそうになるもしぶとく生き残り、救ってくれた少女と成り上がって行く。不遇といわれるギフトを駆使して日の目を見ようとする物語

異世界もふもふ食堂〜僕と爺ちゃんと魔法使い仔カピバラの味噌スローライフ〜

山いい奈
ファンタジー
味噌蔵の跡継ぎで修行中の相葉壱。 息抜きに動物園に行った時、仔カピバラに噛まれ、気付けば見知らぬ場所にいた。 壱を連れて来た仔カピバラに付いて行くと、着いた先は食堂で、そこには10年前に行方不明になった祖父、茂造がいた。 茂造は言う。「ここはいわゆる異世界なのじゃ」と。 そして、「この食堂を継いで欲しいんじゃ」と。 明かされる村の成り立ち。そして村人たちの公然の秘め事。 しかし壱は徐々にそれに慣れ親しんで行く。 仔カピバラのサユリのチート魔法に助けられながら、味噌などの和食などを作る壱。 そして一癖も二癖もある食堂の従業員やコンシャリド村の人たちが繰り広げる、騒がしくもスローな日々のお話です。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

処理中です...