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目的の旅

第四十話 この世界の魔法Ⅰ

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「魔法のこと、なにもしらないんだけど…みんなはどんな風に使ってるの?イレーナもロンドゥナも使っているよね?」



 元の世界に居た人間であれば、多くの人が興味を持ちそうな話題である。

 オレはこの世界で、ケモミミ様の安全の事ばかり考えながらここまで旅してきたわけだが、もしも自分に使えるのであれば覚えておくに越したことはないと思っていた。

 メキオンの魔法適正とか言っていた、隠密?のような魔法にもとても興味がある。



「そうですね…いざ説明するとなると、少し長くなりますけど大丈夫ですか?」

「ああ、もちろんだ」



「まず、魔法を使える人達は生まれながらに魔法適正を持っています。これを調べる方法は特殊な鑑定が出来る人にお願いするしかありません」

「鑑定?」



「色々なことを調べられる人の事ですね…。少し形容し難いですが、そうとしか説明のしようが…」

「なるほど…、オレも一応そういった言葉に聞き覚えはある」



 つまりよくアニメや漫画であるような鑑定スキルのようなものを持っている人物がいるってことだよね。



「それってこの前購入した水晶に刻めたりするの?」

「ん-…どうでしょう。そういった前例はないと思いますけど…」



「水晶さ、貸してもらえる?」

「はい、これですね」



 この前の魔法具店で購入していた十個の水晶をイレーナから受け取る。



「この水晶に刻むっていうのは難しいのかな」

「ワタシの適正では刻印するのは難しいですね」



「それでしたらわたくしに心得がありますの」



 そんな声の持ち主は先ほど着いてくることが決まったメキオンである。



「え?魔法具の作り方が分かるってこと?」

「もちろんですの。これはわたくしの事業…いや、お仕事の一つでもありましたの」



 言い直したのが若干気になるが、今は魔法具のことが優先だ。



「作り方を教えてくれないかな…?」

「もちろんですの。まず、自分の持っている魔法適正を発動前でイメージ展開しますの。そして、水晶を両手で包みイメージ投影を行います。もちろん、今日明日に作れるほど簡単なものではありませんの」



「なるほどなるほど」



 イメージの具現化を水晶に投影するのか。

 なんだが一気に具体的になったな。



「魔法はどうやって発動するの?」

「そうですね。これも感覚的なものですから…、まずは自分の持っている適正をできるだけ鮮明にイメージします。この魔法イメージが鮮明であればあるほどに強力な魔法を作ることが出来ます」



「なるほど、イメージね…」



 妄想なら得意だけど…。本当にイメージだけで発動できるんだったら、今までオレが使ってきた不思議な力『想像の具現化』も魔法って言うことにならないか?



「そういえば、オレが使った治療とか身体能力の向上も魔法になるのかな?」

「どうでしょう…、そういった類の魔法があるという話は聞いたことありません」



 これは難しい問題だな。魔法じゃなかったらオレの力は全くの別物ということになる。

 物は試しだ。誰かの魔法適正を詳しく聞いてみるか…。



「誰かの魔法適正の内容を詳しく教えてもらえない?」

「そ、それは…」



「ごめん、まずかったかな?」



 少しだけ聞いたのを後悔するような返事が返ってきて、困惑してしまう。



「わたくしがお教えしますの」

「いいの?」



「魔法適正は秘密にすることが多いんですの。自分の存在意義にも近いですし、お教えすることでそのお相手がイメージすることが出来れば、その魔法適正を取得することにもつながりますから」

「なるほど…。生まれながらに持っている適正と、後天的に習得することもできるのか」



「その通りですの。ですけど、そもそものイメージ自体が難しいので教えても問題ないと考える人もいますの」



「なるほど…。そんなに大切なものを聞いても大丈夫?」

「先ほど、信希様の信頼を勝ち取りたいと申し上げましたの。その一つだと思っていただければ」



「うん、分かった。ありがとうね」

「わたくしの魔法適正は、隠密や尾行など隠れることに優れている魔法適正です。信希様に納得いただける言葉で説明できるかわかりませんが、隠れるというよりも自分自身が消える感覚が一番しっくりきますの。少しだけ実践してみますの」



 メキオンはそう言いつつ立ち上がり、近くの林の方へ歩いて行く。



「では、行きますの。わたくしに視線を集中させてくださいまし」

「分かったよ」



 メキオンが目を閉じ集中すると、突然という言葉が正しいだろう。

 彼女の気配と姿が消える。



「すごいな…」



 やはり、彼女は街中で監視していた時は、わざと気付かれるように仕向けていたと改めて感じさせるほどに強力な魔法適正を持っているみたいだ。



「どうでした?少しは理解できているといいのですの」



 メキオンの声は後ろから現れた。



「すごいな…。集中してイメージを具現化していく感じか…」

「出来そうですの?」



「少しやってみようかな」



 そして、オレもメキオンのやっていたようにイメージの具現化に集中してみる。



 ──。
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