中二な僕がささやかな祝福で生き延びる方法

うさみん

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97,宮廷魔道士

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「俺にはよくわかりませんが···。飛躍し過ぎではないですか?それとも陰謀論が出る程、危機感を感じる様な情勢不安等の背景が在るとでも?」

 ソウタの言葉に、シャルダンは曖昧な笑みを浮かべグラスのワインを煽る。

「実を言うと私は宮廷魔道士なのだよ。魔法に関する俗世の異変に関しては直ぐに調査し、王国にとって脅威であるかどうかを見極め、対応する責務がある。君に神様の奇跡について意見を求めたのは、類い稀な魔力を持つ君から見て、どの様に感じるかを知りたかった為だ。ささやかな事と感じるか、脅威と感じるか···。」

 シャルダンは少し探る様な感じで、ソウタの瞳を覗き込む様に見詰める。
  
 ソウタは直感的に真剣に答えるべきだと思い、表情を繕わずにシャルダンを見据えた。

「正直に言って、答えるのは難しいです。貴方の言うように、使われている魔法が初級魔法であるなら俺にとっては細やかな事ですが、そうではなく思想が同じ者達が複数居ると想定するならば、ある意味それはそれで脅威でしょう?」

 一旦、言葉を切りフォークを置いた。

「しかし、俺にはあの神様の奇跡に貴方の様に疑念は湧かなかった···。何故なら、俺はあの時に魔法ではない不思議な力を確かに感じ取る事が出来たから···。心の底から前向きな意欲が沸き上がる高揚感と慈しみ寄り添う様に暖かい想い····。魔法ではそんな効果は決して与えることは叶わないでしょう?貴方は何も感じなかったのですか?」

 ソウタにも今言った言葉が自作自演の自覚は充分にある、しかし言わずには居れなかった。

 無意識では有ったが、とにかく人成らざる者の行いとして強調したかったのだ。

『神様の存在を強固にしなければならない。』

 その想いだけで言葉を紡いだ。

「······。君の意見は分かった。確かに魔法以外のについては私も感じ取れていた。しかし、だからと言って君と同じ様に短絡的に思考する事は出来ない。私ほどの立場になると、常に多角的に物事を見て見極める事を求められる。残念ながら君の様に、感じ取るままに愚直では居られないのだよ。」

 苦笑するシャルダンに対して、人生経験の浅いソウタには自分の想いが相手に伝わったかどうか読み取る事が出来なかった。

 これ以上何か言った所で得られるものは無いだろうと、ソウタは早々に見切りを付けて気持ちを切り替える為にグラスの水に口をつける。

 一方、シャルダンの方は、細やかと言い切ったソウタに更に関心を寄せていた。

 あの規模の事柄を、自分の裁量の中で何とか出来るなレベルだと認識している。

 宮廷魔道士のシャルダンであっても、あれ程の規模に成ってしまえば例え初級魔法であっても楽観視出来ないレベルだ。

 もしも癒しの魔法で無く、状態異常を起こす類いの魔法であったなら、街は一瞬で無力化されてしまう事を意味する。

 起こってしまってからでは遅いのだ。

 少なくともダース単位の上位魔法使いか魔道士を導入して対応しなければ、完全には対応仕切れないだろう事は今までの経験で容易に推測出来る。

 そう考えると得体の知れない神様という存在が末恐ろしい。

 ソウタの発言が経験が伴わない故の認識不足なのか、若さ故の侮りか、それとも確固たる根拠に基づいた物なのかを、慎重に見極めていきながらも、その力を有益に引き出して行かなくてはならないなと、シャルダンは息巻く。

 そんな内心の事情を読み取る事はソウタには出来なかったが、会話が途切れたのを幸いにと早々に食事を切り上げる。

 
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