上 下
92 / 111

92,魔力を込める?

しおりを挟む
「もう一度、魔法を見せてくれないか?」

 シャルダンの申し出で、俺は再び『ファイア』と唱える。

 変わらないライター程度の炎に、シャルダンが唸りながら再度魔法を見せてくれと言ってくる。

「魔力を込めながら、唱えてみて欲しい。」

 魔力はひたすら込めているのだが、仕方無く更に念入りに魔力を込める。

 しかし結果は変わらず、ライター程度の炎以上になる事は無い。

「·········。」

「·········。」

 お互い少しの間、無言になる。

 それでも、シャルダンの明らかに信じがたそうな様子に、どうしたものかと思案する。

 魔法書によると多重掛けは通常は出来ない事らしいので、面倒事を避ける為にも、披露する気積りは無い。

 全属性に適性が有ることは、何等かの手段で調べられてしまうかもしれないので、それ迄は知らない振りをしようと思っている。
 
 思い悩む俺にシャルダンが気を取り直したのか話し掛けてきた。

「ソウタ。師事を受けてもらう間は、弟子としてこの屋敷に滞在して貰うので悪しからず。よろしく頼むよ。」

 こんなにショボイ魔法しか使えないのに、師事をしようと思ってくれているのか···。

 手の内を全て明かす気は無いのだが、流石に少し申し訳無い気分になる。

「大した魔法の実力も無いのに、すみません。心苦しくはありますが、暫くお世話になります。」

 勿論あまり長居をする気積りは無いが、袖振り合うも何かの縁だ。

 向こうから声を掛けて来たのだし、利用できる事なら遠慮はしないでおこう。

 ただし、ボロを出さない様に最善の注意は払わなければならないだろうが···。

 正直、面倒だが仕方無い。

「取り合えず、食事に呼ばれるまでの間に、この水晶に魔力を込める練習をしてみたまえ。」

 いきなり手渡された水晶に、戸惑う。

 シャルダンはすることが有るからと、部屋を出て行った。

 俺は部屋に一人残され、水晶を眺める。

「魔力を込める練習って、具体的にどうすれば良いんだろうか?」

 取り合えず水晶を持つ手に魔力を集めてみるが、水晶に変化が起こる事は無い。

 次に水晶を持ったまま、水晶も体の一部だと認識しながら体全体に魔力循環を行う。

 すると、水晶に変化が現れる。

 水晶がぼんやりと光を放ち始めたので、俺は気を良くして循環している魔力を魔力制御して濃度を高める。

 そして魔力操作で手に持った水晶に集中させる。

 すると水晶が目を開けていられない程に眩い光を放ち始めてしまう。

 俺は慌ててカバンから布を取り出すと水晶に被せて包み込む。

「あーっ!眩しかった!!」

 布を被せても眩しさを抑えきれている訳では無かったが、無いよりはましだ。

 そのまま、俺はソファーにもたれ掛かると少し休憩することに決めて目を瞑った。




 
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

魔道具作ってたら断罪回避できてたわw

かぜかおる
ファンタジー
転生して魔法があったからそっちを楽しんで生きてます! って、あれまあ私悪役令嬢だったんですか(笑) フワッと設定、ざまあなし、落ちなし、軽〜く読んでくださいな。

婚約破棄され、平民落ちしましたが、学校追放はまた別問題らしいです

かぜかおる
ファンタジー
とある乙女ゲームのノベライズ版悪役令嬢に転生いたしました。 強制力込みの人生を歩み、冤罪ですが断罪・婚約破棄・勘当・平民落ちのクアドラプルコンボを食らったのが昨日のこと。 これからどうしようかと途方に暮れていた私に話しかけてきたのは、学校で歴史を教えてるおじいちゃん先生!?

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

メインをはれない私は、普通に令嬢やってます

かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・ だから、この世界での普通の令嬢になります! ↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・

絶対婚約いたしません。させられました。案の定、婚約破棄されました

toyjoy11
ファンタジー
婚約破棄ものではあるのだけど、どちらかと言うと反乱もの。 残酷シーンが多く含まれます。 誰も高位貴族が婚約者になりたがらない第一王子と婚約者になったミルフィーユ・レモナンド侯爵令嬢。 両親に 「絶対アレと婚約しません。もしも、させるんでしたら、私は、クーデターを起こしてやります。」 と宣言した彼女は有言実行をするのだった。 一応、転生者ではあるものの元10歳児。チートはありません。 4/5 21時完結予定。

完結 幽閉された王女

音爽(ネソウ)
ファンタジー
愛らしく育った王女には秘密があった。

処理中です...