中二な僕がささやかな祝福で生き延びる方法

うさみん

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89,男の思惑

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 見掛けたのは偶然だった。

 魔力循環がきめ細やかに調っていて、濃厚な魔力を持った少年が目の前を通過する。

 これまでにはない逸材と感じ、興味を持ち後を追う。

 旅装束の彼は周りをキョロキョロと眺めながら歩き回る。

 そして図書館の中に入っていった。

 追い掛けて図書館に入り本を物色する振りをしながら、様子を窺う。

 職員と話した後、魔法書の棚に移動して本の中身を確めるといきなり5冊も持っていく姿に驚きを隠せなかった。

 しかも難しい筈の魔法書を何の躊躇いもなくすらすらと読み進めている彼に更に驚く。

 この図書館は専門機関の採用試験や昇級試験に向けて対応させた専門の知識を学ぶ事を目的にされている蔵書が中心に置かれている。

 だから置かれている魔法書も魔法の基礎知識や基礎理解がしっかりしていなければ読み進める事が出来ない物ばかりだ。

 魔法の基礎知識や基礎知識は、魔法を専門に扱う者から学ばなければ会得できないのが普通だ。

 魔法を使える者はそれほど多い訳ではないので、殆どの者が門下に入れられてしまうのが通例なのだ。

 なのに上級の魔法書すら読める者が、所属門下の証も示さず旅装束で彷徨うろついているなんて普通有り得ない。

 凄い集中力で5冊も全てを読み込み、覚え書きを書き付ける様子もない。

 それも不思議に思えたが、本を戻しながら他の魔法書に視線を向けているのを見て取り、彼がこの場に再び訪れるであろうと確信する。

 翌日の朝早くから図書館の開館を待ち、朝市を歩きながら時間を潰していたらは起こった。

 人々がざわめき空を指差す。

 美しい女性の姿が現れ、暫くするとその姿は細やかな光に姿を変える。

 光は人々に触れ、癒しと沸き立つような不思議な感覚を与えていく。

 直感的に魔法だと感じた。

 誰かが目的を持って大規模に魔法を行使したのだろう。

 『神様』だとか『奇跡』だとか耳馴れない言葉が囁かれていたが、そんなものではないことは確かだ。

 有り得ない規模ではあるものの使われている魔法は確かに初級魔法に間違いない。

「いったい何の目的でこんなことを···。」

 思わず呟きをこぼした。

 取り合えず、もうそろそろ開館の時間だろう。

 この件は後で調べることにして、あの少年に会うために図書館に向かう事にする。

 今日は声を掛けてみようそう思いながら···。
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