中二な僕がささやかな祝福で生き延びる方法

85,奇跡の反応

　日の出直ぐの朝早くからゆっくり町中を歩き、念入りに仕込みをしていく。

　今回は図書館の活用時間を視野に入れて、奇跡は先に行っておくことにする。

　町中に徐々に朝市が開店してザワザワと賑わいを見せ始めたのを皮切りに、人が増える。

　何時もの様に奇跡を発動させて、様子をうかがう。

　急に薄暗くなった上空に人々の不安や期待の声が上がる。

　偶然に以前奇跡を体験した者は期待をし、はじめて体験するものは不安に思う者も何人か居るようだ。

　女神の降臨に喚声が上がる。

「奇跡だ！神様の奇跡だ！」

　光りと共に癒しを受けた人々から喜びや驚きの声が次々と上がる。

「なんて神々しいお姿だったのでしょうか！」

　涙ながらにひざまづく者まで居た。

　喜びの波が町中を包み込む。

　しかし、ざわめきが静まらない人混みの中でフードを被り空を睨み付けている者が居るのに気付く。

　何か不審に思わせる事があったのだろうか？

　なんだか気になりそれとなく近付いてみた。

　フードを被った者は空から視線を外すとぼそりと呟く。

「いったい何の目的でこんな事を···。」

　初めての反応に不信感を持っている者も居るのかと息をつく。

　フードを被った者は人混みに紛れ見えなくなった。