中二な僕がささやかな祝福で生き延びる方法

70,腹を割って

　野営地に戻ると、暖を取るための焚き火の側に二人は腰掛けた。

　そして男はソウタに謝罪と礼を告げる。

「悪意を持って近寄って悪かった。それに、危険を冒してまで助けてくれてありがとう。」

　ソウタは微笑み返す。

「根は悪い人には思えないけど、どうしてこんな事を？」

　男は戸惑いを見せながら話し出す。

「面白くも珍しくも無い話さ。俺は貧しい村の生まれで····成人前に親父を亡くして···。無理して働いて病に倒れてしまった母親と幼い弟と妹を養う為に苦労して働いていたんだ···。そんなときに悪い奴に騙されて、弟と妹は売り飛ばされてしまって···。母親はその心労で命を落とした···。だから、真面目に働いて金を稼ぐのが馬鹿らしくなって···気付けばこの様さ···。」

　自嘲気味に自分の手を見詰める男に、ソウタは問い掛ける。

「それだけじゃないでしょう？」

　ソウタを見詰め返し男は困ったように笑う。

「何で分かるんだ？まさか魔法使いは心まで読めるのか？」

　首を振るソウタに男は苦悩の色を濃く出す。

「売り飛ばされた弟と妹をやっと見付けたんだ···。弟は買い戻せたが妹は高値が付けられていて、半分は何とか貯められたがとても足りない。だが急がないと娼館に売られちまう。俺としたことが焦っていたんだ。娼館に売られると身請けに恐ろしく金が掛かるから取り戻せなくなる。」

　思いの外重い内容に、ソウタは名案は無いかと思い悩む。

　ふと、ある考えが浮かび男に問う。

「この世界にダイヤモンドはある？」

「ダイヤモンド？金剛石の別名の事か···稀少な宝石で王族や高位の貴族しか手に入らないと言われている幻の宝石だが、それがどうした？」

「それなら小さくても高く売れる？」

　ソウタの質問の意図が読めなくて男は眉を寄せる。

「まあ、遊んで暮らせる位には値が付くだろうよ。」

　ソウタは笑みを浮かべる。

「妹さんの件は明日考えるとして、もう遅いから寝ましょう。」

　男に声を掛けると、焚き火を消し止める。

　男が身を横たえたのを見届けると、ソウタも横になった。