中二な僕がささやかな祝福で生き延びる方法

うさみん

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69,救いの手

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 ソウタが男の様子のおかしさに気付いたのは偶然だった。

 やたらお金の話をからめて家族を引き合いに出して来るので、男の反応を見るために真実を少しぼやかしながら話してみた。

 実際にソウタの父親は自由を愛する人種で、自由とは自己責任と自己選択がもたらす物だと信じていた。

 だから何をしても、怒られるよりも責任を取らされる事の方が多かったのだが、有る意味では好きなようにさせているのだから放任主義とも言えた。

 男に話ながら、懐かしさと寂しさに少し浸ってしまったのは秘密だ。

 どうしても値踏みされている様な気がして、相手の出方を探ってみたら、結局金銭目的の俗物だったので逆に安心した。

 起き上がり声を掛けたら、まるで化け物でも見掛けた様な顔で逃げたので案外臆病なタイプなのだろうか?

 どちらにせよ、夜に野営地から離れるのは危険だ。

 小悪党でも危険に晒すのは忍びないので、連れ戻しておこうと、後を追う。

 夜目は効くので危なげ無く後を追う事が出来たが、たいして遠く離れていない場所に男は倒れていた。

 見ると折れた硬い枝が男の腹部に刺さっている。

 意識は有るようで、此方を見て体をびくつかせる。

「大丈夫ですか?」

 俺の呼び掛けに男は呻く。

「お前は何なんだ?世間知らずのただのバカか?それとも死を振り撒く悪霊かなにかなのか?俺も焼きが回ったものだ···こんなところで死に目に合うなんて···。」

 声に力が無くなっていく。

 俺は枝を躊躇なく引き抜くと、ヒールを内部の傷から重ね掛けして癒していく。

「どちらかと言えば世間知らずの方かな?旅の知識も無く行き当たりばったりで旅をしているし···。」

 軽く笑いながら、男の体を起こす。

「魔法が使えるのか···。得体の知れない坊主かと思ったが、とんだ見当違いだった訳か···。」

 自嘲気味に呟きながら、男はソウタの助けで立ち上がる。

「俺が何をしたか分かっているくせに、とんだお人好しだな···。」

「自己責任で、自己選択しただけだよ。」

 男はすっかり毒気を抜かれながら、ソウタと供に野営地に戻った。


 

 
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