中二な僕がささやかな祝福で生き延びる方法

うさみん

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64,道中でのトラブル

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 半日ほど進み、馬車は野営の為に街道脇の平地に止まる。

 本来なら半日で最初の中継地の村に立ち寄れた筈だったが、街道の一部が土砂崩れで通行出来ず、迂回して1日余分に掛かるとの話だった。

 不測の事態にざわついたものの、旅の道中では珍しい事では無いらしい。

 ただ、中継地での食事をあてにしていた者達からは不満の声が上がる。

 道中の荷物になるので、マジックバッグを持たない者は最低限の荷物しか持たない。

 護衛についている冒険者に、駄賃を払うから何か狩って来てくれないかと頼む者もいたが、護衛の依頼中に僅かな謝礼で狩りに行く筈もなく断られていた。

 俺は魔力感知を使い、周辺を探る。

 魔力感知を使い続けた結果、相手の強さもある程度判断出来るようになった。

 警戒心の強い弱い魔物は、馬車の人達を恐れて遠巻きに様子を伺っているだけだ。

 気配を殺して後ろから回り込めば、数人の夕食程度の数は狩れるだろう。

 そっと馬車から離れ、茂みの中に身を投じる。

 その辺の木の枝を剣で切り取ると枝葉を落として先端を尖らせた棒状に加工する。

 鳥の魔物のチキントードを視界に入れると棒の端に結界を付けてその中にウイングを重ね掛けして圧縮する、魔物に狙いを定めて手を添えて前方に押し出しながら結界を解除する。

 木の棒は勢い良く前方に弾け飛び、チキントードの頭を貫く。

 中々良いコントロールだったと、自画自賛しながら、次々とチキントードを狩っていく。

 短時間で6羽ほど、仕留めて少しにやける。

 短期間で随分魔法を使いこなせるようになってきている。

 とは言え、長居は無用だ。

 戦利品を集めて、急ぎ馬車に戻る。

「すみません。どなたかチキントードを買い取りして頂けませんか?食肉加工はしていませんから、相場よりもお安くしますよ?」

 俺の声掛けに数人が声を掛けてくる。

「俺はこいつの丸焼きが好物なんだ。1つこれでどうだい?」

 俺は相手の言い値でどんどん売り払う。

 子供相手だと言うのに、結局足元を見られる事もないまま、相場とは大差ない価格で全て売れた。

 大金は必要ないが、路銀は必要だ。

 目論見通りに事が運び安堵する。

 この時の俺はじっと様子を伺う男の気配に気付けなかった。

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