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53,不思議な双子

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「どうして俺が違うって思ったの?」

 俺の問い掛けに二人はお互いを見詰め合うと笑う。

「私達本当の姿が見えるの。お兄ちゃんは綺麗な光。魂だけの色をしてる。」

 双子の言葉に俺は驚く。

「二人の他にも本当の姿が見える人が居るの?」

 普通と違うと分かると、行動を制限されそうだ。

 二人は心底楽しそうに笑う。

「この町では僕達だけ、見えてるのは内緒なんだ。」

「そうだよねーっ。」

 お互いに話ながら二人とも俺の手を繋いでくる。

「優しい感触···触れてて気持ちいい。」

「幸せを感じる暖かい魂の光···。」

 どんどん双子が密着してくる。

 俺はどうしたらいいのか分からず困惑する。

「お兄ちゃんこのままだと危ないよ?」

「そうだね。消えちゃうかも?」

 不意に双子が不吉な事を言い出した。

「それってどういう意味?」

 ギョッとして双子を見詰める。

「悪霊が魂を食べて廻ってるの。」

「お兄ちゃん魂だけだから、簡単に食べられちゃうよ?」

 双子の言葉はやたらに信憑性があった。

 悪霊の正体が何であれ、早急に対策を考える必要がありそうだ。

 有効に使えるのはヒールだけなのは少し心許ない。

 悩んでいる俺を余所に、俺に貼り付いたままに双子はヒソヒソと内緒の相談をしていた。

「「決定!」」

 双子は強引に俺の腕を引き、何処かに連れていこうとする。

「なに?何処に連れていくの!?」

 二人がかりで強く引かれ、振り払う事も出来ずに一軒の民家に連れ込まれる。

 家の扉を通過したとたんに不思議な感触がした。

「お兄ちゃんの事大好きだから此処に居て!」

「此処なら悪霊は入って来ないから食べられたりしないよ!」

 二人にがっちりホールドされる。

 この家は何故か結界が張られている様だ。

 扉を通過した時に感じたのはそれだったらしい。

「どうしてこの家には結界が?」
 
 双子は得意気に微笑む。

「二人で作ったんだよね~!」

「お部屋はもっと強くしてるからお兄ちゃんはそこにね!」

 二人の私室に押し込まれ、ベットの上に座らせれると両脇を双子が陣取る。

 何なんだ···この図柄は···。

「あの···ね?ちょっと離れて····。」

「だ~め!お兄ちゃんの事守るからそのご褒美!」

「こんなに気持ちいいの初めてなんだもん!ねーっ!」

 二人で頷きながら、抱き着く力を強めてくる。

 どうしようも出来なくて、俺はため息をついた。

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