中二な僕がささやかな祝福で生き延びる方法

うさみん

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47,カインズの帰宅

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 作業場での仕事を終え、町に戻ったカインズは町の様子が何時もと違うのを不思議に思う。

 老若男女問わず人々の目は輝きに満ち、町中に今までにない活気がある。

 町の商会に商品を卸しながら、商会の主人にそれとなく話を聞いた。

「町中、様子が違うようだが、何か有ったのか?」

「ああ、貴方はご存知無いのですね。実は、数日前に空にが現れてを起こしたのです。」

 神様も奇跡も初めて聞く言葉だ。

とはどういうものなんだ?という言葉も聞いたことがないが···。」

 疑問をそのまま伝えると、商会の主人は人好きな笑みを浮かべ語る。

「神様は光輝く女性でした。奇跡という言葉の意味は良く分かりませんが、神様が煌めく光に姿を変え、町中の病人や怪我人を癒してくださったのです。それが、神様の奇跡と言うものだそうです。私も人からの聞きかじりなので詳しくは知らないのですが。ともかく今まで寝たきりだった者でも元気になり、そのお陰で町中活気に充ちているのですよ。」

 思わぬ話に内心驚きを隠せなかった。

 奇跡とはなんと凄いものなのだろうか?

 商品の代金を受け取り、市場で夕食の食材を買い込み家路を急ぐ。


 家に着くと、まず裏のハリーじいさんの所に、手土産片手にお礼の挨拶に行った。

「おお!カインズ戻ったのか!元気にしておったか?」

 杖片手に歩いて居たはずのハリーじいさんは颯爽とカインズの元に歩み寄る。

 動きも別人の様で面食らう。

「ハリーも元気そうで何よりだ!ナインも世話になって本当にありがとう!変わりはなかったかな?」

 カインズの肩を叩きハリーじいさんはニヤリと笑う。

「ナインは良い子じゃったよ!言葉も達者になったし、本も何冊も読んで賢い努力家じゃ。ダニーの所の末のダン達と魔物の勉強や剣を学んでおった。冒険者に興味が有るようじゃ!余りに真剣じゃったんで、わしも浮かれて小さいが剣をやったんじゃ!」

 嬉しそうに語るハリーじいさんに、ナインが馴染めた様で安心する。


 土産を手渡し家に戻るとナインの部屋を覗く。

 ナインは本を熱心に読み込んでいた。

「ナイン!帰ったぞ!」

 ナインに近付き、本ごと抱き締める。

 姿に変化は無かったが、ナインの瞳には強い意思が見てとれて心が暖まる。

「カインズお帰り!苦しいから腕をゆるめて!」

 片言から普通の会話になっているのに改めて喜ぶ。

「ナインはやっぱり賢いな!」

 本を放させ、膝の上に抱き上げ頭を撫でるとナインが照れ臭そうに微笑む。

 可愛くて、小さな体を抱き締める。

 家に誰かが居るのはやっぱりいいなと思いながら、もし身内が見付からなければこのまま引き取ろうと決意する。

 その晩はナインも手伝い二人で夕食を作った。

 他愛ない話をしながら、久しぶりの一人で無い楽しく食卓を囲った。

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